(04)306 『刃千吏護衛官 銭琳(字幕版)』

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   未来を掴もう!切り開くのさ!


  One For PANDA! All For PANDA!!

祖国では神の遣いとされ、神聖視される動物、大熊猫。
その愛くるしい姿は天使の微笑み、その獰猛な性格は天使の裁きを彷彿とさせる。

しかし、やはり動物。薄汚い人間によって、乱獲、密輸されてしまうのが現状だ。
そのような事態を防ぐ、あるいは起こってしまった誘拐事件を処理する国家機関があった。
その名は、『刃千吏』 私はその一人、銭琳。
幼少の頃から、この刃千吏のメンバーとして、パンダの保護に努めてきた。
何代も前から、我が家はパンダと国に仕えてきた。

そして、私に新たな任務が下された。




【字幕スーパー】『』=中国語 「」=日本語


『に、日本に?今度の任務はなんですか?』

首領から渡された、一枚の写真。
南国のフルーツを抱え、貪る、鋭い眼の少女が写っていた。
全て言われなくてもわかる。これは、密輸に関わる女の目だ。
誰にも獲物は奪わせない、そんな闘争心が写真からありありと伺える。

『そういうことだ、琳。なぜか、最近日本の首都トーキョーで御神体が目撃されている。
 そして、その陰にいつも、この女の姿も確認されている。』
『…誘拐し、さらには御神体を洗脳している、と?』
『そういうことだ、琳。行ってくれるな?』

首領の言葉に私は胸に手を当て叫んだ。

『One For PANDA! All For PANDA!!』

そして私は日本にいる。ここは随分と蒸し暑い国だ。
私は各国を飛び回る生活をしていた為か、約20ヶ国語体得している。
日本語を話すのは3年ぶりだが、まぁなんとかなるだろう。
留学生という肩書きを得て、私は潜入捜査を始めた。




「おお、よろしくな、リンリン」

ジュンジュンとあだ名された容疑者は、
同じように私にリンリンなどというあだ名をつけてきた。

「よろしくお願いしマス~」
まぁ、良い。要は笑顔と同調だ。自慢の表現力。
それさえあれば、どんな輪の中にだって溶け込める。
必ず御神体を取り戻すのだ。

しかし、どのように取り入ろうか、その悩みは無用だった。
李純は私をやたらと構った。
接近しやすく、あり難かったが、どうしてこんなに私と遊びたがるのかわからなかった。
住み込み先のの中華料理屋、自宅、そしてよくわからない言葉を操る店主の喫茶店。
私の都合など構わず、彼女は私を引き込んだ。

いつしか私は任務を忘れ、楽しんでしまっていた。
彼女が側に居ること、彼女の側にいることが当たり前になっていた。

彼女の人柄に触れるたびに、李純が密輸に関わっているとは考えられなくなった。

その油断が、あのような事件を起こしてしまったと、私は悔やむことになる。




休日。待ち合わせ場所に行くと、彼女の姿はなかった。
それはいつものことだ。彼女は時間にルーズだから。

問題は、私を待っていたもの。
白黒の毛と彼女のものと思われる、服の切れ端。
お気に入りのワンピースと何度も説明されたもので、見まがう筈がない。
胸騒ぎで片付けられるものではない。何かがあった、彼女の身に。

太もものホルスターに隠してあった、小型ピストルの弾を充填する。
今日は、久しぶりに腕がなりそうだ。
必ず取り返す。なぜだか、彼女の居場所が手に取るようにわかった。
大丈夫、彼女は生きている。

私は気付かなかったのだ。
自分が、この時最早、自分の生活の中心であった白黒の毛の持ち主でなく、
彼女の身の安全を優先していたことに。



*  *  *


なんというベタな設定だろう。
彼女の気配を追ってくると、そこは埠頭だった。
数十人のチャイナ服が、船になにかを運ぼうとしている。
随分と大きな布袋だ。間違いない。あの中に、李純。
何か、繋がるようなそんな気配。どう表現すれば良いか、それはわからないけど。

『お前たち、そこを動くな!!』
ピストルを構え、躍り出た。
『何者だ!?』
『刃千吏、護衛官、銭琳だ!!その民間人を離してもらおうか!』
右手で銃を構えながら素早く刃千吏の紋様を見せると、男たちはたじろんだ。
『あいつが、銭家の?』『百発百中の射撃と不思議な能力…』『だが一人しかいない』

『刃千吏の野郎が、何の用だと言いたいところだがな… 
 俺たちはただの民間人なんか、運んじゃいねぇよ。』

確かに言われてみればあの袋、随分と大きい。
『あんたがここに居るって事は間違いじゃないんだけどな!ふははは…』
そこまで言われて、はたと気付く。あれは、御神体?
じゃあやはり、李純は、パンダの密輸を?

