―移動する島
8人は「海上の監獄」と呼ばれるその島に立っていた。
招かれざる客として手荒い歓迎を受けながら。
「――7秒後、右32°より高密度のエネルギー波。左65°より同じくエネルギー波飛来!」
目を閉じた愛佳が早口に言う。
「ワタシ右ネ」
「じゃ左は任せテください」
即座にジュンジュンとリンリンが愛佳の指す方向に向かって立ち、手をかざす。
予知どおり飛来したエネルギー波は、2人がそれぞれ発した力によって簡単に相殺された。
「――!5秒後、現地点にて大規模な爆発!」
「集まって!」
自分の周りに皆が集まったことを確認し、愛は能力を発動した。
次の瞬間、8人は離れた場所に立っていた。
直後に爆風がやってくる。
「――っ!!ジュンリン防御!!」
愛佳が叫んだその瞬間、強烈な真空波が8人を襲った。
瞬時に反応したジュンジュンとリンリンの防御壁によりダメージは軽減されたが、全員の全身から鮮血が吹き出る。
「さゆ!」
「了解!」
絵里の下にさゆみが駆け寄るのと同時に、絵里は能力を放ち全員の傷を全て自分に集める。
その傷が痛みを脳に伝えるよりも短いまさに刹那の瞬間に、さゆみの治癒の力はそれをすべてきれいに治していた。
第三者から見れば瞬時に全員の傷が消えたようにしか見えなかっただろう。
「約30m先に1人、その少し先に1人、反対側に2人・・・ともう1人」
そう言いながら、小春は自らの脳内のスクリーンに映るビジョンを現実の風景にそのまま貼り付けた。
幻覚の霧で覆われていた視界が嘘のようにクリアになる。
「行くよれいな」
「おうよ!」
愛とれいなの姿が消える。
視界に映った全ての敵が昏倒するのに要した時間は数秒だった。
「ぐ・・・バカな・・・こんな・・・」
れいなに胸ぐらをつかまれながら驚愕の表情を浮かべる“指揮官”に対し、愛は静かに言った。
「仲間を返してもらいにきたわ。私たちの大切な仲間―ガキさんを」
最終更新:2012年11月23日 11:19