(24)964 『Air on G - 6. be with you.-』

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「そんな雑魚相手にいつまで遊んでるのさ。」
愛とれいなに一瞥を喰らわせ、女は言い放つ。

「いやぁー、結構手強いよ?」「ふん、まぁいい。とにかく招集掛かってるし、帰るよ。」
「ちょい待ちぃ!」
現れた女がGを促して、おそらくそこから現れたのであろう空間の歪みに向かおうとするのを
愛は呼び止める。
「こっちのケリもついとらんのに横から出てきて帰るだのなんだの、第一―――」
女は五月蠅い奴だとでも言いたげに愛に視線を投げる。
「雑魚とはちとご挨拶やな!」
叫ぶと同時に放った光の矢を女は事も無げにかわし、表情一つ変えずにヨーヨーを投げる。
愛も同じように身体をかわし飛んでくるヨーヨーを避けた。

「!!」

避けた筈のヨーヨーはしかし直前で僅かに、しかし確かに軌道を変えて愛の顔面に迫って来た。
咄嗟にガードした右手にヨーヨーは巻き付き、そして―――

「ぐぁっ!」
女の手元からストリング、――通常の紐ではなく極小のチェーンであるようだ――を伝って
炎が走り、ヨーヨーは一瞬にして火に包まれた。

「アタシを舐めない方がいい。」
火は一瞬で消え、ヨーヨーは巻き取られたがダメージは小さくない。
思わず腕を押さえて膝をつく愛を見下ろして女は告げる。
「…何者?」
「アタシ?アタシは、ダークネス四天王の1人。ある時は粛清人A、またの名を――――」
漆黒のマントを翻すと中には暗紅の戦闘服。


「――炎の魔女、AYA the Witch。」


「熱ッ!」

隙をついてGに飛び掛かろうとしたれいなを炎の壁が遮る。
そのままA自身とGの周囲を取り巻き、愛達との間に炎の結界となった。

「しょうがないな、帰るか。」
億劫そうにGが呟く。
「至高王候補を2人いっぺんに相手するのもしんどいしね。」

「はぁ?何言うとうと。」
訝るれいなと対照的に、愛の表情が凍り付く。
それは先程聞かされたばかりの単語。――自分とかつてg923と呼ばれた存在とに関わる――

至高王―High-King―ダークネスの言うところのすべての能力者を統べる存在。
自分が、そして彼女自身がその候補であったとGは言った。しかし、2人?
相手にするというからにはG自身は数に入らない。ここにいるのは自分の他には――


「――れいな、が?」


「そういうことになるかな。」
Gはゆっくりと語り出す。

「田中博士の研究についてマルシェが面白い話を見つけてきてたよ。
博士の研究の一つは、非能力者にも能力を植え付けること。その実験に使われたのは
アタシの能力。植え付けられたのは――」
聞き覚えのある名前にれいなの顔色が変わる。
以前マルシェにより拉致された時に聞かされた、実の両親の裏の姿。
「そう。自分の実の娘、つまり、れいな。」
「そんなこと!」愛が叫ぶ。

――組織の要請か博士自身の選択かは判らないが、とにかく実験は行われ、成功した。
失ったg923と同等の能力を有する存在。正しく育成すればi914と並ぶ至高王候補になる。

しかしその実験を行ったことは、博士が組織を抜ける決定的な要因になったらしい。
結果、研究成果は博士とともに消え、その娘は能力と実験に関する記憶を深く封印された。
幸い実験は組織内でも最高機密として行われていた上に情報の伝達も不十分だったため、
博士が粛清された際には対象がその娘だとは気付かれず、おかげでれいなは孤児として
生き延びられたのであろう。

そして組織を抜ける前、最後の研究内容が能力の消去だったのは、実の娘に自分の手で
闇の運命を背負わしてしまったことへの贖罪だったのかもしれない。――

「アタシが最初にあの施設で会った時、なんか自分に似てるって思ったんだよね。
そりゃ似てるはずだわ。」


「さて、じゃあアタシは帰るから。」
闇の2人はそのまま空間の歪みに姿を消す。
「今度会う時は本気で殺すつもりでね――――。」


歪みが閉じるとともに周囲の炎も消え、後に残るのは愛とれいなの2人が雨に打たれて
立ちつくすのみ。
「ちくしょう。」歯噛みして愛はれいなを見る。目は光を失い、焦点はあっていない。
「あたし、、、真希ね、、、パ、、」茫然としたまま呟くれいなを揺さぶって呼びかける。
「れいな!」
一瞬れいなの身体がこわばり、そして――――

「うぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああぁぁぁ」


激しく嗚咽するれいなを愛は固く抱きしめた。



 * * *




そのままどれくらい経ったであろうか。やがて雨は止み、空には綺麗な満月。
ようやく泣き止んだれいなに愛は優しく声を掛ける。

「さ、帰ろうれいな。ガキさんが待ってる。」
「愛ちゃん、あたし、、」「何もいわんでええ。」
おびえた目で見ながら恐る恐る口を開いたれいなを制して愛は語りかけた。
「れいながどういう風に生まれて育って、どういう存在かとか、そんなんは関係ない。
あーしは、れいなが今ここにおってくれて一緒に暮らして一緒に戦って、それで充分。
他のみんなだってそうだし。ま、今はいきなり色々聞かされて混乱しとるのやろけどさ。
――正直あーしもようわからんなっとるし。」
「愛ちゃん、、、」
「さ、もうほんとに帰らんと。帰ってあったかくせんと、このままだと風邪引くで。」
「そう、やね。」無理にでも笑顔を作ってみせるれいな。
「あー、でもせっかく買ってきた食器、粉々っちゃ。ガキさんに勿体ないって怒られる。」
「襲われたんだもんしょうがないさ。ガキさんならわかってくれるって。」
「そうかなー。」「たぶん。」

帰り際、ふと振り返って空に掛かる満月を仰ぎながられいなは思う。
両親の事、後藤の事、そして封印されているという自分の能力。
正直自分があの後藤――Gに匹敵する能力を持っているとは到底思えないし、封印とやらが
どうやったら解けるのか、そもそも解くことが出来るのか。

ただ、いずれまた彼女と戦うことになるだろうという確信はあった。
その時自分は戦えるだけの力を、さゆみや絵里を守れるだけの力を使えているのだろうか。
もし本当に自分にその力があるのなら、そのためにも使えるようになりたい。

「あーもう!ようわからん!」
とりあえず考えて結論が出る訳でもなく、頭を振ってれいなは愛の後を追った。




















最終更新:2012年12月02日 09:58