PCT 炭酸脱水酵素阻害薬アセタゾラミド
近位曲尿細管の刷子縁や細胞質の炭酸脱水酵素を抑制
TAL ループ利尿薬
ヘンレループ太い上行脚thick ascending limb
DCT ヒドロクロロチアジド
遠位曲尿細管distal convoluted tubule
CCT スピロノラクトン
皮質集合管cortical collecting tubule
ADHアゴニスト デスモプレシン
ADHアンタゴニスト コニバプタン
■近位曲尿細管
=アミノ酸、グルコース、陽イオンの等張性再吸収を行う。
炭酸脱水酵素はH2CO3をH2O+CO2に変換し、H2OとCO2が尿細管上皮細胞内に取り込まれる。NaイオンはこのH+イオンと交換で尿細管上皮細胞内に取り込まれ、さらにNa-K交換輸送によって、間質に輸送される。
★アセタゾラミドacetazolamide
体内のH2CO3が減少し、代謝性アシドーシスが生じる。
アセタゾラミドは緑内障と高山病にも有効である。
副作用・尿がアルカリ化するため、カルシウム塩が生じる(腎結石)
・腎臓からのカリウム喪失が著しい。
・アンモニアの再吸収が高まって、高アンモニア血症による、肝性脳症を生じる。
■ヘンレループ太い上行脚ThickAscendingTuble
=管腔からナトリウム、カリウム、塩素が間質へと能動的に輸送される。
NKCC2(=Na/K/2Cl共輸送体 Na-K-2Cl cotransportor)によって、Na K Clが再吸収される
Kは管腔側(NKCC2)からも間質側(Na-K ATPase)からも管腔上皮細胞内に輸送されるで、K濃度が高くなりすぎるため、「管腔側」に選択的にカリウムが流出する。このことで管腔側が+に帯電し、CaやMgの再吸収の駆動力となる。
★フロセミドfurosemide他 ブメタニドトルセミドエタクリン酸ethacrynic acidも同様の作用
NKCC2の阻害によって、管腔側の陽電荷も少なくなり、CaやMgの再吸収が減少する。
集合管に大量のNaがやってくるため、H+も多く排出され、低カリウム性アルカローシスが生じる。
適用・浮腫(心不全、腹水)
・重症高Ca血症
副作用・低カリウム血症代謝性アルカローシス
・カリウム喪失
・聴器毒性ototoxity
cf.エタクリン酸には尿酸排出作用もあり
■遠位曲尿細管Distal Convoluted Tubule
=管腔からNaとClが輸送される。Caの吸収もPTHによって調整されている。
★ヒドロクロロチアジドhydrochlorothiazide
Na/Cl輸送体NCCを阻害する。ループ利尿薬に比べ、穏やかで持続的な作用をもつ。
効果・管腔からのNa再吸収の減少は、基底側のNa-Ca交換を促進し、結果的にCa再吸収が増加する。(←ループ利尿薬と逆)
・利尿作用よりも降圧作用のほうが大きい。
適応・高血圧
副作用・まれに大量のナトリウム利尿
・カリウム消失 CCTにおいて代償的にNa再吸収・Ca排泄が生じるため
・アルカローシス
■皮質集合管
=Naの再吸収はチャネルで行われ、等価のKまたはHイオンの排泄を伴う。ENaC(endothelical sodium ion channel)及びアルドステロン受容体(ENaC及びNa-K ATPaseを活性化)が主な標的。また水の再吸収はADHの調節可にAQPを介して行われる。
★スピロノラクトンspironolactoneエプレレノンeplerenone (カリウム保持性利尿薬)
アルドステロン受容体を遮断し、ENaC, Na-K ATPaseの生合成を阻害
★アミロライドamilorideトリアムテレンtriamterene
ENaCを遮断する。
適応・カリウム喪失治療
・アルドステロン症 (←スピロノラクトン・エプレレノン)
副作用・高カリウム血症
・ACE阻害剤CaptoprilやAⅡ受容体阻害薬Losartanとの併用注意
・スピロノラクトンには内分泌異常
■浸透圧利尿薬
マンニトールmannitolは尿細管から再吸収されないため、浸透圧効果で水を管腔内に保持する。
→頭蓋内圧、眼球内圧を低下させる
尿中量 |
NaCl |
NaHCO3 |
