(13)108 『荒ぶる魂―Rocks―』

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



もう一度里沙に会うため、人工島に乗り込んだ8人のリゾナンター。
しかし8人は敵の策略にはまり、バラバラになってしまう。仲間と合流するには、目の前の相手を倒すしかない!

「わかりますよ?あなたがそんなに冷たい人じゃないってことくらい」
「・・・そんなコミュニケーションいらねっつんだよ!!」(第11話より)


「わかりますよ?あなたがそんなに冷たい人じゃないってことくらい」
「・・・そんなコミュニケーションいらねっつんだよ!!」

ったく、こいつはどこまで甘い奴なんだ
相対してる敵に言うセリフかよ
さっさと片付けてやるよ、夜更かしは肌に悪いからな

「言うことはそれだけか」
「ふ、藤本さん」
「よせ、その名は捨てた 
 いまの私は永遠の美の為に闇に魂を売った
 氷の魔女、ミティ」
「なぜ、あなたが…」

「なぜダークネスに魂を売り渡したか、って聞きたいのか」
「…」
「そうしたいから、そうした、それだけのことだ
 お前は自分たちのことを正義だと信じてるのだろうが、私には私の正義がある
 それは誰にも譲れない、私だけの誇りと言ってもいいけどな」
「そ、そんな」


「いいから、聞け
 その私の正義を守る為に、私は悪に手を染めた
 汚いとかは言いっこなしな
 要するにリゾナンターとダークネス、勝った方が、生き残った方が本物の正義ってことだ」
「違います、そんなのは本当の正義じゃない」
「甘いな、亀
 もう待った無しだ
 無駄だけど、構えは取って置いた方がいいんじゃ無いのか
 無防備でも私は行くけどな」

あいつは哀しげに唇を噛み締めると、ファイテイングポーズらしきものを取った
ったく、何てへっぴり腰なんだ
お前、ガキんちょのこと助けに来たんだろう
そんな構えじゃヒラの戦闘員にもやられるぞ

「非情なる氷雪の精霊よ
 汝らの怒りを顕し、鋭き槍となり、この者を貫け
 フェンリルランサー!!」

ふん、感心にかわしやがった
まあ詠唱してる分、回避する時間もあったわけか、なら

「ぐふっ、うう」


詠唱破棄したうえで形成した氷塊をぶつけてやったら、見事に倒れちまった
おいおい、鼻血も出てるんじゃないのかこいつ

「相変わらずのぶざまっぷりだな、亀
 さっさと立てよ、待っててやるから」

息を荒げながら、足元も覚束ないままどうにか立ってきやがった
ん、目に力は残ってるな

「どうした、無抵抗で終わっちまうのか
 お前何かやる事があって、来たんじゃないのか
 まったく、あんな裏切り者の為に危ない橋を渡るなんて、どこまで…」
「言わないで、ガキさんのことそれ以上悪く言わないで」
「言ったらどうするんだ
 お前の好きなガキさんは薄汚いス、」

凄まじい風の一撃が来た
辛うじてかわしたが、避け切れなかったようで、こめかみの辺りから血が出てるみたいだ


「やろうと思えばやれんじゃないか
 来いよ、今のをもう一発出せればもしかするかもだぜ」

見ただけで、それは無理だとわかった
大事な仲間のことを悪しざまに言われた激情から、かいしんの一撃ってやつを繰り出せたが
その反動からか肩で息をついてる
それでも自分の足で大地を踏みしめてるのは、戦士の矜持か
それとも、それがお前の言う正義の力ってやつか

いいから来いよ
向って来いよ
じゃないと、私は、私は

「うわーっ」
ふらつく亀の元に駆け寄ると、その襟首を掴み拳を叩きつけた
何度も何度も

「何故だ、なぜ向って来ない
 そんな弱腰で正義の味方だなんて、笑わせるな 
 何がリゾナンダーだ、そんなものの為に
「ふ、藤本さ…」


パチパチパチ

乾いた拍手の音が聞こえた
黒い服を着た没個性な男がそこにいた
防護服らしきものを着用した数人の戦闘員を引き連れて

「何のようだ」
「いやあ、見事なお手並みだと思いましてね
 もっとも最後は少々大衆演劇が入ってましたかね」
「ふざけるな、もう戦いは終わった
 こいつは戦利品として連れてく」
「まあ従来ならそれでも良いのですがねえ
 それは少々レアな能力の持ち主でしてねえ
 傷の共有という」
「傷の共有だと」
「ああ、あなたは何度目かの復活で多少記憶が混濁してるのですかねえ
 以前資料はお渡しして置きましたが」
「その傷の共有がなんだ」
「興味を持っておられるのですよ、我らの偉大な首魁が」
「何っ」
「現在のこれの力ではせいぜい自分の周囲数メートルぐらいにしか、その影響を及ぼしませんがね
 でも我々の技術を注入すれば、数百メートル、数キロ、あるいは世界中の人間と、痛みを共有できる可能性があるのですよ、こ・れ・に・は」

