アンダーワールド外伝一

「騒ぐな、騒々しい」

 月読基地が吹き飛ばされた。
その知らせによって大騒ぎとなっていた司令室の空気が凍る。
たった一人の男の出現によって。

「誰だ、おまえは」

 いつの間にかそこにいた男。
ぼろいマントをまとい、まるでおとぎ話の魔術師のよう。
―――いや。

「我が名はメイガス。今となってはそれが私の全てを現す名だ」

男は確かに魔術師だった。
その言葉に司令室は緊迫感に包まれる。
こんな酔狂な名乗り、アザース以外にあり得ない。
何が起ころうとも対処できるように身構え、

「死ね」

 何も対処できずに死に絶えた。
自分以外の全てが死に絶えた司令室で、メイガスは過去を思う。
争乱の時代を生き抜いた仲間は片手の指より少なかった。
目的を遂げた自分こそ先に死ぬだろうと思ったのに。
結局、退廃の楽園に辿り着いてしまった。

「くだらん」

 感傷だと切って捨てる。
先ほどの核の一撃で、こちらが被った被害は極大。
されど残った戦力も極大。

「皆が皆、分かっていても殺し合う。生まれて生きて、目的も果たした。惰性で生きる必要もなくなった。幕を引こう」

 彼女以外を愛することなどありえない。
だから、時雨に感じていたのは親愛の情。
そう、それ以外はあり得ない。
そして、魔術師は最後の魔術を行使する。

「怒り狂え」

 叫びという物は、最も単純かつ明確な言語である。
伝える意志は強固、意味は明確なる怒り。
魂啓総量は限界を超越し、偽り無く魔術師と化す。

「―――――――!!!!」

 その日、異層都市が一つ、消滅した。

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最終更新:2007年07月22日 22:06
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