(16)335 『蒼の共鳴特別編第2夜-蒼の戦乙女-』

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色とりどりのネオンが煌めく、若者達が集う街。
煩いくらいに若者達の放つ声が一つの音楽のように、街全体に溢れている。
時刻は夜の十一時、まともな学生なら既に帰宅している時間であった。

この時刻であっても尚、若者達の作り出す喧噪は街に溢れていた。
その喧噪に耳を塞ぐように“少女”はヘッドフォンから流れてくる音楽の音量を上げ、人混みをすり抜けるように街を歩く。
目深に被ったキャップ、軽くウェーブのかかった茶髪。
原色を貴重とした派手な服装に、きつめのメイク。

街を歩く少女に、あらゆる異性が声をかけてきた。
一人なら遊びに行こうよと声をかけてくる、見た目だけで判断するなら間違いなく頭の悪い男。
一回幾ら?と、財布から万札を覗かせるスーツ姿の男性。
強引に少女の手を引こうとする者もいたが、少女が一睨みするとすごすごと去っていく。

少女はふらふらと、まるで野良猫が安眠出来る場所を探すかのように街を歩いていた。
その目は何処か虚ろで、生命力を感じさせない暗さを宿している。

ふと、少女は道端に座り込み、手に持っていた紙袋の中身を見る。
同世代の少女達がその中身を見たら羨望の眼差しを向けるであろう、高額な服やバッグが入っていた。

だが、少女はそれらを見ても表情を変えることはなかった。
むしろ、ゴミを見ているかのようにその瞳は冷たく輝いている。

少女はおもむろに、その紙袋を丸めて道端に投げ捨てた。
そして、何事もなかったかのように少女は再び歩き出す。
その寂しそうな横顔を見る者はいなかった。


少女は生まれた時から一切の不自由を感じさせない、裕福な家で育ってきた。
必要なもの、ただ欲しいもの、何もかも望めば両親は少女にそれを買い与えてきた。

常に真新しくオシャレな服に身を包み、最新型のゲーム機や携帯電話を誰よりも早く手に入れては周りに自慢していた。
口癖のように、うちの親は何でも買ってくれるっちゃと言っていた少女はいつしか周りに“友”がいなくなった事に気付く。

気がつけば、少女の周りを囲んでいたのは友ではなく、少女の捨てた物を貰おうとするような人間ばかりであった。
何でも言えば買って貰える少女は、物に対する執着心がひどく薄かった。

すぐに新しい物を求めて、十分に使える物をすぐに捨てていく少女について行ける程裕福な人間は周りには存在しない。
そのため、少女は周りからはお金持ちの我が儘なお嬢様、という印象しか持たれないようになった。
いつもこれ買ったと言って回りに見せびらかすだけ見せびらかせて、すぐにそれを捨ててしまう少女の内面を理解出来る者はいなかった。

欲しい物は全て手に入るという環境で生活しながらも、少女はけして満たされることはなかった。
両親は確かに、少女の要求を叶えてくれた。
だが、けして、少女が何よりも切望していたもの―――“愛情”を与えることだけはただの一度もなかったのだ。


ある日、少女は深夜徘徊という理由で警察に連れて行かれた。
万引きなどをしたわけでもなくただ彷徨いていただけだからか、そこまで説教はされることはなかった。

親御さんに連絡して迎えに来て貰うという流れになり、少女は黙って椅子に座っていた。
迎えにきてほしい、そう思いながら少女はひたすら両親がここに来ることを切望していた。
少女はただただ両親の気を引きたいという一心だけで、わざと警察に捕まったのであった。

どのくらい待たされただろうか。
溜息をつきながら、連絡がつかないと言ってきた警察官。
少女は絶望せざるを得なかった。

何と言葉をかけたものかと戸惑う警察官に、少女は小さく笑いながら送っていってもらえますかと頭を下げた。
見た目の派手さからは想像もつかない礼儀正しさに、警察官は呆気に取られながらも少女を家まで送り届ける。


気を遣って色々話しかけてくる警察官に、気を遣われると余計惨めやけんと少女は言葉を返して黙り込んだ。
家まで送ってくれた警察官に頭を下げて、少女は明かりの消えた家へと消える。

