(13)852 『夢で会いましょう』

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夢を見てたんよ

夢の中で、あーしはシンデレラ
性悪の継母と意地悪な二人の義姉に虐められて、灰色の青春を送っとった
でもある日運命が変わったんよ
王子様のお妃候補を見つけるために、お城で舞踏会が開かれたんよ
継母と義姉は着飾って出かけていった
でもあーしは着ていくドレスも、身につける宝石も、履いてく靴も無くて行けんのが
悲しくて、しくしく泣いとった
したら、魔法使いのばっちゃんが現われて、あーしに色んなものを出してくれよった
あーしは喜び勇んで城に出かけて、その後色々あってめでたく王子様のお妃になること

が決まった
え、はしょりすぎやって、しょうがないもん
あーし、話すのは苦手やし

で、継母と義姉は当然縛り首の刑、じゃなく一緒に城で暮らす事になった
まあなんだかんだ言っても家族やしのう
それに死なれてはこれまでの仕返しが出来んからのう、ふふふ

でまあついに婚礼の日を迎えることになったんよ
教会からは偉い司祭様が来てくれて、二人の門出を祝ってくれる事になった
こんなに幸せでええのかのう、と思っとったら案の定不幸がやってきた

「恐れながら、この婚礼の儀に異議があります」
黒い服を着た素敵な男の人がそう言った、ってお前はダークネスの吉澤ひとみやないか
一体こんなとこで何しとんのん

「無礼であろう、折角の二人の門出にケチをつけるとは
たとえ大臣でも許さんぞ」
いやあ、やっぱりあーしの王子様はカッコいいのう


「無礼の儀お許しを、 しかしながら、王子様の横にいるその女
シンデレラと名乗る女性に、看過できぬ証言があり
あえて異を唱えさせていただきました
ことの詮議が終わった後で、私はいかなる処分も受ける覚悟
まずはこちらの女性の言葉に耳を傾けてください」

「大臣たるお主がそこまで申すとは
そちらの女、なんという名だ」

今度は黒いベールを被ったきれいなおねーさんが出てきよった、げ、あんたはミティ

「ご無礼の段は平にご容赦を
私は北の辺境で占いを生業としているヘケートと申します
このたびは王子様の結婚を祝い、お二人の前途を占わせて頂いたところ、 恐ろしい事 が判ったのです
そのシンデレラと申す女は、世にも恐ろしい化け物、その手はこれまでに殺めた人の
血で血塗られております」

「馬鹿な、何を証拠にそんなことを」

「私は真実の鏡という魔法の道具をさる方より預かっております
 その鏡に姿を映せば、どんなに偽ろうともその者の真実の姿が判るという
 その鏡にその女を映せばたちどころに真実が判明するはず」

「司祭様、どう思われます」

「そのようなマジックアイテムが存在する事は教会の記録にもあります
 ただ、そのヘケートと申す女性が持っているのが、本当に真実の鏡なのかは
わかりませんが」 


「うーむ、そうだシンデレラ
 その鏡にあなたのの姿を映してみよう
そうすれば大臣の言ってることが間違いである事がわかるだろう
 お前ほど美しくて、優しい女性はこの世にいないこともな」

あーしはなんか嫌やった
嫌で嫌で仕方なくて、断ったけど王子様に無理やり鏡の前に立たされた
鏡を見たあーしは悲鳴を上げて、気を失ってしまった
なんでって、そこには化け物が映っとったからや


あーしは化け物
あーしは人の心も読めるし、何千哩の道のりも一瞬で跳べる
それに何よりあーしは光を飛ばすと、人が消えるんや
悲鳴を上げるまもなく、逝ってしまうんや
せやからか、あーしはある研究施設に入れられとった
そこで何十人、何百人もの人を消さされた
最初はちっちゃな動物
そのうちにあーしと同じように研究所に預けられとる子供
最後は催眠術をかけられた兵隊さん達

