(14)422 『単彩、重なり合えば九路』

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今日はお休み。
せっかくだからいつもできないことをしようとおっきなキャンバスに絵でも書くことにした。

熱い暑い倉庫だったけど、
何もなかったところから自分の手で何かを生み出す感覚は
何ものにも変えがたい喜びだった。

「おつかれー」
突然、お盆になにか載せた愛ちゃんがガラガラとドアを開けて中に入ってきた
その両手から察するに扉は足で開けたっちゃろ。
そんなとこに体の柔らかさを使わんでほしい。

「休憩しよ!」

絵の具箱置き場にしてたダンボールの上にガチャリと同居を命じられたのは
そんな立ち振る舞いから予想もつかない繊細な色のアイスティーと小さなケーキ

手、洗いたかったけど、愛ちゃんが食べたそうにしてたから黙って横に腰掛けた




食べ終わって、作業に戻るれーな

まだケーキは三分の一も減っていないのに愛ちゃんはいろんなことを話し続ける。
その声がBGMになってれなの作業は捗った。

黄色が足りなくなり、絵の具箱に舞い戻った時、ふと黒い絵の具が目に入った。
それは絵の具箱の一番右でひっそりと佇んでいた。

「愛ちゃん、…どうして制服を黒くしたと?」

  闇夜に溶けるから?
  でも…黒は、孤独の象徴、敵の色。

そこまで言ってしまった、と思った。話を遮ってしまったからだ。
あんまりちゃんと聞いてなかったことがバレてしまう。

そう、ビクビクしていたのに、愛ちゃんは真剣に答えを考え始めた。

「あーうん…あーしらってさ…」

 それぞれ、彩られた自分だけの力を持ってるやろ?



「なんていうんだろ…あーしは、黒が孤独の色やって思ってなくて」

愛ちゃんは何か思いついた顔でこちらを見ると
おもむろに絵の具のチューブを空いたれなのお皿に捻り始めた。

  黄緑、橙、ピンク、青、赤、紫、藍、緑…

 ―あぁ、そんなに出してもったいない!
 ―それ、一応お店で使ってる皿なんですけど…

そんな言葉も彼女の楽しそうな目を見たらどこかに消えてゆく

「これがガキさん、で絵里やろー。さゆ…」
円卓上に並べられた大きな絵の具の塊を紹介していくリーダー

「で、これを混ぜると…」
「え、あ、ちょ!!」

慌てて直接に絵の具を混ぜようとした右の手首をぐいっと掴む 
これ、手についたらなかなか取れなくなるのに触らせれるわけない

それに意図とかわかるけん、もう…



「色足りてないっちゃろ、愛ちゃん」

そう言って、使おうと思って握っていた黄色い絵の具をぐいっと目の前に翳した

ぶちゅっと音が出そうなくらい思いっきり筆に黄色をつけて
ぐるぐると円を描く様に皿をかき混ぜる

  色は混ざって物語を作る
  線は重なり言葉を紡ぐ

そこに出来たのは、歪な黒

「愛ちゃん、これ、けっこう汚いっちゃけど?」
「ホンマやな、上手くいくと思ってたのに」

手をバシバシ叩いて笑う愛ちゃん

綺麗に言葉に出来てないし、だからと思って作り上げた絵の具はなんだかぱっとしない
でも、言いたいことは何よりも伝わった

  自分たちが共鳴し合ったら、できる色は黒
  だから、黒は決して孤独な色じゃない



戦いの最中、独りになることがあるのかもしれない
卑劣な罠に陥り、仲間を信じられないかもしれない

でも、そこに身を投じたその前に、円陣を組み誓った想いは変わらない
それを誰よりも証明するから、この制服の、この色が。


「やから、制服は、黒やの」


じゃー頑張ってな、の一言と共に、食べたものを残して愛ちゃんは帰っていった。
そこに残された大量のダメ黒を取り、キャンバスに居場所を与えてゆく。

小春かジュンジュンあたりに、変な色って言われるかもしれない。

でも、この色が、ここにいるべき最も相応しい色だと、胸を張って言える


 数日後に完成したその絵には、悲しみを抱えながらも、
 勇ましく立つ9人の少女が微笑んでいた
 皆胸に、共鳴を携えて


 混ざり合え、想い 共鳴せよ、仲間と




















最終更新:2012年11月25日 16:41