(18)106 『海上の孤島 -終わりの始まり-』

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ここは太平洋にある小さな島、『海上の孤島』。
闇を統べる者達が管理している島で、別名『牢獄島』と呼ばれていた。

その名のとおり、この島全体が監獄として使用されており、
闇に捕まり狂った者や反逆者たちが収容されている。


その反逆者たちの中に共鳴者は含まれており、監獄に収容されている彼女 -新垣里沙-も例外では無い。


   ◆◆


「どうやって助け出すんですか?」
「海の上だし、けっこう遠いよ」
「他に方法は無いと?」


喫茶リゾナントの店内は少し慌しかった。
というのも、時間を遡ること約2時間半前…


   **


「愛ちゃんっ」


店の扉を開けたと同時にいきなりれいなに名前を呼ばれた愛は振り返った。


「いきなり何ぃ?」


れいなは走って帰ってきたらしく、息を整える仕草をしてカウンター席に座った。
そして、"あのこと"について聞いてきた。


「さっきの共鳴、あれなん?」


どこか強い意志のある瞳で愛を見つめるれいな。
その瞳の奥には、絶対に突き止めたいという気持ちが溢れるぐらいにある気がした。


「れいなも、感じたんか?」
「感じたと。でもメンバーの誰のでも無かったけん、周りを探したと。
 でも近くには誰もおらんし。…どう思う?」
「んー、…あの共鳴は、どっかで感じたことのある気がしたんやけどなー」
「高橋さんもそう感じはったんですか?」
「あ、愛佳」


扉のほうから声がして見ると、いつのまにか店に来ていた愛佳だった。


「愛佳もさっき感じたんです。メンバーかなって思ったんですけど、なんか違う感じで…」
「ほら、愛佳も感じとったと」
「え、田中さんも感じてはったんですか?」
「店に帰ろうとする前に感じたけん、探してみたけど無理だったと」
「そうなんですかー…」


愛は二人の会話を聞きながら、先ほどの共鳴が誰のものかを考えていた。
考えれば考えるほど、見知った誰かのものだと感じているのに、その誰かが分からない。


「れいな!」
「うおっ、びっくりしたー…さゆなんね?」
「変な共鳴した!」
「道重さんもですか!?」


次第に店に集まってくるメンバー。
先ほどの共鳴を感じたらしく、皆口々にそのことについて話している。
今日、病院を退院した絵里も、この共鳴について話したいらしく真っ先に店に来たみたいだ。


「亀井サンはどう思いマスか?」
「絵里には分かんないよー…でも、どっかで聞いたことのある声だった気がする…」
「どこかで聞いたことのある声…」
「愛ちゃん?」


思考を激しく巡らす。
今までこんなにも思い出そうとしたことがなかったぐらいに。


「なあ、さっきの共鳴ってなんて言ってた?」
「なんて言ってたっけ?」
「なんか、会いたい、とか」
「笑顔を思い出しましたよ」
「なんか懐かしかったよね」
「でも小春、悲しい気持ちになりましたよ」
「あー、確かに悲しかったと」
「胸がイッパイ?になりました」
「誰なんだろうね」


メンバーが口々に思い出して言うことを、すべて集約して考えてみる愛。
もう少しで分かりそうな…喉元まで出かかってるのになかなか出てこない。


「うーん……」
「リーダーがすっごい考えてるの」
「ほんとだ」


メンバーに何を言われても思考はすでに謎の共鳴へと飛んでいた。


「アー!」
「いきなりなんねっ、ジュンジュン」
「絵里の心臓がびっくりするじゃーんっ」
「お守り見えました!!」
「は?」
「え?いきなり何?」
「ジュンジュンだいじょーぶー?」


でも見えたんデス!と強く言うジュンジュン。
メンバーからそれは幻想だとか言われてもめげずに言っていた。


「高橋サン!」


ジュンジュンに呼ばれて顔を向ける。


「お守り………っあ!!!」


思い出した思い出した思い出した!!