あーしがその力を使うんが上手くいくたびに研究所の人たちは喜んでた
でもあーしを見る目は冷たかった
まるで化け物を見るような目やった
あーしは悲しかった
しゃーけど悪い事ばかりでもなかったこんなあーしにも友達みたいなもんが
できたんや
眉毛の凛々しいガキさんと、ほっぺがぷにゅぷにゅしとるあさ美ちゃん
でも何といっても一番最初にあーしに声をかけてくれたあの子、そう…


水をかけられて目が覚めたらそこは牢獄やった
あーしはドレスも、ティアラも、ガラスの靴もみんなひっぺがされて
肌着一枚にされとった
いや、別にモノは要らんのよ、モノは
ただ王子様の私を見る目が冷たくて、凍えそうで

「シンデレラ、お前は私を騙し、この国を乗っ取ろうとした
 その罪は万死に値する
よって、明朝領民の前で処刑にする 
大臣、後は任せたぞ」
と言って出て行った
待ってや、王子様、これで終わりなんか

「心得ました 
さて、シンデレラ
お前のような化け物の魔力をそのまま放置して処刑しては、死後もこの国に
災いなす事は必定
よってお前の魔力を封印する儀式を執り行う事となった、おいへケート」

何言うとんや、この吉澤ひとみが
あーしから全てを奪っておいて、その上何をする気や
美貴ちゃん、お願いやから助けてーや、後生やから

「名前をつけるということは、その者を支配するということ
だから、あんたからシンデレラという名前を奪って、新しい名前をつけてあげる
入っておいで」


へケートはそう言うと、牢獄の中に皮の覆面をつけた処刑人を呼び込んだ
処刑人の手にはジュージューと焼け焦げた焼きごてがあった
処刑人はそれをあーしの顔に押し当てた、何のためらいもなく
熱い筈やのに、熱くてたまらん筈やのに、涙が出なかったのは、もー
あーしの心が死んでたからやろね

「アハハハ、ご覧これがお前の新しい名前
一夜限りの名前
i914っていうのは化け物には勿体ない名前だねえ」

あーしは火傷の手当てもされずに、手足を縛られたまま牢獄にほっておかれた
あー、あーしは死ぬんやなあ
でもしょうがないわ、あーしは化け物やから
そー思っとったら足音が近づいて来たんよ
あー誰かがあーしのことを痛ぶりにきたんや、そー思ってたら牢獄の扉が開いたんや

「大丈夫ですか、シンデレラ
貴女を助けに来ました」

何か逞しそうな男の人が入って来よった
誰やのん
あーしは化け物やで
近づいたらあんたを消してしまうで

「そんなことは無い
貴女ほど心の優しい女性はいない
私はそのことを知っています」

あーしの目から涙がこぼれたんは、この人があーしの心を生き返らせてくれたからやね


「私の名はナイロン
貴女を貶めた大臣に仕える身です」

あーしの身体が固まったのを感じたのか、そのナイロンっていう人はこう言った

「怖がらないで、貴女を助けようという気持ちは真実です」

あんたの気持ちはありがたいけど、あーしは何もかも失くしてしまった
その上顔にはこんな醜い烙印まで
もうこのまま死なせて

ナイロンさんは柔らかい物腰の人やったけど、このときばかりは怒ったで

「何を言ってるんですか、シンデレラ
貴女にはたくさんの仲間と、帰るべき場所があるじゃないですか」

仲間って、そんな人たち、あーしにおったかのう
考え込むあーしをナイロンさんは抱きかかえるようにしてて、牢獄から連れ出した
道々、少し話をした

「大臣の事、許してくださいとは言いません
ただあの方も、本当は心の優しい人なのです」

あーしはかーっとなった
優しい人がこんなひどい事をするの

ナイロンさんは本当に済まなそうに俯いた
「あの方は優しさゆえに、部下を戦争で死なせたくなくて
それゆえに、もっと力が欲しいと思い、その心の隙を闇に魅入られてしまったのです」


