(20)275 『蒼の共鳴特別編第9夜-ヤマアラシ・ジレンマ-』

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人々が行き交う駅前のロータリーを抜けると、一本の大通りがある。
帽子を目深に被った少女は、その大通りを少し早足気味に歩いていた。

駅から離れるにつれ、喧噪が遠ざかっていく。
大通りと接している小さな通りへと少女は足を向け、ひたすら前進していった。

いつ訪れても、都会の街中とは思えないような閑静な雰囲気に包まれた通り。
少女の目が捉えたのは一枚の看板だった。

“喫茶リゾナント”と書かれた電飾の看板、そして、本日のお勧めメニューが記載された小さなブラックボード。
ドアにはCLOSEDの札がかかっていたが、少女はその札が見えていないかのようにドアの取っ手に手をかけて押し開いた。


「こんにちわ。」

「おー、小春。
今日は私服なんやねー」


少女―――“久住小春”は、柔らかい声をかけてくる店主“高橋愛”にペコリと頭を下げる。
そして小春は、何処に座ろうかと視線を愛からずらした瞬間、目に飛び込んできたのはテーブル席で手招きをするウエイトレス姿の少女。

その手招きを無下にする必要はない。
小春はテーブル席まで移動すると、上着を脱いで椅子にかけた後、スッと椅子を引いて座った。
その間、ウエイトレス姿の少女は小春の一挙一動をキラキラとした目で見つめている。
キラキラとした目で見つめられることには“職業柄”慣れてはいるが、今は仕事の時間ではない。
小春は溜息を吐きながら、少女に向かって口を開く。


「あの、田中さん」

「何、きらりちゃん」

「…ずーっと見られてると、すごい困るんですけど。
後、きらりちゃんって呼ぶの、止めて貰えませんか?
仕事から離れた時は、ただの女子中学生の久住小春ですから」


小春の冷たい声音に、途端に先程までの眼差しが一転して暗いものになる。
小春は、少女―――“田中れいな”のことが苦手だった。

芸能界に身を置く駆け出しのアイドル“月島きらり”、小春のもう一つの顔である。
仕事中はともかくとして、こうしたプライベートな時間でその名前を呼ばれることは苦痛に近い行為だった。

アイドルという仮面を被り、素の自分とはかけ離れた人格を演じて生活している以上、
プライベートでもその名で呼ばれるのは仕方のないことではある。

だが、ここにいる時は“久住小春”でいたい。
暗い表情になるれいなの顔を見ながら小春は努めて優しい声を作り、小春でいいですからと言って口を閉ざす。
その言葉に途端に表情が明るくなるれいなを見つめながら、小春は単純な人だなと心の中で苦笑した。

徐々に、喫茶リゾナントに集い始める面々。
背中まである黒髪をなびかせながら入ってきた色白の少女、“道重さゆみ”。
愛嬌のある顔立ちが特徴の、背の高い少女は“ジュンジュン”。
ジュンジュンの後に続けて入ってきた、小柄な少女は“リンリン”。

空いてる席に皆それぞれ座っていく。
れいなはカウンターの奥にいる愛に呼ばれ、席を立ってしまった。

れいなが話し相手になっていたかどうかはともかくとして、一人でポツンと座っていると、
何だか自分が仲間ハズレにされたような気分になる。


ここに集う面々とは、なかなか顔を合わせることがない以上仕方のないことかもしれない。
毎日のように顔を出せる人が殆どの中、自分一人だけが不定期にしか顔を出せないのだから。

自分のいない中、どんどんと形成されていった仲間内での人間関係。
輪に入りたくとも、自分から言い出せずにただただ周りで楽しそうに話す仲間達を見ている小春。
寂しい気分を味わっている小春の前に、静かに歩み寄ってきた一人の少女。


