外国人労働者の受け入れについては、西欧諸国に先例があることはご承知の通りである。西欧諸国では、外国人労働者を受け入れてきた過去のツケが、現在になって回ってきている。
旧植民地である北アフリカからの移民を受け入れたフランス、同じく旧植民地のインド、パキスタン移民が多い英国、トルコからの移民を数多く受け入れたドイツなど、1960~70年代の高度成長期に外国人労働者を集めた西欧先進諸国では、現在どこもそうした問題に頭を悩ませている。
好景気の時代には問題はなかったのだが、景気が悪くなると真っ先に解雇されるのは彼らである。景気変動のクッションの役割を果たしてきた彼らとその子どもたちは、今になって行き場所がなくなってしまった。
そうしたことが社会不安を招く背景の一つとなっていることは否めない事実である。昨年から今年にかけて、フランスの移民二世・三世を中心とした若者たちが起こした暴動などは、その典型的な例だろう。
もちろん、西欧で起きたことが、そのまま日本に当てはまるとは限らない。ただ、外国人労働者の受け入れには、徹底した議論が必要だと思うのだ。
ところが、外国人労働者受け入れに対する雇用方針は、残念ながら、なしくずしに進んでしまっている。技能実習生の制度一つとってみても、それは本来の技術移転ではなく、低賃金労働の利用という別目的で使われるようになっている。
長期間のスパンで見ると、こうした事実が将来、日本の経済社会に大きな禍根を残すことは十分にありうることだ。
確かに、外国人労働者の受け入れは、短期的に見ればうまくいくかもしれない。しかし、それは体内に時限爆弾を抱えるようなものだ。日本が大不況に陥るようになったとき、彼らへの失業対策はどうするのか。
また、外国人労働者を受け入れれば、家族も日本に定着する。日本語が自由に話せない子どもたちへの教育には、日本人以上にコストがかかるだろう。親たちがやってくれば、医療費だってかかる。そうしたコストを、不況に陥ったときの日本人がきちんと負担する覚悟ができているだろうか。
そして、何より恐ろしいのは、彼らが日本の若者と一体となって低賃金層を形成したときである。そのとき、日本は後戻りのできない格差社会となり、国内に社会不安という重い荷物を抱えることになるだろう。
最終更新:2006年12月20日 18:48