あーしは難しい事はようわからん
ただんナイロンさんがここまで言うなら大臣も最初から悪い人では
無かったのかもしれん
でも、許せんよ

やがてうっすらと光が見えてきた

「あれが出口です
 あそこを抜け出れば、貴女は自由の身」

したら城の中が騒がしくなった
あーしが逃げ出したんがバレたんや
がたがた震えだしたあーしの手をナイロンさんは強く引っ張って、出口の近くまで
連れて行ってくれた
ん、この手は前にも握った事があったような気がするで

「さあ早く、シンデレラ
私はここでお別れです、貴女は貴女のいるべき場所へ」

待ってナイロンさん、一緒に行こう
残ったりしたら、何されるかわからんで
一緒に行こう

「それは覚悟の上です
たとえ闇に魅入られたとしても、あの方が私の主人であることは揺るぎなき真実
最後まで従うつもりです」


そんなんいやや、あーしはやっぱり一人ぼっちなんやし
お願いやから一緒に来てぇや

泣きながらナイロンさんにすがりついたら、ナイロンさんが目深にかぶってた帽子が脱げてもうた
その時はいめてナイロンさんの顔が見えたんや
あーしははっとした

麻琴、麻琴やないの
どうしたん、あんたなんでそんな格好してんの
一緒に帰ろうよ
久しぶりにあんたの顔マネも見てみたいし、なあなあ麻琴

「愛ちゃん、それは出来ないよ
私はもう愛ちゃんとは住む世界が違うんだ」

そんなことないし、麻琴

「聞いてよ、愛ちゃん
愛ちゃんは一人ぼっちじゃないよ
 あんなに愛ちゃんのことを心配してくれる仲間がいるし
 それに愛ちゃんは、化け物でもない
 私が知ってる人間の中で、愛ちゃんが一番心が綺麗だよ
 だから、さあ、みんなのところへ戻ってあげてよ、愛ちゃん」

知らん間に麻琴の姿は消えてしもうていた
あーしは悲しかった
悲しかったけど、でも光の方へ進んだんや
そーせんかったら、麻琴が悲しむような気がしたからや
闇を抜け、光の中へ出た時、そこには


「愛ちゃん、良かった、心配したよ」

あーしはガキさんの腕に抱えられとった
何やあーしの顔が濡れとるけど、ガキさんまさかよだれでも垂らしたんか
あーし達はダークネスの軍団と戦って、見事に追い払ったけど、敵のボスが最後っ屁で

しかけてきた強烈な催眠術に、あーしがまんまとかかってしもうたらしい

「最後っ屁なんて言わないの」

「リーダーたるものが恥ずかしいのう」

「しょうがないよ、皆を助けようとあんだけ頑張ってたんだから、本当に凄かったから」
ガキさんの目元が光っているのは、涙なんかのう

「高橋さん、すんません
 あたしがもっと正確に予知していれば」

「愛佳は頑張ったよ、 敵の出現ポイントを予測してくれたし
 あれがあったから、勝てたんや」

「小春は、小春はどうっだった」

「小春も頑張ったんやないかな、多分」

「ひどいーっ」

頬をふくらませた小春を笑いながら見てると、ガキさんが言った

「ところで目が覚めたんなら、手を離してくれないかな、愛ちゃん」


あーしは知らん間にガキさんの手をきつく握っとったみたいや
あーしは少し恥ずかしかったけど、それでも手は放さんかった
「こうしてると、ガキさん王子さまみたいやのう」

「王子様にしてはちょっと背が低いけどね」

「うへへへガキさん顔が赤くなってますよ」

「コラー、カメッ、そういうこと言わない」

「二人とも不純だっちゃ」

「なんだかエロスなの、ジェラシーなの」

「新垣照れてルのか」

「二人ともバッチリです」

みんなの声があーしの中で心地良く響くのを感じながら、あーしは麻琴の最後の言葉を

噛み締めていた

そーやのー、麻琴
あーしは一人じゃなかった
こんなに大事な仲間がおったんやな、麻琴
けどな、麻琴
あーしは自分のこと化け物で良い
そー思っとるよ
こんなに大切なみんなを守る為なら、あーしは化け物にだってなるよ
そやから麻琴
あーしの心が挫けそうになった時は、また会いに来てや
夢の中へ




















最終更新:2012年11月25日 15:52