「ちょっと!さゆさゆさゆ!」
喫茶「リゾナント」の店内に田中の声が響き渡る。
「どうしたの?れいな。」
「さゆの治癒能力って『成長力の促進』やったやん。」
「そうだけど?」
「部分的にその能力を与える事も可能なんやね?」
「まあ・・・多少エネルギーは使うけどね。」
「それやったら。」
田中はそう言うと上着のボタンをはずしながら道重に向かって言った。
「さゆの能力をれいなの乳に与えてくれんね?」
「はあ?」
「れいなだって成長すればボンキュッボン!の女性になれると!ほら!さゆ!早く!」
次の瞬間、道重は無言でお盆を縦にして、田中の頭に振り下ろしていた。
「いっつー・・・さゆ、何すると?」
鈍い音と共に田中は頭を抑えてうずくまっていた。
「『何すると?』じゃないよ!能力を個人的な欲望で使わせないでちょうだい!」
「ええやん。減るもんじゃなし。」
「さゆみのエネルギーが減るから。」
田中の懇願を無視し、道重は2階へ上がって行った。
2階には久住が一人で本を読んでいた。
どうやら、ドラマの台本らしい。
「あ!道重さん!お願いがあるんですよ!」
「小春ちゃんがお願いなんて珍しいね。どうしたの?」
「道重さんの能力で小春のバストアップしてもらえませんか?」
道重は久住の台本を取り上げると、手早く丸め久住の頭を引っぱたいた。
「痛ーい。何するんですか!」
「れいなと同じ事言わないでちょうだい!」
「これは、重要な事なんですよ!」
「はあ・・・頭痛くなってきた。今日は帰ろ。」
道重は高橋に帰宅の旨を伝えると、「リゾナント」を後にした。
リゾナントを出て、タクシーに乗り込んだ道重に一通のメールが入ってきた。
from:新垣さん
件名:お願い
本文:さゆの能力のことで相談があるんだけど・・・
最終更新:2012年11月23日 21:25