ヒモチョウ

 体長5cmほど。ナリーネ地方全域、ボンタス地方の一部に生息。
 とにかくチャラチャラしている派手な蝶。蝶にしては珍しく夜行性である。樹液や動物の死骸(ハタラキナマケモノなど)から体液を吸って生きる。
 派手な模様はオスに限ったもので、メスの羽はほとんど黄土色一色ときわめて地味である。孔雀の羽根のように、メスを引きつける効果があるものと考えられる。毒々しい色をしているが、別に毒は持っていないし、毒を持った別の蝶の模倣でもない。ただ派手なのだ。
 しかしメスの目につきやすいということは、他の捕食者の目にもつきやすいということで、そこにヒモチョウのヒモチョウらしい生き様がうかがえる。目立たずにひっそりズルズル生きるよりも、パッと華々しく散ろう、という。月明かりに照らされたヒモチョウの原色のきらめきは、見た者を魅了させてやまない。
 しかしこの蝶がヒモと呼ばれる所以は、実は幼虫時代にある。幼虫時代のヒモチョウはベタアリの巣に寄生し、ベタアリから餌をもらって成長するのだ。なぜベタアリがそのようなことをするのかと言えば、ヒモチョウの幼虫がベタアリにとって大好物の甘い物質を吐き出すからである。それを目的にベタアリはヒモチョウの幼虫を養うのだ。
 しかし実を言うとその物質には特殊なフェロモンが含まれていて、それを口にしたベタアリは意識をコントロールされ、ヒモチョウに心酔するようになっているに過ぎない。その物質は実はぜんぜん甘くない。
 なんとも言えない生き方であると思う。


最終更新:2009年07月07日 16:03