そんな思いを口にしながら、社会保険庁のオンラインシステムを管理している社会保険業務センター職員は言う。
「今問題になっている5000万件の年金記録と言うのは、社会保険庁のコンピュータの中で誰のものか分からず”迷子”になっている記録です。しかし、そもそも、コンピュータに入力されず、倉庫に放置されたまま年金の子宮に結びついていない納付記録は腐るほどあるのです。そんな記録の中には、社会保険庁のミスで、マイクロフィルムへのバックアップをとらないまま捨てられてしまったものがあります」
記録が消失しているとすれば、救済など不可能であろう。そんな救済不能の年金記録の一つに、国民年金の「特例納付記録」がある。「特例納付記録」とは、掛け金の納付を忘れるなどして2年の納付期限がすぎ、納めたくても納められない人に、特別に追加納付を認めたものだ。過去、3回(70年7月、74年1月、78年7月からそれぞれ2年間)実施されている。
再び、社会保険業務センター職員が言う。
「この納付記録は、一切社会保険庁のコンピュータに入力されてこなかった。理由は、特例納付をする人は本人の意識が高く、年金の需給手続きをとる歳、過去の納付状況について正確に申請するはず。だから、入力対象から外しても、後々トラブルにはならないというものでした」
しかし実際には社会保険事務所の管理が悪く、特例納付の記録が多数紛失している。そのため、正確に申告しても支給が受けられず泣かされている人は少なくない。冒頭の高田さんもこのケースだ。
それにしても、いったい、なぜ、社会保険庁は特例納付の記録をコンピュータに入れなかったのか。
「本当のところを言えば、作業が面倒だったからです。他にも膨大な入力作業に追われていたので、事故の起こる可能性の低い記録は紙のまま管理することにした。もちろん、特例納付をした人から年金支給の申請があった場合は、パソコンの画面だけでなく、倉庫に保管している台帳もチェックし、支給漏れがないよう事務作業を進めることになっていました。しかし、今窓口に座っている若い職員は、特例納付の記録が倉庫に眠っていることすら知らない。パソコンの画面だけで申請を処理しようとすることが多いのです」(社会保険庁OB)
最終更新:2007年06月13日 00:54