(15)484 『能力のツカイカタ』

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「ガキさん…なんで、何で今になって…!」
「ごめんね愛ちゃん…これがあたしが出した答えなんだ」

あーしから十数メートルほどの距離を取って、ガキさんは構える。
あぁ、あーしはこの構えをよく知っている。
鋼線だ。ガキさんのとっておきの、得意技。

深夜。
呼び出されて向かった場所には、忌まわしい闇色の服を纏ったガキさんがいた。

 愛ちゃんに、ここでこの技を受けてもらわなくちゃいけない

ガキさんは静かにそう言った。
それは、前にも経験した悲しき絶縁宣言。

あーしの後ろには、愛する仲間がいる。
だけど、あーしの目の前にいる彼女もまた、愛する大切な仲間。

「答えてや! さっきまであんなにいつも通りやったのに…!
 なんで! なんであーしに武器向けるんや!!!」
「こうすることが、あたしにとって一番いい答えだった、ただそれだけだよ」

ガキさんが右手をゆっくりと引く。
来る。鋼線が飛んでくる。でもあーしは逃げん。逃げたら後ろの仲間が傷つく…

それならばガキさんの望み通り、その糸にこの身体を投げ出そう。
それで全てが終わるのであれば。誰も傷つかないですむのならば。


「そんなことさせん!!!」
「あたしたちだって、やればできるんだから!!!」

後ろで声が上がる。
あぁ、みんなは背負った使命を全うしようとしている。
あーしにとって、今、いったい何が使命?

目を閉じる。
前で後ろで、能力のエネルギーが強まっていくのが感じられる。

何もかも受け止めよう。
あーしは、リゾナンターのリーダー。
誰も傷つけさせやしない。みんなを、守る。それがあーしの使命…

両手を広げて前を見据える。
その瞬間、ガキさんが鋼線を放つモーションが見え、
背後から多くのエネルギーが前方へ放たれるのも見えた。


鋼線がエネルギーによって、あーしの目の前で食い止められる。
線が力と力のぶつかり合いの中で形をグニャグニャと変え、
リンリンが最後に放った炎が、その線を包むようにして…

…ん?
あれ?
これって…

「“H”“A”“P”“P”“Y”…、きゃっ!」




急に身体を持ち上げられて、一瞬にして視界が広がる。
眼下に広がるのは…、夜の暗闇に光り輝く文字の列。

「これ、どういう…」
「たかーしサン、鈍感デスネー」

あーしの身体をつかんでいるのは大きく獣化したジュンジュン。
その背にはみんなが乗っていて、そして…ガキさんまで申し訳なさそうな顔をして。

「愛ちゃんが騙されやすい人で良かったっちゃー」
「もー、あんな演技するの大変だったんですからね?」
「精一杯考えて、こんな形になっちゃっいましたけど、喜んでもらえますかぁ?」

あーしは全てを悟り、ジュンジュンの腕の中で空を仰いだ。
まん丸の月が輝く。その形が、どんどん歪んでいく。

「…ごめんね、こんな乱暴なやり方になって」
「ほ、ホンマやよ、ひどい、なんで、こんな…」

いたずらっぽく笑いながら近寄ってきたガキさんの身体を、あーしはぽかぽかと叩いた。
ありえんよ。こんな風に人を騙しておいて、こんな風に心えぐっておいて、
これがみんなの答えだなんて、そんなの、そんなの…


でも、みんなが一生懸命、あーしを驚かそうとして考えてくれたこと。
みんなの乱暴な祝福は、それでもたくさんのあったかい想いを確かに運んでくれた。


「きれー、やね」

ぐずぐずと鼻をすすったら、ガキさんが笑って肩を抱いてくれた。
地面の上で光る、あーしへのメッセージ。


ガキさんの放った鋼線が、ジュンジュンとリンリンの念動力で形を変え、
エリが起こす風に乗せて、リンリンの炎と、小春の電撃が鋼線を彩り、
さゆの治癒の光もまた、幻想的な色となって瞬く。
そんな特殊な能力の放出は、れーなのリゾナント・アンプリファイアが支えていた。

「こんな荒っぽいことしてもねー、高橋さん喜んでくれはったんで」

“今”を予知したみっつぃが笑う。

…みんな、どんな能力の使い方してるんや、全く…。
あーしは、負けた。
このメンバーの愛には、勝てそうな気がしない。
でもそれが最高の幸せなんやろなって、今、強く思わされた。


「リーダー、誕生日おめでとうございまーす!!!」


夜空を震わせるほどの8人の声の重なりが、あーしの心もまた震わせた。



 ゚・*:. 。. HAPPY BIRTHDAY, AI ! .。.:*・゚
    *・゜゚・ *:.。. 2008.9.14 .。.:*・゜゚・*




















最終更新:2012年11月25日 17:29