「里沙ちゃんや!!」


いきなり思い出して大声を上げた愛を皆は不思議に見つめる。


「みんな!里沙ちゃんや!!」


メンバーに思い出せと強く伝える。


「……お守り?……あ!新垣さんや!!」
「え?だ……っ思い出した!!ガキさんやん!!」


口々に思い出したと声を上げるメンバー。
引っかかっていたものがすっと取れた瞬間のように、
彼女たちは声を上げて謎の共鳴の正体である人の名前を叫んだ。


「里沙ちゃんや…なんで忘れとったんやろ…」



愛は呟き、正体を突き止めた瞬間、ここにはいない里沙のことを想う。

忘れてはいけない人なのに、なぜ忘れていたのか。
そして、なぜ里沙は今ここに一緒にいないのだろうか。

なぜこうなってしまったのか、愛には里沙を問いただす権利がある。
そして問いただすには、どこかにいる里沙を探して見つけなければいけない。


「里沙ちゃん……」


愛はもう一度、彼女の名前を呟く。
そして会いたいと、この共鳴で感じ取ってくれたらと願う。



    ◆◆



鳴り響いた悲しき共鳴が新垣里沙のものであると知り、
皆は彼女を探そうとするが手がかりなどまったく無いに等しく、
どこから手をつければいいのか分からなかった。


「ガーキさーん、どこにいるんですかー」
「ここで言ったって分からんやろ」
「分からないから言ってるんじゃん」
「絵里もれいなも睨み合わないのっ」
「だってー…」

誰もが考えるのを諦めていたその時、一人の訪問者がやってきた。


「喫茶リゾナントって、ここですか?」


一番に訪問者に気付いた愛は、その人に近づき答えた。


「はい、そうですけど…」


愛がそう言うと訪問者はニコリと笑い、次には衝撃的な言葉を発した。


「私、新垣里沙という女性の行方について知っている者です。」


そう言われ、一斉に驚くメンバー達。
訪問者はただ、笑顔を浮かべてそこに立っていた。



   **


「海上の孤島、ですか…?」
「はい、彼女はそこに囚われています」


あの後、訪問者は皆に疑いの目をかけられるが、話だけでもさせてくださいと言い、
椅子に座り、店内にいた愛達に新垣里沙の居所を教えた。


「海の上とかどうすればいいんですか?」
「私が船を手配しています。それに乗り込んで助けに行ってください」
「待って」
「高橋サンどうシマした?」


それまで口を開かずに黙って話を聞いていた愛。


「あんたのこと、信用できん。
 いきなり来て、里沙ちゃんの居場所を知ってるって言われても、
 私達はあんたのことをそう簡単には信じることなんてできん」
「…そうですね。もしかしたらガキさんをさらった人たちの一人かもしれないですし」
「どこまで信用できるかは、こっちが決めることっちゃけん」
「その言葉を信じるかどうかは絵里たちが決めることです」


口々に言うメンバーは、まだ疑いの目で訪問者を見つめる。


「それに、名前を言うことができないなんて信じられませんっ」


押し黙る訪問者。


「もしも、あんたが私達の敵だとしたら、なんでその話を私達に伝えるんや?」
「……貴女達の仲間である新垣里沙が、海上の孤島に囚われているというのは本当。
 そして船を手配したことも、貴女達に協力をしようと思っているのも本当です」
「じゃあなんで名前は言えないんですか?」
「それは私が所属する団体の規則に反すること。
 名前を言わなくても、信じてもらえれば大丈夫だから。
 協力したいと思ったから、私はここまで貴女達に伝えに来たのです」


何が大丈夫なのか、愛は考えた。
里沙の情報は、この人からしか貰えず助ける方法もこの人しか持っていない。
大切な仲間のことだ。
だからこそ、正確な情報だということを知って行動したいと思っている。

けれど、目の前にいるのは名前も名乗れない一人の訪問者。
半信半疑で聞いてきた情報を、鵜呑みにできるほど馬鹿ではない。

しかし…


「……信じよう」
「え、愛ちゃん?」
「うっそ、ホントに?」
「あんたの話、信じるよ。でも一つだけ、言っておく。」
「何ですか?」

「…里沙ちゃんは、あーし達の大切な仲間や。
 協力したいと言った以上、あんたはあーし達の側につくことになる。
 よって、ここにいる仲間と里沙ちゃんを傷付けることは一切あーしが許さん。」
「…もし、それを破れば?」
「もし破ったら、……信じたあーしがバカやったっていうことになる。
 だから、その時はあーしがあんたを敵と見なして、殺す」


一瞬、緊張の糸が店内を張り巡る。


「いいか?」
「…分かりました、その規則に従いましょう」
「なら、信じることにするよ」

一気に緊張が解ける店内。
愛以外のメンバーはため息を漏らす。


「…ということで、作戦を練りましょう」


訪問者がそう言い、彼女たちは身を寄せて相談を始めた。





















最終更新:2012年11月25日 22:34