(13)242 『Air on G - 5. Rainy DANCE-』

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あたしがそこに引き取られた時、その人はもう生まれる前からそこにいたような顔をして、
時には大人達とすら対等に振る舞っていて。実はその人がそこに来たのはほんの4年前、
その時のあたしと同じ年の頃だと知った時にはとっても驚いたのを今でも覚えてる。
他に身寄りのないあたし達をまるでほんとの妹や弟のように可愛がってくれて、、。

その人が新しい家に引き取られるって聞いた時は自分の事のように嬉しかったけど、
もう会えないと思ったらたまらなく寂しくて。最後の思い出に2人で乗った観覧車でも、
言いたいことは一杯あるのに胸が一杯であんまり喋れなかった。
でも、その後で2人で花火やりながら、何とか話したいことは全部話せたと思う。

最後の日、もしかしたらもうこれっきり会えないかもしれないと思ったし、でもきっと
生きてさえいればいつかまた会えるとも思った。







―――――――――まさか、こんな形で再会するなんて。







「真希、姉ぇ、、、」
「―――やっぱり、れいなだったんだ。」

小さなため息のあと、後藤――g923は呟いた。
「真希姉ぇ、なんで、なんでぇ!」
れいなの叫びが響く。
同時にれいなの心が流れ込んできて、愛は一切を理解した。

れいなが引き取られた養護施設には理由は様々なれど同じように身寄りのない子供達が
何人か兄弟のように暮らしていて、一番上の『姉』が組織を抜け出したg923、―真希―と
名付けられたその人だった。
「喧嘩を教えてくれたおねーちゃん」
あの時は『後藤さん』としか言ってなかったから、れいなもあーしもお互いに同じ人の事を
話してるとは気付かなかったんやろね。

その『姉』が今自分の目の前にいる。
しかもその異形は、明らかに自分達の敵として―――。

「下がっとき、れいな。」
れいなの乱入で少しは余裕が出来た愛は、一歩前に出る。
「あんたじゃ今の後藤さんには勝てん。」

その名前を聞いてれいなも理解する。
先程聞いた、たった一人でアサ=ヤン本部を壊滅させた実力の持ち主。
今では敵となったその人と自分が「どこか似ている」と言われた理由。
戦い方もその他にも沢山、その人から教わったのだ。似ていない筈がない。

「そっか。そう言えば真希姉ぇが引き取られた家、後藤さん家やったと、、。」



「マルシェの報告を聞いてね、同じ名前だしもしかしてと思ったんだ。」
語る口調はあくまで冷たく、再会を喜んでいるようではまるでない。
「そうやったんか。それでれいなのこと、、、」愛は先程の会話を反芻する。
そういえばあの時、『田中れいな』について何か言いかけていた気がする。

それにしても相変わらず読めない人だ、と愛は思った。
れいなとの過去は分かったし、それもあってここに現れたのは分かる。
さてそれからどうする?
れいなを(そして自分を)自らの手で始末するのか、それとも捕らえて連れ帰るか。
相変わらず言葉の多い相手ではないし、思考を読みたくても遮られる。
ふとれいなを見れば、こちらは完全に戦意喪失――むしろ茫然自失の方が正しいか。
生き別れになった姉同然の相手が、戦うべき敵として現れたのだから無理もない。
つまり敵がどう動こうが、戦えるのは自分一人である。

もっともどういうつもりであれあまり関係はないとも思う。
れいなはやらせないし、連れて行かせもしない。そう決めていた。


――――いつの間にか雨が降り始めていた。



数分の刻が流れる。
最初に動いたのは、意外にもれいなだった。

「うぁぁあああああああっ!」
咆哮とともに飛び掛かり拳を繰り出す。
とはいえ明らかに冷静さを失っている攻撃をかわすことは容易い。
もちろん常人ではそれも困難なスピードであるが、後藤―g923―は事も無げに
上体の最低限の動きのみで降りかかる拳の雨をかい潜ってみせる。

