(01)940 名無し募集中。。。 (小春vs後藤)

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「ここでいい、降ろして」
突然後の席から声を掛けられたタクシーの運転手は急ブレーキをかける
そこは駅から離れた人気のない公園の入口だった
「ちょっと小春、こんなところで降りてどうするつもり」
隣に座っていたマネージャーがタクシーを降りようとする小春を慌てて止める
「なんでもない、ちょっとヤボ用。おやすみなさい」
小春は後ろも振り向かず右手をひらひら振りながら公園に入っていく
「明日は10時にスタジオ入りだからねーっ」
マネージャーが叫ぶとタクシーは再び走り出して行った

公園の中央まで歩いていくと小春は歩みを止める
「いつまで隠れているつもり? スタジオからずっとつけてきてるでしょう」
小春が闇に向かって叫ぶ
それに答え応じるように近くの街路灯の下に人影が現れた
「後藤さん!」
「迎えに来たよ、久住小春。いやリゾナントレッド」
「どうして、どうして裏切ったんですか!? あんなに尊敬していたのに!
 いえ、今からでも遅くない、戻ってきてください!」
「眼を潰されたってゆーのによくもそんな殊勝なことを言う。
 わたしと一緒に来ないというなら力ずくで連れて行くまで」
後藤がコートを脱ぎ捨てると背中から蝙蝠の羽根のようなものが生えてきた
地面を軽く蹴るとひらりと宙に舞い、長く伸びた鋭い爪が目にも止まらぬ速さで小春に襲いかかる
だが小春は常人を超える反射神経でそれを躱していく
何度目かの攻撃の末、後藤の爪が小春のポニーテールを結んでいるリボンに掛かった
リボンが解け小春の長い髪がおりる
「いつまで逃げてるつもり? このままじゃ夜が明けちゃうよ」
後藤が街路灯の上に立って小春を見下ろしていた
小春は覚悟を決めたように深呼吸をすると手のひらを胸の前で合わせる
合わせた手の中から光が漏れ、広げていく腕に合わせて光は輝きを増しながら細長く伸びていく
宙に浮く光の棒の片端を握り軽く振ると、それは銀色に輝く剣に変わった

「そうこなくっちゃ!」
口元に笑みを浮かべた後藤は街路灯の上から小春に飛びかかり、
小春は剣を振るって後藤の爪を跳ね返す
光の帯と金属の擦り合う音が公園の中を走り回る
長い髪を振り乱して放った小春の一撃が後藤の身体を捕らえた
後藤の身体が跳ね飛ばされ大木にぶつかり崩れ落ちる
追い打ちをかけるように小春が剣を振り降ろした瞬間、後藤の身体がその場から消える
銀色に輝く剣は目標を失い、後ろにあった大木を真っ二つに切り裂いた
バキバキと大きな音を立てて木が倒れる
倒れた木のことなど気にも留めず小春は後藤の行方を捜す

-後藤さんの気配が消えた?-

肩で息をしながら呼吸を整える
小春の心に油断が生じた瞬間、遠くから叫び声が聞こえた
「左です!久住先輩!」
全部聞き終える前に身体が反応した
剣を構えて振り向いた直後、大きな音を立てて二人の身体が重なった
後藤の手を小春の剣が押さえつける
爪の先が小春の眼の5mm前で止まっていた
「惜しいねえ、やっぱりあんたを敵にしておくのはもったいないよ。
 またいつか迎えに来るからね。このリボンはそれまで預かっておく」
そう言うと後藤は笑いながら闇の中に消えていった


「久住先輩、大丈夫ですか?」
光井が久住のそばに駆け寄ってきた
「ありがとう、みっつぃ。でもなんでこんなところに?」
「えっと、その・・・久住先輩が・・この公園で倒れてるビジョンが見えて・・・」
「そっか、みっつぃに助けられたんだね。改めてお礼を言っておくよ」
「いえ、そんな・・・」
「じゃ危ないからもう帰りな」
「・・・はい」
素っ気ない態度に釈然としない何かを感じながらも光井は公園の出口に向かう

小春もすぐに帰るものと思ってたが、光井が振り返ると小春はしゃがんでなにかを探し始めていた
小春から1メートルほど離れたところにハンドバックが落ちている
光井が拾ってそれを小春に渡そうとした
「きゃっ!」
不意を突かれたように小春が驚く
だが光井は正面からバッグを渡したはず
「久住先輩、まさか眼が見えてないんですか?」
光井は驚きを隠せない
「でも・・・さっきはあんなに戦って・・・、ていうか普段はあんなに普通なのに・・・」
光井は半信半疑のまま手のひらを小春の顔の前で振ってみせる
しかし小春の瞳はキラキラと輝いて光井の目を見据えたままだった

小春は深いため息をつく
「ちょっと能力を使い過ぎちゃっただけだよ。能力が戻ればちゃんと感じ取れるようになるから」
「でも、なんで・・・」
「以前にちょっと、ね」
「でも怪我なら道重先輩に治してもらえば・・・」
「愛佳!」
光井は突然大声で呼ばれたので身体がビクッとなった
いや、それより『愛佳』と初めて名前で呼ばれたことへの驚きか
「コレは自分自身への戒めなの。みんなには内緒にしてて。
 わたしは大丈夫だから。今日は本当にありがとう」
小春はにっこりと笑うとしっかりした足取りで公園を後にした
「久住先輩・・・」
光井は小春が見えなくなるまでその姿を見送っていた
そして悩む
「わたしどうしたらいいんだろう」
「大丈夫やよー」
「うおっ!」
今度は光井が驚く番だった
高橋が光井の背中から抱きつくように乗りかかってくる
近づいてくる気配も足音もなかった
「みんな知ってる。知ってて黙ってるの。小春が自分から言ってくるのを待ってる」
「高橋さん」
「良かったね、愛佳」
「え?」
「今日の愛佳は小春を救うことができた。小春の笑顔を見ることができた。あの笑顔は本物だよ」
光井の顔に笑みが浮かんだ
「はい!」




















最終更新:2012年12月17日 11:34