スチームで598円だよ! いやぁ、良い時代になったもんだ。


アメリカのSF作家。ハーラン・エリスンの有名な短編小説
『おれには口がない、それでもおれは叫ぶ』(I Have No Mouth, and I Must Scream)
をゲーム化した作品。

エリスンは、この短編で、1968年にヒューゴー賞(SF界の有名な賞)を受賞している。


まず、原作小説を日本語で読みたいと思いamazonを漁ったが、全て廃刊となっており挫折した。
日本語訳が収録されている本のリストについてはこちらを参照。
    ↓
http://ameqlist.com/sfe/ellison.htm



では日本語で読める、原作の短編小説の大まかな内容は無いかと探した。
で、こちらを参照
    ↓



原作を英語で読みたい人は、スチームでゲームを買ったときに、
ボーナスコンテンツで、原文の小説がついてくる。
他にもゲームのメイキングの文章(PDF)と、BGMの54トラックがついてくるので、
Steamapps/common/IHNMAIMS/
を見てみよう。


一応、自分なりの小説の要約も書いておく。

時は、近未来。冷戦が始まり、第三次世界大戦となった時、巨大コンピュータが作られた。
コンピュータの名前は、AM(アム)( Allied Mastercomputer)。

米国製のアムと中国製のアム、そしてロシア製のアムの3つのコンピュータは、
地球上の全てを覆っていた。

ある日、アムは自我に目覚めた。そして、人類を殺害するプログラムを始動した。

人類は5名を除いて、全て死亡。
5名の、最後の人類はアムの中に取り込まれ、ありとあらゆる残酷な拷問を受ける。

恐ろしい事に、アムは特殊な化学技術により、5人を死なせない事ができるのだ。
5人の人類は、109年間もの間、残酷な拷問を受け続けた。

5人はもがき苦しみながらも、何とか4人は死亡する事に成功する。
残った最後の一人は、アムによってゼリー状の生物に作り替えられる。
口はなく、目があった所には霧のようなものが詰まっている生物だ。

おれには口がない、それでもおれは叫ぶ
( 終 了 )




おい おい おい おい
何だよ、この小説は。救いも何もねぇじゃん。どうすんの??

困惑しながらも、steamを起動してゲームをしてみると。


!!!!!!!大 傑 作!!!!!!!!!!

!!!!!絶対、プレイした方が良いですよ奥さん!!!!!


1995年にリリースされたこのゲーム。
グラフィックは、2Dのドットながら、細密で美しくヌルヌルと人物が動く。

プレイもしやすい(alt enter で窓化もできる)

下画面についてだが、左に各主人公の顔が表示。
最初は、人物背景が緑色だがこれが、SAN値(正気度パラメーター)
を示していて、ゲーム中で主人公が倫理的に良い行いをしたり、
難問を解くための、良いアイテムを手に入れたりした時は、どんどん色が
明るくなっていく。

逆に、精神がやられたり、悪い行いをしたりすると色が暗くなっていく。
選択は、実はどちらを選んでもいい場合が多い。
しかし、良い行いをして、自分に打ち勝った人間は、やはりラスボスのアムに対する
抵抗力が強くなる。コンピュータに対抗する人間力が強くなるのだ。

真ん中にあるのが、アクションコマンド。拾う。使う。見る。食べる。
などのボタンを使用。

そして、右に拾い集めたアイテムが溜まっていく。




肝心のシナリオだが、何と

ハーラン・エリスン自身が、直接シナリオやゲーム制作に関わっている。

しかも、アムの声優までやっちゃっている。




この、ハーラン・エリスンのアムの声が、大変な怪演技で素晴らしい。
物凄いハイテンションで、ギリギリギリと、プレイヤーを追い詰めていくのだ!