「こんにちわ、久住さん。
ここ、座ってもいいですか?」

「…いいよ、別に」


柔らかい声を小春にかけてきたのは、“光井愛佳”だった。
自分と同い年である愛佳は、れいなとはまた違った意味で苦手にしている少女である。
中学校が終わってから来たのだろう、愛佳は制服姿であった。

自分の学力では相当努力しないと入れない中学校の制服に身を包み、いつ見てもテーブルの上に勉強道具を広げている姿。
素直な性格なのだろう、周りの仲間達からいつも可愛がられている愛佳。

その素直さが眩しくて、いつも一人でいる自分に声をかけてくれる優しさが苦しくて。
どうしても、愛佳に対する態度は先程のれいなに対するものよりも素っ気なく、冷たいものになってしまう。

気まずい沈黙が続いた。
何か話しかけようと様子を窺っている愛佳と、話しかけられないように視線を合わさない小春。

周りのテーブルに飲み物を出していたれいなは、その様子を見てフォローに入ろうとテーブルの空いた席に座った。
気を遣って話しかけてくるれいなに素っ気ない返事をし、重くなりそうな空気を和らげようと発言する愛佳には冷たい相槌を返すだけの小春。


かたや、自分、否、“月島きらり”のファンらしいれいな。
かたや、自分とは正反対過ぎて苦手としている愛佳。
徐々にイライラしてくる気持ちに蓋をするように、出された紅茶に口をつける。
ジャスミンの仄かな香りが口の中に広がった。

いつの間にか、愛と共に仲間をまとめている“新垣里沙”も店に来ていた。
店内をキョロキョロと見渡した里沙は、鏡を見ながら髪の毛を弄るさゆみに声をかける。


「あれー、さゆー、今日カメはどうしたの?」

「絵里は今日、病院行ってから来るって言ってましたよ。
多分、もうそろそろ来るんじゃないですか?」


里沙とさゆみの会話に、皆口々に“亀井絵里”のことを話題に出す。
周りの会話に耳を傾けながら、小春は内心面白くないと思わずにはいられない。

仲間達は自分がいない時にここまで名前を出したりしない、そう思うからこそ余計に面白くなかった。


「こんにちわー、あれ、今日も絵里が最後かぁ」


暢気な声と共に、噂された本人が現れた。
とても病気持ちとは思えない健康そうな姿だが、周りの人間は次々に絵里に話しかける。

それは、れいなや愛佳も同じだった。
病気持ちの仲間に対して優しい声をかけ容態を気遣う、当たり前の行為―――それが、小春の中にあった不満を爆発させた。


「…いいですね、優しい言葉かけてもらって。
小春も病気になろうかな」


リゾナントの中に溢れていた温かい空気が、瞬時に凍り付く。
小春の発言に、何も言い返さずに悲しげに微笑む絵里。
その表情を見て、思わず自分が言ってしまったことを後悔した小春は次の瞬間、胸ぐらを掴まれていた。


「久住、いい加減にシろ!
亀井サンの気持ちモ知らナいデ、そんな言い方するナ!」

「…うるさいなぁ。
亀井さんの気持ちなんてあたしが知るわけないじゃん。
いい加減、離してくれないかな、ジュンジュン」

「久住!!」

「…帰るから、いなくなるから離してよ!」


そう言いながら、小春は無理矢理ジュンジュンの手を振り払って立ち上がる。
まだ何かを言おうとするジュンジュンには目もくれず、上着を取って小春は店を飛び出していった。

出ていった小春を追うように、愛佳は慌ててリゾナントを出ていこうとする。
その様子を見ていた仲間達は、次々に愛佳に声をかけた。


「みっつぃー、あんな子は放っておけばいいの」

「れーな、きらり…じゃなかった、小春があんな冷たい子だとは思わんかったと」

「亀井サンの病気、知ってテあんな言い方すルなんて、久住、ヒドい」

「さすがに、あレはフォロー出来なイでス」

「―――せやけど、このままじゃあかんし。
いってきます!」


制止の声を振り切るように、愛佳もリゾナントを飛び出していく。
愛佳も出ていったことにより、さらに微妙な空気が流れるリゾナント。

一連の流れを、カウンターから見ているしかなかった愛は困った顔をして黙り込む。
仲間内一番の年長者であり仲間をまとめるリーダーの情けない姿に、里沙は小さく溜息をつくしかなかった。