電気をつけ、リビングに置かれている机の上には十数枚の万札とメモ書きがのっていた。
数日旅行に行ってくるからこれで好きなものを買って食べなさいとだけ書かれたメモを、少女はくしゃくしゃに丸めて捨てた。

旅行に行くことを前もって知らされていたなら、わざわざこんな馬鹿な真似なんかしなかった。
視界がぼやけてくるのを感じながら、少女は紙幣も丸めてゴミ箱へと放り捨てて自室へと駆け込んだ。


何をしても、両親は少女に対する態度を変えることはなかった。
徹底的と言ってもいいほど、少女に不干渉を貫く両親。

少女はいつしか不良グループの一員として、家に殆ど帰ることなく街を徘徊するようになった。
彼女達と行動を共にし、少女は“表面上”は孤独ではなくなった。
元々、既に中学では浮いていたのだ。
今更彼女達とつるんだところで、何も変わりはしなかった。

自由気ままにその日を生きる彼女達と一緒にいると、少しは気が楽になれた。
彼女達もまた、物に不自由することなく好き勝手に振る舞っていた。
中身の伴わない会話一つすら、少女にとっては何物にも代え難い宝物だった。

その日、少女は仲間の一人が住んでいるアパートに遊びに行った。
いつものように中身のない会話をしながら、テレビを見てお菓子を食べるだけの夜。

ふと、チャンネルをザッピングしていた少女は手を止めた。
画面の中では少女と大して年齢が変わらないであろうタレントが、楽しそうに話をしていた。
大した話をしているわけでもないのに、周りに巻き起こる笑いの渦。

あんな風に、皆を笑わせられる存在になれたら。
そうしたらきっと、今よりも楽しくて心の満たされる人生になるに違いない。
周りに知られたら何を言っているのかと言われるだけかもしれない、馬鹿げた夢かも知れなかった。


それでも、少女はその夢を半ば本気で追いかけたいと思った。
仲間達といることで少しは埋まった心の隙間。
その夢を追いかけて叶えることが出来れば、自分の周りにはもっと沢山の人間が集まって孤独から解放される。

仲間達と出会わなければそんな夢さえ見ることなく、今も一人で意味もなく時間を消費するだけの人生だっただろう。
人と共に行動するようになったからこそ、少女の中にもっと満たされたいという欲求が生まれたのだ。


だが、皆を笑わせるバラエティタレントになりたい、という夢に向かって具体的な行動をすることもなく少女は日々を過ごしていた。
夢を追い流すかのように日々は過ぎ、高校に進学することもないまま少女は仲間達と共に日々楽しく生きていた。

このままじゃいけない、という感覚を抱くことはなかった。
成人して定職に就くことがなくとも、何の問題もない程の財産を両親が有していることを少女は知っていた。
そして、両親は少女に愛情を向けることはなくとも、少女が死ぬまで困ることのない財産を残してくれるということもである。

けして心が満たされることはないが、金銭的に困るような生活を過ごすことはないし、仲間達も傍にいる。
それだけで最早十分だった。

だが、その日々は続かない。

ある日少女は、仲間達の一人から告白をされた。
ちょっと見た目はなよなよとしているが、一応“イケメン”の部類にはなるであろう仲間からの告白。
突然とも言える告白に、少女は戸惑いながらもいいよと返事を返した。

そこから、少女は徐々に、再び孤独への道を歩むこととなる。
少女は知らなかったのだ、その仲間が“身内”の誰もが狙っている一番人気の男であったことを。

少女が男の告白を受け入れたことは即座に仲間達に知れ渡り、少女は前と同じように仲間達と共に過ごせなくなった。
遊びに誘っても、何かと理由を付けて断られるようになった。
なかには、男とデートしてればいいでしょと言ってそれ以来少女と口を聞かなくなる者もいた。


特にその男のことが好きだった訳じゃない、断る理由が特になかったから受け入れただけだった。
だが、その代償は少女にとっては大きかった。
その男を好きだったならば少しは救いがあったかもしれなかったが、特に好意を抱いていたわけでもない。