『勇敢で勘違いが素晴らしい捜査官さんに教えてやるよ。
 あんたがお探しの自称民間人サンと、俺たちの獲物、それは同じだ!』




いつぞやか、曾祖母に聞いた。
最も神聖な人間を、神はパンダに似せて作った。
その血を受け継ぐ、パンダ化する一族が昔、祖国を治めていた、と。

あれは御伽噺ではなかったのか。
李純は、パンダの誘拐犯ではなく、パンダだったのか。
私の敵ではなく、私が護るべき、パンダだったのか。

困惑する私を取り囲むように、男たちの銃口がいっせいに向けられた。

ぐるがああああああああああ!!!
私の危機に反応するかのように、眠っていたパンダが布袋を引き裂いた。

『くそ!だから早く檻に入れろと!』『人間に戻るまで耐えろ!今は銃も利かない!』

李純は私を口に咥えると、その巨体からは想像もつかないような速さで走り出した。
すぱん、すぱん、ぱきーん、と。銀色の毛が、時には黒色の毛が、黄金の悪意を弾いた。

ぐるる…
しかし、その圧力による痛みは感じるのだろう。
少しずつスピードは落ち、埠頭の外れのコンテナ置き場でいよいようずくまってしまった。
腕にしっかりと、私を抱えながら。


「ジュンジュンさん、ごめんなさい。」
わたし、あなたを疑って…いろいろ、さぐるようなまねをして…

私は、白色の体毛に頭をつけて、何度も謝った。
李純は何も言わず、むしろ言えず、ただ私の頬を舐めた。

敵の足音が聞こえる。
それと同時に、彼女の体毛がしゅるしゅると巻き込まれ、白い肌が露になった。
生身の、李純がそこにはいた。

『ひゅーーー』『またいいもん拝ませてもらったね』


私は、彼女の身体を男たちの目から遮った。
私が着ていたパーカーと私自身で。私は李純と彼らの間に立った。

『なんのつもりだ?護衛官?』『そいつを置いてとっとと逃げたらどうだ?』
『逃がすつもりも、ないけどな』『この人数差だが気をつけろ、こいつは不思議な力を使うぞ』

私は弾薬を抜き、銃を捨てた。
男たちはいよいよ勢い付き、迫ってくる。




「勘違いするナ」


神は日本語を理解する脳を罪深き彼らには与えられなかった。

ばん、ばん、ばん!!!

彼らの銃が突如一斉に火を噴いた。
彼らの望みではない。私の意思だ。
暴発―お前たちの目にはそう見えるのかもな。

ある者は倒れ、ある者は手を押さえて苦しむ。
私は許さない。
その怒りが、御神体を傷つけたことに対してでないことを、わたしは認めた。
私は、李純を、私の友達を傷つけた、お前たちを許さない。
その気持ちがいつもより自分に力を与えてくれた。

神の遣いパンダが醜い人間の汚い悪知恵で、利用されないように、神はある一族をまた選ばれた。
それは、銭家。御神体を神の下に返す、灯台。
導きの緑の炎を与えられた一族。それは、御神体の望まれる、笹の色。
この炎に御神体は従って下さる。もちろん、炎としての、役割を忘れたものでもない。