喫茶リゾナントに集う仲間の集まり―――超能力組織“リゾナンター”。
超能力組織リゾナンターの一員である仲間達をまとめ、導くのがリゾナントの店主でありリーダーである愛の務めだった。

だが、愛はリーダーとして皆をまとめ上げているかと言われると、微妙なところであった。
口下手で、上手く間に入って仲裁が出来ない愛。
こうした些細なことがきっかけで場の空気が悪くなることはあまり珍しくないことなのだが、その度に場を取りなすのは里沙である。


微妙な空気が流れる中、里沙は愛に飲み物を作るように声をかけ、れいなにも愛を手伝ってあげてと微笑む。
その言葉に慌てて動き出した二人を横目に、里沙は絵里の傍に行くと優しく頭を撫でた。
里沙の行動で空気が変わったのを感じたのか、烈火の如く怒っていたジュンジュンも席に戻ってリンリンと会話に興じる。


燃えるように鮮やかなオレンジを塗りつぶしていくように、空は濃紺色へと変わっていた。


     *    *    *


大通りに向かって早足で歩く、寂しげな背中に向かって愛佳は大きな声をあげる。
動きを止めてくれたことにホッとしながら、一メートルくらい離れたところまで駆け足で近寄る愛佳。


「何?」

「あの、その」

「用がないなら帰るよ、あたし暇じゃないし」


他人を拒絶する、いつもよりも遥かに冷たい声音。
普段の自分だったら、その冷たさに、全身からにじみ出ている拒絶の気配に怯んでしまうところだった。

だが、愛佳はそっと自分の手を伸ばして包み込むように小春の手を握る。
振り払われないことに安堵しながら、愛佳は再び口を開いた。


「久住さん、本心であんなこと言ったんじゃないですよね?
寂しかったからああ言っちゃっただけですよね?」

「…」

「愛佳と一緒に、リゾナント帰りましょう。
亀井さんも、ジュンジュンも…皆、待ってますから」

「…さい」

「久住さ」

「うるさい!
そうやっていい子ぶってさ、あんただってどうせ心の中じゃあたしのことムカついてるんでしょ!
あたしのことはほっといてよ!」


言葉と共に、小春は愛佳の手を振り払うと一気に駆け出した。
追いかけなければという気持ちはあったが、愛佳はその場に立ち尽くす。

頬を濡らすのは、大粒の涙だった。

小春がいなくなっても、涙が止まる気配はない。
愛佳の胸を苦しめるのは、言葉よりも遥かに伝わってくる“寂しさ”だった。
拒絶の言葉とは裏腹に、遠く離れても伝わってくる寂しいという感情が、小春が本心から言ったわけではないと確信させる。

中学生活、そして芸能活動と忙しい日々を送る小春。
週に二度顔を出せればいい方である小春は、いつの間にか出来上がってしまっていた人間関係に寂しさを覚えるのは仕方ないことだった。

絵里のことも、本当にああ思っているわけがないのだ。
健康だからこそ、普通の生活、そして芸能生活を送ることが出来るということくらい、誰よりも自分が分かっているはずだ。


たまたま、あの時は絵里に矛先が向かっただけで。
例え、他の人間でも小春はああして突っかかったに違いない。

涙が止まらないのは、自分が傷つけられただけじゃない。
愛佳にも食ってかかったことで、さらに自分の心を痛めてしまったであろう小春のことを思うと、強く強く胸が締め付けられるからだった。