全くと言っていいほど好意を抱いていない男、その男の告白を受け入れたがために少女は再び一人になった。
前のように楽しく過ごしたいのに、仲間達は少女から距離を置く。

男一つでこじれてしまうような仲だったんだな、と少女は一人自嘲した。
それなりにコミュニケーションをとって、築き上げてきたと思っていた“友情”は偽りのものだった。
その事実は少女を深く傷つけ、少女はその原因となった男にも仲間達にも別れを告げた。

心を許せる人間がいなくなってしまった少女は、一人で街を彷徨うようになった。
ひょっとしたら、誰かが声をかけてくれるかもしれない。
そんな淡い想いを抱きながら、毎日のように街を彷徨う少女。



日付が変わったことを、少女は腕時計で知った。
もうそろそろ、両親は就寝しているに違いない。
起きているうちに帰宅したところで何か言われるわけでもないが、両親と顔を合わせたくはなかった。

だからといって、帰って何かやることがあるわけでもない。
加えて今日は深夜バラエティも面白いものがあるわけでもない、少女の思考はもう少し街にいようという方向に向かう。
クラブでも覗いてみようかと、少女は反転して再び繁華街の方向へ歩き出して―――動きを止めた。

少女はおもむろに来ていたパーカーのポケットから携帯を取り出して操作した。
新着メール一件、と表示された画面を見ても少女は顔色一つ変えることなく、普通に携帯を操作してメールの中身を確認する。


『れいなへ
元気にしてる?
何かごちゃごちゃしちゃってれいなと離れ離れになったけど、あたしはれいなのこと今でも友達だと思ってるよ。
よかったら、今度一緒に○○にでも遊びにいこうよ、またね』


少女―――“田中れいな”はそのメールを何の躊躇いもなく、削除した。
今更何を言われたところで、もう失ったものは元には戻らないのだ。
そして、れいなは何事もなかったように携帯をポケットに仕舞って歩き出して―――再び動きを止めた。

れいなはおもむろに携帯を入れたポケットとは逆のポケットに手を入れ、中に入っていたMDプレイヤーを停止させる。
そして、ヘッドフォンを外した。

一切全く何の音も聞こえないことに、れいなは自然と震え出す。
平日とはいえ、この時間はまだまだ喧噪に包まれている街だというのに。
慌てて周りを見渡しても、人どころか野良猫の一匹すら見かけられない現状にれいなは恐怖を覚えた。


「…何これ…これじゃ、まるでゴーストタウンっちゃ」


どうしたらいいのか分からず、ただ震える肩を抱きしめるれいな。
その時だった。
れいなは不意に誰かに呼ばれているような気がして、周りを再び見渡す。

誰もいないというのに、確かにその声はれいなの耳に届いた。
耳というよりも、心に直接訴えかけてくるような声を聞いたれいなは、意を決してその声が聞こえる方へと駆け出す。

走りながら、幽霊かもしれんどうしよう、なんて思うれいな。
だが、その恐怖は、助けを呼んでいるかのような切実な叫び声にあっという間に塗り替えられていく。


声の強くなる方へとひたすら走っていったれいなが見たのは、とても現実とは思えない光景だった。
黒い服に身を包んだ女性と、その女性に向かってまるでアクション映画のように飛びかかる、れいなと同世代くらいの女の子が二人。

女性達はビルとビルの隙間を飛び越えたり、かと思えば視認することが不可能な早さで拳と拳を応酬している。
二人がかりで戦っている少女達は汗を額から垂らし傷だらけであるのに対して、女性はその端正な顔に汗の一つすら浮かべていなかった。

見た目だけで判断するのなら、黒い服の女性が悪者なのだろう。
そして、対峙する少女達はさしずめ悪に立ち向かう正義の味方なのかも知れない。

若者集う深夜の繁華街で繰り広げられる激しい戦いに、れいなは我を忘れて見入っていた。
人に話しても信じて貰えないような“非現実”すぎる戦い。
街が急に無音になり、人が居なくなったのはきっと彼女達のこの戦いに起因するのだろうとれいなは漠然と思った。

不意に視界が暗くなるのと同時に、誰かに背後からしっかりと抱き寄せられた感覚がれいなを襲った。
抱き寄せられた腕、れいなの視界を遮る黒い手袋から伝わってくる熱は人の物とは思えぬほど冷たく、れいなは思わず身震いする。
この手は、あの黒衣の女性だと気付いたれいなは慌ててその手を振り解こうともがくも、びくともしない力強さに焦りを隠せない。


