(18)367 『囚われの天使』

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彼女は廊下の窓からつきを見上げる。
女性と言うにはまだあどけなく、少女と言うには美しすぎる彼女。
ある者は親しみを込めて、ある者は畏敬の念を込めて、
またある者はただ畏怖して、彼女をこう呼ぶ。

『天使』と。

「なっち、またぼーっとしとるんか?」
組織の幹部が彼女に語りかける。
「裕ちゃん・・」
天使は困ったように微笑んだ。
「どうした?なんか怖い夢でも見たんか?それとも腹減ったんか?」
幹部は天使の顔を見て驚いた。

「どうして戦うの?みんな大事な後輩なのに」
天使は悲しそうに言った。
何を今更と幹部は思った。
それは天使にも伝わった。また、困ったように笑うと窓の外に目をやった。
「なっちね、こんなにいい暮らしさせてもらって感謝してる。
なにもしてないのに。
みんな思ってる。なっちが役立たずだって」
「そんなこと、、」
「ううん。わかってる。でもいいの。だけど、やっぱり辛いよ。
ここには裕ちゃんもいるし、矢口もいる。
吉澤だって石川だって。みんな・・なんか変わっちゃったけど、
でもみんなが仲間であることには変わりないし」
幹部の言葉を止めて天使は続けた。
「裕ちゃんの言う未来も正しいと思うよ。それが一番現実的なのも。
でも、後輩を傷つけるのは辛いよ」


幹部は天使を忌々しく思う。
自分がここに来たのは最終的に天使がここを選んだからだ。
天使がリゾナントに残ることを選んだのなら自分も残っていた。
それを、、。

「ごめんね、裕ちゃん。今更だよね」
天使ははかなく微笑んだ。
幹部はずっと彼女の本当の笑顔を見ていない。
戦いを重ねるたび、自分がここに帰るたび彼女は傷ついたように微笑む。

古の物語。
天使は堕天して悪魔の王になった。
本当に悪魔の王の心は憎しみとかなどという負の感情でいっぱいだったのだろうか?
本当に天を、神を憎んでいたのだろうか?
本当に天を、神を超えようとしていたのだろうか?

幹部は天使を見るたび、胸が痛む。
天使を堕天させたのは他ならぬ自分ではないかと。
誰よりも他人を慈しみ、大事にするから。
だから自分の心を拒否できなかったのではないかと。

ふと、天使の手が幹部の手と繋がる。
幹部が自分の過ちを許せなくなるたびに天使は寄り添ってくれる。
自分で自分をなくしてしまいたいとき、なにも言わずそばにいてくれる。


「ありがとな」
「裕ちゃんもね、笑ってないんだよ」
突然の言葉に声が出ない。
「裕ちゃんも、前のようには笑ってないよ」

『共鳴』

対リゾナンターで一番頭を痛い所。
これも同期の絆か。
幹部は笑えてきた。

「蒼い正義、でしょ」
天使は微笑んだ。
その笑顔は慈愛に満ちていた。
幹部もまた微笑んだ。

蒼い正義。

蒼すぎるかもしれない。
それでも彼女達は進む。
進み続けられることを祈りながらも、止めてくれることを祈りながら。





















最終更新:2012年11月26日 21:51