それでも徐々に距離を詰めてようやく拳が届くかに見えた刹那、
「れいな、ごめん」
低く呟いて0距離からの正拳。
鉤爪は姿を潜め、拳は人間のものであったが、れいなの小さな身体は愛の立っている位置まで
弾き飛ばされた。

「我を忘れると隙が出来る。悪い癖だって言ったのに。」

「、、、じゃない。」
「何?」
「あんたは真希姐ぇじゃない!真希姐ぇがダークネスとかありえない!」
「―――そうだよ。」
一瞬、ほんの一瞬だけ、その瞳に哀しみが通り過ぎたように愛には見えた。
「後藤真希とか、そんな名前はとっくに捨てた。g923なんて実験体も今やもう昔の事。
本当に本当の今のアタシはコードネームG。ダークネス四天王の一人。」
「後藤、、さん、、。」

「アンタ達の知ってる後藤真希は、死んだ。そう思ってて。」


言い放った瞬間、空気の色が明らかに変わった。
Gの放つ殺気が辺りに充満するのを感じ、このままではやられると2人も闘気を開放する。
2対1、しかもリゾナンター内で戦闘力はツートップの2人である。並の敵なら瞬殺であろう。
しかしこの相手に対して容易に勝てるとはまったく思えなかった。

おそらく相手もそう考えたのであろう。
お互いに戦闘態勢のまま、またしばらく膠着状態が続いた。

とてつもなく長い時間に思えたが、実際には1分も経っていなかったろうか。
先に動いたのは今度はGの方だった。
再び右手を鉤爪に変え、空間を切り裂く。
一撃でも喰らえば多大なダメージを負うことは間違いない攻撃。
咄嗟に後ろへ跳んで射程圏外に逃げるれいな。
愛は一瞬で敵の眼前へ移動する。
0距離射程で光の矢を放つ。
が、その時には既に目の前に相手の姿はなく、頭上でその翼を大きく広げていた。

「――ズルぃ。」愛は思わず呟く。
実際のところ相手にどれだけ空中戦の能力があるのかは分からないが、単に宙に浮けると
いうだけでもかなりのアドバンテージにはなる。
事実咄嗟に放った光の矢の一撃はあっけなくかわされた。
また無闇に打てば周囲の建物に当たる。
いつの間にか結界が張られていたらしく通行人には気付かれていないようだが、さすがに
ビルが崩れ落ちたら誤魔化すのは困難だろう。

「来ないんならこっちから行くよ。」

攻撃が来る!と覚悟したその時、Gの背後に小さな影が見えた。


「ぐはっ」
いつのまにか横のビルに昇っていたれいなが背後から仕掛けた空中攻撃に不意を突かれて
Gはバランスを崩す。
そこに間髪入れずもう一撃を叩き込んで、そのまま仰向けに落下した相手の上に着地。
同時に鳩尾に膝を入れ、れいなはマウントポジションを取った。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
咆哮とも慟哭とも聞こえる叫びと共にパンチの連打を浴びせようと拳を振り上げた瞬間、
下からの衝撃にれいなの身体は高く跳ね上がる。
真上に真っ直ぐ伸びた長い脚をそのまま振り子の様にしてGは跳ね起きた。

「熱くなると隙が出来る。戦いはクールに徹しろって。」

蹴り上げられたれいなは猫の様に空中で回転して体勢を整え、少し距離を置いて着地する。
ちょうど中間に敵を挟んで向き合う愛とれいなの構図になった。

「――どっちから先に来る?」
愛とれいな、2人を交互に見ながらGが尋ねる。

「今度はこっちの番や。」
宣言して愛は攻撃を加えるべく地面を蹴ろうとしたその時、結界の外から飛んできた物体が
眼前の地面を穿つ。
一瞬の間を置いて元来た方に戻ったその銀色の物体は、次は駆け寄ろうとしたれいなの
足元に突き刺さった。

「ヨーヨー?」

「―――アンタか。」
「時間切れだ。招集が掛かってる。」
闇の中から現れた女が抑揚のない声でGに告げた。




















最終更新:2012年11月25日 10:00