「何か知らないけど、一般人確保、っと。
しかし、何でこの結界内にただの人間がいるんだか…」

「その子を離せ!
うちら能力者の戦いに一般人を巻き込むのはルール違反や!」

「愛ちゃん、そういうこと言ってダークネスの人間が聞くわけないじゃん…。
相手は悪人集団の一員、悪人が言うこと聞いて人質解放してくれるんだったら苦労しないって…」


「そういうこと、リゾナンターのリーダーさん。
折角戦いを優位に進められる“アイテム”が手に入ったのに、手放す理由なんてないわよ。
しかし、サブリーダーやるのも大変そうね、リーダーがこんな調子じゃさぞかし苦労ばかりしてるでしょう?」

「ま、苦労するけど…これでも愛ちゃんはそれなりに頑張ってるし。
リーダーを支える位置にいる人間が苦労するのはどこの組織でも一緒でしょ」


聞こえてくる会話の内容を把握する余裕はなかった。
この戦いの当事者同士の会話がなされている間も必死にその腕から逃れようともがくれいなを、頭と腰に巻かれた手は許さなかった。
ならば、この足で蹴り上げよう、そう思ったれいなは愕然とする。

足がまったく動かせないのだ。
ほんの一ミリだって動かせる気がしない。
まるで地面と自分の足が同化したかのようだった。


「さて、そろそろ終わりにしようか。
下手な真似したら、この子完全に氷漬けにして砕いちゃうからそのつもりでね。
もっとも、もうそっちに余力はないだろうけど」

「…卑怯や」

「卑怯で結構、こっちはあんた達をぶっ殺せればそれでいいんだから。
そっちもこんな人間一人なんて放って全力でくればいいじゃない、見ず知らずの他人が死んだところで何の影響もないでしょ」


氷のように冷ややかな声と共に、れいなは自分の首筋に何かが当てられていることを感じた。
すっとそれが動いたのと同時にれいなの首に熱が生まれる。
首から鎖骨の方へと流れているのが自分の血だと知った瞬間、れいなは心の底から叫び声を上げた。



「―――助けて!!!」


その声が辺りに響き渡った瞬間だった。
れいなの体からゆらゆらと蒼い光が立ち上り、一本の光柱となって夜空を貫いた。
突然のことに女性はれいなから離れ、様子を窺う。

ただの一般人がたまたま“結界”内に紛れ込んだだけだと女性は思っていた。
だが、目の前の少女が放つ光は確実に何らかの“能力”を持っている人間にしか出せない光であった。

その能力が“戦闘系能力”なのかそれとも“非戦闘系能力”なのかは女性には判断がつきかねた。
ただ、このまま放置していてはよくない、その直感に従って女性はれいなへと攻撃を加えようとして―――固まった。

いつの間にか女性の体に絡みついていたのは、月夜に照らされた“ピアノ線”。
身動きが取れないほどにしっかりと動きを固定され、女性は慌ててその線を断ち切ろうと自らの力を解放しようとする。
女性の体から放たれる闇色の光が、徐々に強くなっていったその時だった。

女性の胸は鮮やかな黄色の“光線”に貫かれた。
口と胸から吹き出す血に驚愕の表情を浮かべながら、女性の体は霧散した。


「…勝った…勝ったよ、里沙ちゃん!」

「そうね、本当人質取られた時はさすがに覚悟したけど…まさか、こんなところで“三人目”が見つかるなんてね」


里沙ちゃんと呼ばれた少女は、れいなの方をじっと見つめていた。
そして、もう一人の少女も里沙に倣うようにれいなの方を見つめる。

れいなの体からは既に蒼い光は既に消えていた。
何が起こったのかしら把握できずに、れいなは首筋を押さえてその場に座り込んでいた。


「…ただの“増幅-アンプリファイヤ-”だったら、相手の能力も増幅されていた可能性があるけど…。
さしずめ、あの子の能力は“共鳴増幅能力-リゾナント・アンプリファイヤ-”って感じかしらね」