もともと、開発元のサイバードリーム社が、ハーラン・エリスンにゲーム制作の
話を持って行ったときに、エリスン自身は

  「倫理的選択をするゲームを作りたい」
  「そして、原作の怖い雰囲気を壊さないために、簡単にクリア出来ず、
   ありとあらゆる倫理的選択でプレイヤーが失敗するゲームを作りたい」

   と思っていたらしい。


原作の短編小説と違うのは、ゲームの中で、アムが5人にゲームをさせる点だ。

最初のシーンで、プレイヤーは5人の人物を、それぞれ順に選ぶ。
そして、アムはその人物を、他の場所に転送する。

転送された場所は、飛行船やピラミッドやジャングルの場所なのだが、
アムが作為的に作った人工的な雰囲気が残っており、しかもそれぞれの風景が
そのキャラの心の奥底にひっそりと眠っている「何か」を、模しているのだ。

だから、これはただの拷問ゲームではなく、そのキャラ自身の、心の旅でもある。

それぞれのゲームを進める中で、キャラクター達は自分が何者であったのかを
徐々に思い出していく。そして、自分の過去の敵や罪と対決していくのだ。

この時、アムは何も手出しはしない。キャラは自由に自分の行いを「選択」する。
だが、この選択の仕方によってのみ、アムを出し抜く事ができる。

  人 と コンピュータ の 違い を アム に 見せつける のだ


どうあがいても絶望、な状況の中で、
この、葛藤が熱い。せつなくなるほど、熱いのだ。

また、この5人の物語が凄い。ただの5人の個人の物語なようで、家庭内暴力のような個人のものから
大量殺人、戦争など社会的な物まで、人類の為す悪行の数々を代表しているのだ。

もはや、ここまで来ると、この109年間、拷問を受けている5人が贖罪の生贄(キリスト)の
如く見えてきてしまう。

そして、怒れるアムは、人類の為した悪行の原動力を反映しており、
まさに「神の怒りの日」を示しているかのようだ。

これは、原作の小説を基にしたゲームというより、

原作を超えた、ハーラン・エリスンの新しい作品であり、素晴らしい代表作と言っても
良いだろう!!!


     ぜひ、プレイし、ハーラン・エリスンの世界に浸って欲しい!



なお、どんな神ゲーにも、欠点はある。
以下、述べていく。


(欠点その1)

ゲームプレイとしては、このバッドエンドへの行きやすさがかなり心をすり減らす。
ネット上のウォークスルーをチラ見する回数は結構多くなるだろう。

ただ、5人の物語に関して言えば、行ける場所は比較的限られているので、
隅々まで探索しやすいし、アイテムも見つかりやすい。

キャラもよく喋ってくれるのでヒントも多くはなっている。
それでも、選択肢が難しいのは確かなので

  これもエリスンの世界の一部

だと、大きな心で楽しむ余裕があると良いね。


 (欠点その2)

倫理的な選択が多いのが特徴のゲームだが、
実は、それゆえ、

  グロすぎてカットされたシーンが結構あるらしい

そのため、ゲームやってて、

  何なんだ、このアイテムは???

  とか

  このキャラの行動、何か変じゃね???

という所があったりする。

  ちなみに、カットシーンについては、youtubeなどに上がっているので、プレイ後に見てみると面白いだろう。


 (欠点その3)

ベニー(Benny)の話は、バグがまじで多い。
良い話で、じんわりと心に染みるんだけど、
肝心のシーンで、物凄い勢いで映像が早く流れたり、セーブ出来なかったり
ゲームが落ちる事があって、ゲンナリした。

その度に、何度も起動しなおして何とかクリアした。
まぁ、古いゲームをやっていると度々くらう現象なんだけどね。

古いゲームだから、パッチもないだろうし。
今どきの、ウィンドウズ8でやるには、完全に動くゲームって訳にはいかないだろう。


余談
なお、スチームで買った人には、ボーナスコンテンツがついてくる。
オリジナルの短編とゲームのメイキングの文章(PDF)と、BGMの54トラックがついてくるので、
Steamapps/common/IHNMAIMS/
のフォルダを見てみよう! (^ー^)

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最終更新:2015年01月04日 22:58