(12)242 『BLUE PROMISES 1』



1.


すべてを捨てて

   すべてを投げ出して


 自分自身を裏切って


流れる涙の理由を忘れて


     使命や義務などかなぐり捨てて


  光の見えぬ闇に堕ちたあたしは



このまま、死を迎えるだけなんだと思っていた





喧噪から離れた光も届かぬ路地。
汚れきった視線がうごめく暗闇の中。

生きることに疲れ、考えることを投げ出した者たちが流れ着く「負」の溜まり場。
ダークネスの持つ闇とは、また異なる世界。


愛は、その中にいた。


ここに来て何日目か。
考えたこともない。
考える理由もない。
ここに、意志は必要ない。ただ思うがままに過ごす。
それは究極の自由であり、けれど全てにおいて不自由であった。

どんなことをしても咎められることはない。
暴言、窃盗、暴力、殺人までも…
だが、この闇からは一生逃れることはできない。
ここに墜ちた者は、その生涯をここで過ごすしか方法はない。



愛の服は薄汚れ、ボロボロに破れていた。
強い輝きを放っていた瞳は、今の愛にはない。
定まらぬ視線を彷徨わせながら、身体を引きずるように徘徊する。

右手には潰れた空き缶。
アルコールなどろくに摂取できなかったはずの愛は、
ここにいる他の堕落者と同様、何かにすがるように忘れるように、
毎日毎日、アルコールを求め続けた。

入手手段は、暴力行使。
相手を殴り蹴り飛ばして奪い取る。
それがここで生きるための正当な手段だった。

愛もまたそれは例外ではなく、暴力と強奪を続けていた。
彼女の培ってきた戦闘の経験が、この腐敗の中で活きていた。

戦えば、勝てないことはなかった。
制限することなく能力を放ち、対峙した相手はあっという間に光に撃たれる。

自分のしていることが善か悪かの判断力は、もはや愛の中にはない。
その光もまた、どす黒く変色していた。


正義など、この闇には必要なかった。




















最終更新:2012年11月24日 19:37