日本でかつて交通事故の死者数を上回っていた自殺者数の増加の原因となっていた「トキソプラズマの寄生虫」が関係していたという研究結果が発表された。チェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル氏の大胆とも言える主張によって、ここ1年ほどメディアの注目を集めています。トキソプラズマというありふれた寄生虫が、人類の脳をマインドコントロールしているというのです。
まずは下記の画像からご覧になったいだだきたいと思います。これがトキソプラズマと呼ばれている寄生虫です。
トキソプラズマは通常はネコに寄生をすることで知られていて、ネコからネコへ感染するのにネズミを媒介とし、寄生したネズミの行動を変化させてネコに食べられやすくすることで新たな宿主に乗り移るという食物連鎖的な行動を実に巧妙におこさせるのです。 ネコに食べられやすくするため、トキソプラズマがネズミに引き起こす行動の変化は、反応時間が遅くなり、無気力になります。これは危険を恐れなくなるというものだが、このような変化はトキソプラズマに寄生された人間にも現れることだとフレグル氏は言う。しかし、トキソプラズマがどのような方法でそうした変化をもたらしているのか、最近までほとんど解明されていなかったのです。
いまから2カ月ほど前に、スウェーデンの研究チームが謎を解く重要なカギを発見したとされており、寄生した体内を移動し、さらには肝心の脳に到達するために、トキソプラズマは白血球を乗っ取り、白血球といえば、そもそもこのような侵入者を攻撃する細胞だが、白血球を路線バス代わりに利用するだけでなく、トキソプラズマはそれらを小さな化学工場に変え、ネズミか或いは人間の恐怖感や不安感を鈍らせる神経伝達物質を作らせているというのです。トキソプラズマは主にネコに寄生するが、ゴミ箱、汚染された水、加熱の不十分な食肉などを介して人間へも多く感染している。ほとんどの場合、感染しても大きな問題とはならないが、妊娠中の女性は注意が必要で、米国疾病予防管理センターは、妊婦が感染した場合、流産や先天異常のリスクが高まると注意喚起をしている。
そもそもの事の発端はフレグル氏が 1990年にひょんなことから自身がトキソプラズマに感染していることを知った。同僚の研究者が新たな診断テストを開発し、それをフレグル氏に試したのです。感染を知ったフレグル氏はあることをひらめいて、トキソプラズマがネズミの恐怖感を低下させ、ネコに食べられやすくすることを知っていたフレグル氏は、自身もまた少し前から恐怖心が鈍くなったことに気づいていたのです。道路普通にを横断していて、車にクラクションを鳴らされたのに驚かなかったのだ。そこでフレグル氏は、これはトキソプラズマが原因ではないだろうかと考え始めるようになったのです。
それから約15年もの間に、公衆衛生データによる実験と分析を行った結果、フレグル氏はトキソプラズマと人間の行動にいくつかの驚くべき関連性があることを突き止めたのです。トキソプラズマに感染した人は交通事故に遭う確率が2倍以上高まるが、これはトキソプラズマが反応時間を遅くするためだとフレグル氏は考えている。さらに、感染者は統合失調症を発症しやすくなるという。トキソプラズマ感染は 自殺率の上昇 に関連しているという別の研究チームの報告もありまして、かつて日本のマスコミでも大きく取り上げられていた自殺者の急増もこのトキソプラズマが関連していることが考えれるようになってきています。
トキソプラズマがこうした変化を生じさせるメカニズムは謎だったが、2009年にイギリスの研究チームが、トキソプラズマはドーパミンの前駆物質であるレボドパを生成する2つの遺伝子を持つことを発見しました。ドーパミンの増加は統合失調症の発症と関連付けられていいますが、この発見だけではすべてを説明できず、依然として多くの謎が残ったままだ。 つまり、スウェーデンのカロリンスカ研究所感染症学センターに所属する研究者、アントニオ・バラガン氏のチームは、マウスの血液中のトキソプラズマを調べて、彼らが意外な場所に生息していることを発見して、彼らを殺すはずの免疫細胞の内部、この細胞は白血球の一種で、樹木に似た形状から樹状細胞と呼ばれおり、樹状細胞は免疫系の門番だとバラガン氏は言う。我々は、トキソプラズマがこれらの細胞を移動手段に使っているのではないかと考えましたが、樹状細胞をトロイの木馬にしているのではないかというのです。
すなわち この読みは後に当たっていたということに至る。トキソプラズマはこの免疫細胞を使って体内を移動し、寄生したの脳に到達していた。しかしどうやってという疑問が残る。 免疫細胞は刺激を受けないと動かない。だからといって、トキソプラズマが動かしているわけでもないし、樹状細胞は自分が感染していることすら気づいていない様子だ。それでは何が樹状細胞を動かしているのだろうかという新たな疑問がでてくる。
答えが即座に見つかったのです。神経伝達物質のガンマ-アミノ酪酸で、実に不可解なことだったとバラガン氏は言う。GABAは脳内で機能するものに、それが免疫系で何をやっているのか。しかし現に、GABAはそこにいて、バラガン氏はそれまで誰も見たことのないものを目にしていました。どうやらトキソプラズマが樹状細胞の内部でGABAを発生させ、同じ樹上細胞の外側にあるGABA受容体を刺激し、それによって細胞に体内を移動させ、脳に到達していると考えられました。そして、ここからが肝心な点で、統合失調症など多くの精神障害では、一般にGABAの機能の乱れが観察され、そしてGABAの量が増えることは、恐怖感や不安感の低下に関連付けられているとバラガン氏は言っている。
いずれにしても、今回の発見ですべての謎が説明できるわけではないとチェコのフレグル氏は指摘している。私は依然として最も重要な物質はドーパミンだと考えているが、このGABAのメカニズムは斬新で非常に興味深いことだと。 また、さして驚くにはならないが、トキソプラズマに関してこれまでに分かった事実から考えて、彼らは非常に、非常に賢い生物だとフレグル氏は言っている。
これらの研究結果が全て日本での自殺者数の主な原因かどうかは解明できていませんが、もしこのトキソプラズマが人の脳に寄生をしたことで、起こったのであれば、今後も感染源が広がっていかないことを願うばかりです。このところは、自殺者もようやく、かつての3万人を下回ってきているということですので、このまま沈静化していってくれることを祈りたいと思います。
最終更新:2014年04月12日 16:19