メサメサナガヤドカリ

 体長12kmほど。カイホ地方を中心に、他の地域にもまたがって生息。
 「メサメサ」とはカイホ地方の言葉で、「むちゃくちゃ~」という前置詞を意味する。とにかく長いヤドカリである。12kmってよく分からないけれど、渋谷から池袋くらいだろうか。12kmもないかな。どちらにしろ初乗り運賃では届かないくらいの距離であるのは間違いない。
 とはいうものの、もちろんメサメサナガヤドカリにしたところで、生まれた時点からこれほど長いわけでは決してない。ヤドカリは体の成長に沿って棲み付く貝殻を取り替える、という習性を持っている。もちろんメサメサナガヤドカリもそうである。
 だから忘れてはならないのは、ここでは紹介していないけれども、「12kmのメサメサナガヤドカリが棲むにあたり、ちょうどいい(ほぼ同等の)長さを持つ貝も存在する」、ということである。
 これはなかなか難しい問題だ。
 なにしろそう考えると、むしろすごいのはその貝のほうであり、メサメサナガヤドカリはそれに体長を合わせているだけではないか、という疑問が浮かんでくる。環境さえ整えられれば子どもはぐんぐんと能力を伸ばす。しかしそれは環境を整えてくれた両親のおかげではないだろうか? アルコールさえ与えられれば、飲み会はどんどん愉しくなる。しかしそれは参加者の技量なんかではなくて、酔わせてくれたお酒のおかげではないだろうか?
 だから個人的にはこのメサメサナガヤドカリを、「世界でいちばん長い生きもの」として認めたくないところがある。それに中身を見たわけじゃないので、こいつが本当に「12kmの貝殻の端っこまで身が詰まっているのかどうか」という疑いもある。実は高田馬場ぐらいまでしかないかもしれない。
 そんなわけで疑惑まみれのこのヤドカリ、主食はもちろんシャブリである。
 キャッチフレーズは「前半(渋谷~新宿間)はシックだが後半(新宿~池袋間)はポップ。フォーマル&カジュアルの憎い奴」となっているが、やっぱりそれは貝の話じゃねえか、と思う。
 こいつ自身はきっと体の端から端まで赤紫一色だし。


最終更新:2009年07月07日 16:20