(22)778 名無し募集中。。。 (魔女と神様)

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



「私にはわかってます。 貴女が本当はとても優しい人だって」
「うるせぇんだよ」 

ヤツの言い草にムカついたあたしは氷塊の雨を降らせてやった。

「貴女の目がそんなに荒んでるのは、本当に愛された事がないからでしょう」
「いい加減な事を言うんじゃねえ」 

氷の吐息でヤツの体温を5度ばかり下げてやった。

「見つめて下さい、本当の自分を。 そしてどうか心の声に耳を傾けてください」

とびっきり尖った氷錘体の作成を中断した。

「こんだけあたしに無茶苦茶にされても、優しい言葉をかけてくれる。
あんたは本当の神様なのかもしれないね」
「漸く信じていただけましたか」
「ああ。 で、神様のあんたに今のあたしの一番の悩みを解決して欲しいんだけど、いいかな?」
「喜んで、力になりましょう」
「ありがたい。 今作りかけてたこの氷の槍。
コイツであんたの胸を一突きしたものか。 土手っ腹を串刺しにしたものか。
どっちがいいんだろう?」


ヤツはあたしの言葉の意味がすぐには理解できなかったみたいだけど、やがて事態を把握すると恐怖に顔を歪め、
あたしに背を向けて駆け出した。

「あはははは、そうか背中が希望かよ!!」

飛ばした氷錘でヤツの身体を神殿の壁に縫い付けると、その衝撃で壁はひび割れた。
中からヤツが不正に蓄えていたらしい金や、信者の娘達とよろしく楽しんでる写真やらが溢れ出てきた。
神と氷の魔女との対峙を、息を呑みながら見守っていた信者達の顔は、騙されていた怒りと
信じるものを失った不安で一杯になり、口々に話し出す。

「信じていたのに。 こんな奴だったなんて」 
「これから我々は何を信じて生きていけばいいんだ」 
「偽の神様を退治してくれたこの人こそ本当の神様、いや女神様だ」
「そうだこの方のお顔をよく見てみろ。 とても神々しい気品に満ちたお顔じゃないか」

雪の女神ミティ様として崇められる姿を一瞬想像してみたあたしだったが、何だかぞっとしないね。
立派な神殿で人に崇めたてられながら慈愛を振りまくよりも、銃弾と敵意が降り注ぐ戦場を駆け抜ける方が、
あたしにはお似合いだ。


神様の正体はダークネスを裏切った透視能力者。
逃亡の果てに辿りついたこの地で、人の無くした物、いなくなった人間を探して、小銭を稼いでるうちに、
人々に神様と崇められ、その気になっちまった。
大人しくしてれば、あたしが出向くことも無かっただろうに。
神様の抱えてる信者に目を付けた上の連中が、神様の正体を暴いてから惨めに晒してこいっていう指令を
あたしに下したって訳さ。

信者たちは組織の派遣する新しい”神様”に精神を支配され、財産のある者は根こそぎ巻き上げられ、
体力のある者は戦闘要員として使い捨てにされるんだろう。
何の取柄も無いやつはどうなるかって?
ふん、そんなことは知ったこっちゃないね。
酷いって思うかい?
ああそうかもしんないね、でもこの連中はそれで案外幸せなんじゃないのかな。
大好きな神様にご奉仕できるんだからさ。

魔女と呼ばれるあたしが言うのも変だけど、もしも本当の神様がいるっていうなら、
そいつはこんな豪華な神殿なんかに住んじゃいない。
必死で頑張っているやつの背中を押してやるために、崖っぷちから堕ちかかっているやつを引き摺りあげる為に
世界中を飛び回っているだろう。
まあいればの話だけどさ。

何かまだ納得できないっていう顔をしてるね。
もしもあたしのことを許せないっていうんなら、あんたらが信じる神様を連れてきな。
まとめて負かして、固めて、踏み砕いてやるからさ。

冬のミティは野獣さ。
誰にも負けやしない。




















最終更新:2012年12月01日 20:47