年金のような40年もの永きに渡る掛け金の記録は、なるべく単純な仕組みで管理する人用がある。複雑にすればするほど事故がおきやすくなる。
しかし、社会保険庁は記録管理の仕組みを紙台帳からコンピュータに切り替えながら、一部を従来の台帳方式で管理していたわけだ。しかもその二つの方法を組み合わせ、年金額を誤ることなく支給できると考えていたのだから、歴代社会保険庁長官はよほど社会保険庁を完璧な組織だと思い込んでいたのだろう。その根拠のないおごりの結果、「5000万件」意外にも、支給漏れ事故が多発することになった。
繰り返すまでもなく、公的年金制度にとって何より重要なことは、年金掛け金の納付記録の完璧な保全だ。この記録が不備だと、誰が、いくら掛け金を納めたかが正確に把握できない。当然、漏れのない年金支給も出来なくなる。
「ところが、この貴重な年金記録台帳をマイクロフィルムへのバックアップを取ることなく、そのまま捨てていた社会保険事務所もあるのです」(ある年金官僚)
コンピュータ化される前の年金台帳は、B5判程度の用紙に個人の納付記録を記載したものだが、当時はそれを専用のボックスに収納して補完していた。一つのボックスには3000人程度の記録を収納する。もし間違って一箱捨てると、たちまち3000人が被害にあうわけだ。
「この台帳は、コンピュータ化される前、間違って捨てられることがよくありました。どういうことかというと、納付記録の記載のため棚から引き出した後に戻す場所を間違えるなどして台帳が”迷子”になることがある。すると、仮台帳を作ってもとの台帳が発見されるまでの期間、納付記録を記載することになっていた。元の台帳が発見されると、仮台帳をそこの統合することになっているのです。しかし、実際には、統合し忘れたまま仮台帳を捨ててしまったり、仮台帳のつもりでもとの台帳を捨てていたりといったことが繰り返されていたのです」(社会保険庁幹部職員)
大切な記録が安易に捨てられて来たのは、社会保険庁が捨てることを奨励してきたからだ。
さきの年金官僚が言う。
「記録を捨てて良いと言う通達が何度となく出ているからです。厚生年金の場合は、85年9月に当時の正木薫長官が出しています。国民年金はそれより12年も前の73年1月に社会保険庁の業務課町名で、台帳記録を排気していいとの通知が出されている」
「国民年金被保険者台帳(旧台帳)の処分について」(73年1月19日付)によると、
「大腸についてはその活用頻度、保管場所などを勘案して、昭和48年1月以降廃棄して差し支えない」
仮に、そんな台帳の中に自分の年金記録が含まれていたら戸思うと、背筋が寒くなる。
さらに今回、取材を進めていくと、厚生年金の納付記録の中に、コンピュータに入力されてこなかったものが膨大にあることが分かった。
最終更新:2007年06月13日 01:06