K+ |
体液pH |
炭酸脱水酵素阻害薬 |
+ |
+++ |
+ |
アシドーシス |
ループ利尿薬 |
++++ |
- |
+ |
アルカローシス |
チアジド系利尿薬 |
++ |
+- |
+ |
アルカロージス |
カリウム保持性利尿薬 |
+ |
- |
- |
アシドーシス |
ループ利尿薬はCa排泄を抑制する。 NKCC2によるK管腔側選択的高濃度による2価イオンの吸収を抑制するため。 |
チアジド系はCa排泄を促進する。 基底側のNa-Ca交換輸送により、Caの再吸収が増加する。 |
チアジド系の副作用低Ca血症(フロセミドと逆)
Q.チアジド系投与による昏睡低Na血症
■抗利尿ホルモン
ADHおよびデスモプレシンは抗利尿作用、コニバプタン・トルバプタンはADHアンタゴニスト
ADHはV2受容体を刺激し、Gsを介しアデニル酸シクラーゼを活性化させ、AQP2を誘導する。
ADHおよびデスモプレシンは下垂体性尿崩症には有効だが、腎性尿崩症には無効である。
■SIADHsyndorome of inappriate ADH secretion
肺の小細胞癌などによってADHやV2受容体に拮抗するタンパクが生じると、水中毒(低Na血症)が発生する。治療法はADHアンタゴニストであるデメクロサイクリン及びコニバプタンの投与である
■到達目標
1.5つの利尿薬と作用部位
PCT近位曲尿細管 |
TALヘンレループ |
DCT遠位曲尿細管 |
CCT集合管 |
※浸透圧 |
アセタゾラミド |
フロセミド |
ヒドロクロロチアジド |
カリウム保持性利尿薬 |
マンニトール |
※浸透圧利尿薬の作用部位PCTおよびヘンレ下行脚・髄質部集合管
2.Na利尿を生じるがK喪失を軽減する2つの薬物をあげよ
「」のこと
「アミロライド」「トリアムテレン」 ・・・ENaC遮断
「スピロノラクトン」「エプレレノン」 ・・・アルドステロン受容体アンタゴニスト
※次の機構が阻害される
管腔側からENaCによりNaイオン(単体)が尿細管細胞内に取り込まれ、さらにNa-KATPaseにより、間質側にNaが再吸収される。逆にKは管腔側に排泄。
3.尿管結石患者のCa排泄を軽減する治療
「ヒドロクロロチアジド」投与。基底側でのNa-Ca交換輸送が促進されるため。
NKCC2及びNa-K ATPaseによる細胞内K高濃度による、管腔内陽イオン帯電による2価イオン再吸収をフロセミドは抑制するため、フロセミド投与で高Ca血症となる。
4.腎性尿崩症の治療法
塩分制限・水分制限・フロセミド投与・チアジド系投与によって、血流量を減少させ、近位曲尿細管における再吸収を刺激する。Cf.下垂体性尿崩症の治療にはADHまたはデスモプレシンを投与すればよい。また、ADH不適合分泌症候群(SIADHsyndrome of inappropriate ADH secretion)はADHアンタゴニストである「コニバプタン」およびデメクロサイクリンで治療できる。
5.適応と副作用
|
適応 |
副作用 |
アセタゾラミド |
緑内障・高山病・アルカローシスを伴う浮腫 |
代謝性アシドーシス、しびれ、肝硬変で高アンモニア血症 |
フロセミド |
心不全・浮腫 その他高血圧 |
代謝性アルカローシス 聴器毒性 |
チアジド系 |
高血圧 結石を伴う高Ca血症 |
代謝性アルカローシス 低Na血症 |
カリウム保持性利尿薬 |
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高カリウム血症
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病態 |
四肢脱力発作 尿蛋白 血清レニン・アルドステロン高値 低Ka血症 |
機構 |
傍糸球体装置の過形成 腎でのプロスタグランジン生成 |
高尿酸血症には、アロプリノールの他にプロベネシドも有効
ACE阻害薬
・アルドステロン分泌抑制
・カリウムを保持するため、高K血症には不適
・糖尿病性腎症に対しては、腎保護作用があるため、有用
ネフローゼ症候群
高度の蛋白尿により、低たんぱく血症を示す腎性疾患