―李純の力が、私を守る盾となったならば、
私は、彼女に害をなす敵を打ち払う、矛となろう―




一陣の風が、私の背後から彼らに向かって流れた。
その流れに乗せて、握っていた弾薬をこじ開ける。

彼らに届けられる、この粒の一つ一つが、私からのプレゼント。


「燃えさかれ、神の裁きを身に受けよ!!」


私が念じると、散らばった粒の一つ一つが火種となって、緑炎を巻き起こす。
炎は、千の刃となって、彼らを貫き、焼き尽くした。



火薬を使うと、範囲の指定がしやすい。
彼らは瀕死の状態で、踏みとどまった。

死なれては困る。
これから、お前たちに聞かないといけないことは、山ほどあるのだから。





『はい、密輸団を捕らえました。息はあります。本国の取調べの程、よろしくお願いします。』

連絡の電話を切り、私は李純の側に戻った。
顔色も良いし、命の危険はないらしい。良かった、本当に良かった。

そっと彼女の頬に手を触れると、うっすらと目が開いた。
「リンリン?無事?」
不意にそう聞かれ、私は戸惑った。この状況、どう説明すればよいだろうか。
「ちゅごくで、この力のせぇで友達少なかった。
 でも、ここに来て、ジュンジュンは変わった。リンリンにも変われると思った。」
彼女の言葉の意味はまったくわからなかった。
「リンリンの笑顔いつも、変だった。あーわっかんない、上手く言葉でない」

彼女は少し考えた後、母国の言葉で話し始めた。
『リンリンの笑顔、いつもどこか少し、影があって。昔の私と被った。
 あの力があって、これを隠すためにいろいろ頑張って笑ってきたから。
 でも、ここに来て、私は、この力を必要としてくれる人に出会えた。
 リンリンもきっと大丈夫。あの人たちは、あなたを必要としてくれる。心から、笑える。』

「でも、私は、刃千吏で…それなのに、貴方に怪我を…」

「あーそれで、日本に。意味ワカタ」

国家機関【刃千吏】という名前だけで、賢い彼女は全ての状況を理解したようだ。
自分が疑われていたこと。私の存在。

失望したことだろう。これだけ世話になったのに…




「じゃ、ジュンジュン守ってヨ」

それは、まったく思いもしなかった言葉。
むっくりと上半身を起こしながら、彼女はまん丸な目で私を見た。
御神体、パンダでもある彼女を護るのは、刃千吏である私にとって至極当然なこと。
日本に留まる理由になる。

「もう、リンリンなしじゃ、やだから。」

甘えてしまって良いのだろうか。護るなんて、言い訳でしかない。
本当に護られているのは、私なんだ。
それに私はあなたを疑った人間なのに。
でも、叶うなら私も離れたくない。彼女の側にいたい。

「リンリンといれる為に、パンダとして生まれたなら、わたし嬉しいにゃん」

任務の間に、感情が零れてしまったのは初めてだった。
そんな私をぎゅっと抱きしめた彼女の方が、その瞳から多く、感情を零していたけど。

「ジュンジュンを護って」




*  *  *



「おー、リンリンちゃん!今日も店番?えらいね~」
「ハイー、村上サンいつもありがとデスー」

あの後、組織に連絡したところ、命を懸けて護衛せよ、との命をあっさり受けた。
生活のためかなりの給料が組織から振り込まれるのだが、
私はジュンジュンさんとの共同生活を選んだ。
もっとも、本来彼女のバイトであった中華料理屋の配膳係は、
彼女の遅刻癖のせいでほとんど私が代理していたが。

「こんにちわー」
扉が開くと共に、
年齢に不似合いな声を出しながら私の所属するもう一つの組織のリーダーが入ってきた。
後ろには、他のメンバーもぞろぞろ。

「今日はリーダーがおごってくれるって言ったけん、期待しとったのにまーたここー?」
「田中っち!もー失礼だからぁぁぁ!」

途端に店の中は華やぎ、大将も奥さんも満足げに目を細めた。
ジュンジュンさんを中心にして、私の周りに人が増えた。
作り上げた笑顔と、同調の必要のない、心地よい空間。

【共鳴】っていうんだよ。高橋さんがそう教えてくれた。

「「おっくれましたー」」
同時に入ってきた、亀井さんとジュンジュンさんに一同が総いじりにかかる。
高橋さんは空気も読まずに二人をフォローしている。




―大切な、私の仲間。トモダチ―


その意味がやっとわかりかけている気がするのだ。


亀井さんにみんなの火の粉が集中したのを見計らって、
ジュンジュンさんはその輪を抜けると、私の元に来てくれた。
そして、私の顔を覗きこむと、口だけで『ありがとう』と言った。


その瞳の中には、以前よりも柔らかく笑う、わたしがいた。






川*’ー’)<なぁ、これなんて読むん?
つ【刃千吏】


川*^A^)ノ<バッチリでーす




















最終更新:2012年11月23日 21:37