あたしがあいてしてあげよっか?w
翔也「………………」
帰り道。
電信柱に張られたそのポスターを見て、最近欲求が溜まりに溜まりまくっている翔也は立ち止まってしまった。
普段の彼ならばそんなことはないはずなのだが、つばめが我が家に来てからというものの、中々自己の欲求を排出する行為ができなくなってしまったからだ。
翔也「…………アホか俺」
自嘲するように呟くが、視線はそのポスターに写る女性から離れない。これだけで今の自分がどれだけ”溜まっている”のか理解して、次の瞬間には罵倒しつつも、やはり目は離れない。
もしもこんなところ誰かに見つかったらタダの変態になってしまう。そう思ってはいるのだが、されど足が地面と一体化しているかのように動かない。はぁ、と小さく溜息を吐き、
つばめ「へぇー…………」
翔也「…………ぇ!?」
いつの間にか自分を冷ややかな視線で射抜くつばめが居ることに気付いた。
※ つ=つばめ。 翔=翔也。 友良=友
ひゅるるるるー、と風が吹いた。
ぶおんぶるるん、と風が唸った。
そういえば、我が義妹は風の式神能力者だった。
つ「へぇ……ずいぶんと胸が大きな女だねー」
伸ばし方が”~”ではなく、”ー”な事には当然翔也が気付くことは無い。文の表現などわかるはずもないのだ。
じゃなくて。
兎に角、目の前の義妹さんの機嫌が悪かった。
なんか知らんがマズイ、とそう思ったところで。
友「…………あれ、暴風警報なんか出てたっけ?」
末期症状、と自他共に認める男が黒のビニール袋を引っさげて現れた。
友良はつばめから発せられる強風に眉を潜めながら、こちらへと歩み寄ってきて、翔也がガン見していたポスターをその眼鏡で一瞥し、
友「タグを付けるとすれば……”才能の無駄遣い”、と”孔明の罠”かな?」
翔・つ「は?」
と、わかるものにしかわからないことを呟いた。
兄妹揃って口を半開きにして呆ける姿を見て、友良は苦笑しつつ、きちんと説明する。
友「……遠隔操作+条件発動+永続効果。ああなんて無駄遣い」
一応(?)凄腕の逆心者の翔也は当然理解し、つばめはなんとなく理解できた。
そして、次の瞬間―――――
――――翔也の狂刃が唸り、
――――つばめの風が荒んだ。
俺は悪くネェだろうが、ここにあった無駄才能使いのポスターの所為で――――
友良は思った。翔也は相当焦ってると。
友良は思った。翔也は大前提を忘れていると。
友良は呟いた、
友「ちなみに、このポスターの力は武器級程度だって」
幾ら能力を使われていても、兵器級である翔也には一瞬でレジストできたことを。
翔也が目を離せなかったのは、有り余る欲求の所為だと。
最終更新:2007年09月25日 13:31