涙を一生懸命ハンカチで拭きながら、愛佳はとぼとぼとリゾナントへと戻る。
ドアを開けた途端に、仲間達の視線が自分に集まるのを感じた。


「ちょ、みっつぃー!
小春に何か言われたの?」

「言われたけど、愛佳が悪いんです。
久住さんの気持ちも考えんと、ひどいこと言うてしもたから」


必死に、小春が悪いわけじゃないとフォローする愛佳。
だが、愛佳の懸命なフォローなど聞く耳を持たぬかのように、皆は愛佳にそんなことないと声をかける。

違うのに、小春は皆が思っているような冷たい子じゃないのに。
幾ら言葉にしても伝わらないことに、余計に泣きたくなった。


微妙な空気が再び流れるリゾナント。
愛佳は荷物をまとめると、仲間達に声をかけて店を出て行く。


見上げた空に広がっていたのは、どんよりとした雨雲だった。


     *    *    *


翌日、小春は誰よりも早くリゾナントへと現れた。
たまたま仕事の予定が延期になったおかげで、本来だったら数日は顔を出せないはずだったリゾナントに来ることが出来た小春。

絵里、そして愛佳。
二人にきちんと謝りたい、小春はそのために降ってわいた貴重なオフの時間にリゾナントに現れたのだった。

普通の客に混じって、小春はひたすら絵里と愛佳がリゾナントを訪れるのを待つ。
飲み物を持ってきてくれたれいなの視線の冷たさに、少しだけ胸が痛くなったことに気がつかない振りをして。
ミルクティーに口をつけながら、文庫本に視線を落とす小春。

普通の客と入れ替わるように、リゾナントに集まりだした仲間達。
小春の方を見ようとはしない絵里を除いて、さゆみも、ジュンジュンも、リンリンも小春に冷たい視線を向ける。
後からやってきた里沙は、そんな空気を気にする様子もなく小春に普通に挨拶してくれた。

まずは、絵里に謝ろう。
意を決して立ち上がった小春の姿を見て、それまでリンリンと談笑していたジュンジュンが立ち上がった。
小春の行く手を遮るように、絵里のいるテーブルへの動線を塞ぐジュンジュン。


「ジュンジュン、どいてくれる?
あたし、亀井さんに話があるんだけど」

「…何を言ウ気だ、久住。
どウせ、まタ心なイ言葉を亀井サンに言ウ気だろウ」

「あんたには関係ない」


こんなつもりはなかったのに。
気がつけば、昨日と同じようにジュンジュンと睨み合う小春。

昨日と変わらない態度の悪さに、愛と里沙、絵里を除いた面々は口々に小春にいい加減にしろと声をあげる。
そんな中、最後に現れたのは愛佳だった。

反射的に愛佳の方を見る小春。
小春が何か口を開くよりも先に、冷たい声が場の空気を凍らせる。


「またみっつぃーにひどいこと言うつもり?」


その言葉を発したのが誰だったのか理解するよりも早く、小春は昨日と同じように店を飛び出していった。
来たばかりの愛佳は、状況が分からないままとりあえず店内に入る。

気まずい沈黙の中、口を開いたのは里沙だった。


「愛ちゃん、あの子今日何時に来てたの?」

「え、今日は小春一番乗りで来てたよ。
仕事が空いたからって言ってたかな」

「中学行ってるだけじゃなくて、芸能生活もしてて忙しいあの子からしたらさ。
今日みたいに仕事が空いた日って、家に帰ってゆっくりしたいんじゃないかな。
でも、あの子は一番乗りにきた―――これってさ、昨日のこと、謝りたかったからじゃないの?」


里沙の言葉に皆それぞれ神妙な面持ちになる。
沈黙が続く中、里沙は再び口を開いた。


「あの子、忙しいからあんまりリゾナント来れないでしょ。
でも、あたし達は毎日のようにここに来てさ、今はもうそれなりに仲良くもなったよね。
…あの子素直じゃないから、輪に加わるのが苦手なんじゃないかな?
本当は皆と仲良くなりたいのに、プライドが邪魔して素直になれない。
カメのことああ言ったのも、本心じゃなくて…構って貰えなくて拗ねただけだと思うよ」