「リゾナントアンプリファイヤ…?」

「うん、あたし達の心の声に応えて、あたし達の力を増幅してくれたから。
普通の増幅能力が暴発した場合、周りにいる全ての能力者の力が増幅される可能性があるんだけど、
あの子の場合、能力が暴発したのにも関わらずうちらだけがその恩恵に与れたわけだから。
ある種、レアスキルって言ってもいいかもしれないね」


呆然とするれいなに、里沙と少女―――愛は歩み寄る。
里沙はハンカチを取り出して、れいなの首筋に押し当ててれいなの瞳を覗き込んだ。


「あ、ありがとう…」

「えーと、あなた…名前は?」

「れいな…田中れいな」


その穏やかな瞳に、れいなの心は自然と落ち着いた。
触れられている首筋から、れいなの様子を心配している気持ちが伝わってくる。
何故、それが分かるのかは自分でも分からないまま、れいなは目の前の二人を見つめた。

傷だらけの二人を見て、自然と湧き出す想い。
何の特技もない、無論不思議な力なんて使えない自分だけれど―――この人達と一緒にいたい。
その気持ちが伝わったかのように、目の前の二人は優しく微笑んだ。


「あーしは高橋愛、“超能力組織リゾナンター”のリーダーで、喫茶店を経営しとる」

「あたしは新垣里沙、愛ちゃんの補佐役…みたいなもんかな。
―――これからよろしくね、田中っち」

「田中っち?」

「…里沙ちゃん、あだ名を付けるセンスはないんやね…」


愛とれいなの笑い声に、里沙は何なのよと呟いた。
顔を見合わせて笑い合う二人は、里沙が一瞬だけ見せた冷たい瞳の意味を知ることはなかった。

気がつけば、いつの間にか街に喧噪が溢れていた。
昼間と比べれば少ないが、人も車もそれなりに動きを止めることなく行き交う街の中。

そろそろ帰らないと明日のモーニングの準備が終わってないと喚く愛を窘めながら、里沙はれいなに微笑みかける。
その微笑みにれいなも微笑み返した。

感じていた心の隙間が埋まっていくような、不思議な感覚に目を細めながら。
二人と別れたれいなは力強い足取りで家へと帰宅した。


 * * *


モーニングも落ち着き、ようやく一息付けるようになった愛の元へれいなはやってきた。
その手に抱えられていたのは、小柄な少女なら入れるのではないかと思われる大きな旅行用バッグが二つ。
突然のことに目を白黒させる愛にれいなは笑いながらこう言った。

元々両親とは不仲で、家を出たいと思っていたこと。
これからああいう戦いに巻き込まれるのであれば、愛の家に近いところに住んでいた方が何かと都合がいいだろうということ。


「そりゃ、うちに近いところに住んでいた方がええけど…れいな、あーしも里沙ちゃんも未成年だから保証人にはなれんよ?」

「えぇぇ!
高橋さんはともかく、新垣さんは成人してるかと思ってたのに!
どうしよう、親にもう家には戻らんって言って出てきたのに…困ったっちゃ…」

「…あーしと一緒でよければ、ここに住む?
ちょうど、一人じゃ手が足りんようになってたからバイト雇おうと思ってたし。
あんまりお金は払ってあげられんけど、その代わり家賃は請求せんから、どう?」

「れーな、バイトとかしたことないけど、それでもよかと?」


不安そうに愛の顔色を窺うれいなに、愛はニヤリと笑ってこう言った。
大丈夫、料理も含めてここを出た後でも食い扶持に困らんくらいのスキル叩き込んであげるから、と。



かくして、リゾナンターはれいなの加入により三人となった。
“共鳴増幅能力-リゾナント・アンプリファイヤ-”以外の能力を持たないれいなに、
里沙はかつて愛にもそうしたように格闘技術を教え込んだ。

その飲み込みのよさに里沙は舌を巻くしかない。
教えたら、教えた以上にれいなはその技術を習得し、時には里沙には考えられないような応用さえしてみせた。
愛も身体能力の高さはかなりのものであったが、れいなはそれ以上になりうる可能性を里沙に見せた。

寂しげな光を目に宿した少女はもう、何処にもいない。

―――蒼き光をたなびかせた、リゾナンター1とも呼べる身体能力を誇る“戦乙女”がここに誕生したのであった。






















最終更新:2012年12月02日 13:17