ハタラキナマケモノ

 体長1mほど。ナリーネ地方に生息。
 ナマケモノの一種だが、信じられないくらい働き者。
 社会っていうのは怠け者がいる以上、働き者もいなければ成り立たない。みんなが怠け者では困る。
 しかし悔しいのは、怠け者もなんだかんだで怠け者なりに生きていけるということだ。貧しいながらもけっこう生きていけてしまう。働き者はそれをちょっぴり切ない気持ちで見つめるのが常だ。そして忙しく仕事をこなしながら、(あいつよりも俺のほうが充実した人生を送っているはずだ)と信じ込もうとするのだが、怠け者のほうはその間にセックスに明け暮れ、子孫をたくさん作っていたりする。ことほどさように世の中というのは不条理なものだ。
 ハタラキナマケモノの一日は早朝に始まる。起きてまずすることは、オウサマニワトリの産んだ卵を巣から奪い取ることだ。ハタラキナマケモノの片方だけ発達した右腕は、オウサマニワトリの卵をひょいっと掴み取るために存在する。しかしそれは決して容易なことではない。凶暴かつ注意深いオウサマニワトリに気付かれずに卵を盗むことは至難の業である。
 うまく卵を盗めなかった日は、仕方がないので果物などで食いつなぐことになる。とはいえナリーネ地方特有の聳え立つような巨木に成る果物を得ることも、決して簡単なことではない。果物を取ったときには、その果物以上のカロリーを消費していたりする。
 ハタラキナマケモノは斯様に働き者だが、分類上はあくまでナマケモノの仲間である。どこまでも報われない。


最終更新:2009年07月07日 16:01