「謝ろうと思ってたなら、ジュンジュンに止められる前にそう言えばよかったと」

「昨日激しくやりあった人が目の前に立ったら、言えるものも素直に言えないんじゃないかな。
確かにあの子は、キツい物言いとかするけどさ―――うちらの仲間なんだよ。
それにみっつぃーと同じで一番年下の子なんだから、うちらがもう少し大人になって長い目で見てあげなきゃ。
大丈夫、きっとあの子は変わっていくよ」


里沙の言葉に、釈然としない顔だった仲間達に広がったのは穏やかな空気だった。
今度リゾナントに来たら優しく声をかけてあげよう、そう言って微笑む絵里に頷くさゆみ、れいな。
怒っていたジュンジュンもリンリンに声をかけられてしぶしぶと言った感じではあったものの、コクンと頷く。


愛佳は里沙の方を向いて頭を下げると、席についていつものように勉強道具を広げる。
里沙は愛の方に向き直ると、苦笑いしながら口を開いた。


「何落ち込んでるのよ」

「何か、あーしが本当にリーダーでええんかな、って。
里沙ちゃんがリーダーの方がいいんじゃないのかな」

「…しっかりしなさいよ。
あんたがリーダーなんだからさ」

「そうやね、あーしがしっかりせんと」


そう言いながら、人数分の飲み物を作り出す愛の横顔を見て里沙は心の中で溜息をつく。
それなりの年月一緒にいるが、愛がなかなかリーダーシップを発揮出来ずにいるのが歯がゆくて仕方ない。

愛が動くまで自分が動かずにいればいいのかもしれない。
だが、昨日今日の愛の態度を見ていると、事態を打開するどころか悪化させかねなかった。

戦っている時はあれだけしっかりしているのに、こういった揉め事となると途端に何も言えずに黙っている愛。
愛がちゃんとリーダーとして機能しなければ、いずれ自分がいなくなったらリゾナンターは崩壊してしまうかもしれない。
もっとも―――いなくなった時のことを自分が考える必要はどこにもないのだが。

出された飲み物を受け取り、里沙は愛の頭をペシッと軽く叩く。
突然のことにきょとんとした目になった愛に、ニヤリと微笑む里沙。

どこか暗い表情だった愛が笑ったのを確認して、里沙はコーヒーカップに口をつける。
口の中に広がったほろ苦さに小さく微笑みながら、里沙は出ていった小春のことを考えていた。


昨日に引き続いて、今日も一人で帰って…帰らせてしまった小春。
もしも、一人で居る時にダークネスの襲撃があったらあの子一人ではどうしようもない。


(大丈夫だといいけど…)


コーヒーを飲みながら、里沙は窓の外を見る。


すっかり宵闇に包まれた街の上に広がるのは、昨日よりも分厚い雨雲だった。


     *    *    *


店を飛び出した小春は、大通りに向かって早足で歩いていた。
胸がキリキリと痛くて苦しくて、涙が零れそうなのを堪えながら歩く小春。
街灯と周りにある家の灯り以外何も照らす光がない道は、いつもよりも寂しく感じた。

天気が悪いせいか、人通りも殆どない小さな通り。
自然と、歩く速度は上がっていった。


滲む視界。
小春は服の袖で乱暴に涙を拭いながら、けして速度を落とすことなく歩いていく。

もう少しで大通りに出る、その瞬間だった。
歩いている小春の後頭部めがけて振り下ろされたのは―――鈍く光る鉄パイプ。
突然の事態に反撃することさえ出来ぬまま、小春はその場に膝を付いた。

「…人質ゲット、と。
全く、戦闘能力も使えないくせに一人で帰ってるんじゃないわよ」


薄れていく意識の中、小春が見たものは―――黒い服に身を包んだ女性の姿だった。




















最終更新:2012年12月02日 13:52