男は手の甲で私が抱えている亀井の頬を軽く叩きながら言った


「まあそれが無理なら分解してでも、その能力の秘密の一端でもわかればいいですし
 ああ、それは貴女の昔馴染みのマルシェの研究所とは違ったセクションで実施しますけどね」
「くっ」

傷の共有だって
ああ思い出した
こいつの本来の能力
自分の傷を誰かに移すことも、誰かの傷を自分に移すことも出来る
誰かを倒す為には自分自身を傷つけなければならない負の能力
って、こいつその力を使ってれば、最悪でも相討ちには持ち込めたはずなのに
何故、そうしなかった、なぜ、なぜ

「そろそろそれをお引渡し願えませんか、氷雪の魔女、ミティ様」
「ふふ、傷の共有か
 お前はそれが怖くて決着が付くまで、こそこそ隠れてたわけだな」
「ええ、それが私のような管理職の務めだと自負しておりますが、何か」
「あははは、馬鹿だよなこいつは
 傷の共有能力を解放すれば、少なくとも私は倒せたかもしれないのに」
「ククク、馬鹿ですよねえ
 まあ馬鹿だからこそこのご時勢に正義の味方なんてやってるんでしょうねえ」
「確かに、はははは」

本来没感情な筈の男が私につられたかのように笑ってる
防護服を着けた戦闘員達も
もっともその冷たい目は決して笑ってなかったが


「あはは馬鹿だなあ、こいつ」
「馬鹿ですよねえ、これ」

いや、馬鹿なのは、馬鹿なのは、馬鹿なのは
「馬鹿だったのは、この私だ!!
 無慈悲な氷の女神よ、汝の冷たき口づけでこの者共の息吹を奪え
 アイスレクイエム!!」

最兇の氷雪魔法の詠唱と共に、戦闘員達は胸元を押さえて地に倒れ付した
黒い服の男は…立っていた、両手を大げさに上げて
警戒してか幾分の距離を取りながら

「おやミティ様、御乱心ですか」
「いや、あたしは正気だ、まともだけどね」
「まあいいですけどね、どうせこれもこれもこれも大した能力の無い戦闘員ですから」
「お前は仲間をそんなふうに足蹴に出来るのか」
「厭だなあ、こいつらを倒しちゃったのはあなたでしょ、ミ・テ・ィ・様
 それにこいつら如きいくらでもスペアのある部品みたいなものですし
 それよりも、貴女の事ですよ、ミティ様
 今ここで私の前にひれ伏して、許しを乞うならこの事は無かった事にしても良いんですよ」
「何だと」
「まあ貴女にはリゾナンターとの戦いの前線に出ていただいて、データ収集に貢献していただきましたしね」



「データ収集?」
「おや聡明な貴女なら気付いてると思ったのですがね
 私達が貴女に望んだものはリゾナンターを倒すことでなく、彼女達、野放しにしておいた第5世 代以降の能力者達が実戦でどれだけ使えるかという実験台になることですよ」
「ふん、調子のいいことぬかしやがって、まあいい
 さっきのあれ、無かった事にするとかいうあれ、願い下げだよ、断る」

言葉の礫をぶつけてやったが、男は何事も無かったかのように肩をすくめて、指を鳴らした
「たった今、我がダークネスが貴女に与えた力、氷雪魔法の行使は剥奪されました
 もうお前はただの能無しだよ、藤本」

わたしはさっきから男と対峙しながら意識のレーダーを張り巡らしていた
やつら、各々の敵を倒したリゾナンターがこの回廊に近づいてくるのを
そして、その時は来た

ガラガラッという音と共に、回廊の壁の一部が崩れ、奴らリゾナンターが現れた
その姿は激戦を物語るように傷ついていたが、その眼には正義の光が宿っていた

「絵里ー」
「亀井さん」
「大丈夫か」
口々に叫ぶその姿の方に亀井の身体を突き放した


「ミティ、一体」
「ああ、あたしたった今魔女を首になっちゃってね
 そいつのこと頼むわ」

「み、み、美貴様」

あはは、最高だよ亀ちゃん
君は最高にドンクサイ奴だったけど、最高にいい奴だよ
お前は皆と行きな
私はいけ好かないこの野郎を食い止めるから
ってまあやられるんだろうけどな普通
こいつビームとか出しそうだし
まあいいや、一蹴り、最後に一蹴り
蹴りがかなわなければ、頭でもいい
私の意志の全てで最後までこいつに立ち向かうよ
まあそれが、私の正義ってやつかな
誰にも屈しない、折れない心

戸惑ってるリゾナンター達と、息も絶え絶えに私に呼びかける亀の方を振り向かずに
私は男との距離を詰めた
もう思い残すことは無い
だって少なくともあいつの、亀の心には私という存在が残っているだろう
それが誰かの心の中で生きる、永遠に生きるってことなんだろう多分

「うおーーーーっ!!」
戦士の咆哮をあげながら私は突進した




















最終更新:2012年11月24日 21:39