原因菌
・大腸菌が全症例の約80%を占める.
・その他の主な原因菌:
・腸球菌
・クレブシエラ
・プロテウス属
・いずれの年齢層でもエンテロコッカス属が分離されることがある.
・思春期ではStaphylococcus saprophyticusおよびStaphylococcus
epidermidisがみられることがある.
臨床症候
・臨床症候は感染部位, 年齢によって異なる.
・上部UTIでは一般的に下記のような症状を認める:
・高熱
・消化器症状 (嘔吐, 下痢など)
・側腹部痛・背部痛(年長児以降)
臨床検査
血清ナトリウム値
・尿路感染症後にDMSAシンチグラフィで腎皮質欠損が認められた群では認めなかった群と比較して, 血清ナトリウム値が有意に低く,
低ナトリウム血症の頻度も高かった.
・血清ナトリウム値は白血球数やCRP値と反比例していた(Pediatr Nephrol 2012)
白血球エラスターゼ(LE)
・2011 AAP UTIガイドラインでは感度 67-94%, 特異度 64-92%であった. (Pediatrics 2011)
・Alanらにようr生後3か月未満の菌血症性UTIにおける感度は97.6%であった. (Pediatrics 2015)
尿亜硝酸塩
・感度 15-82%, 特異度 90-100% (HARRIET LANE 20th ed.)
・エンテロコッカス属では陽性とならない。
・最近のメタアナリシスでは亜硝酸塩もしくは白血球エラスターゼ,
もしくはその両者が尿検査で陽性となることは、UTIの診断においてグラム染色とほぼ同じ感度であると結論づけられている.
・Alanらによる生後3か月未満の児での研究では特異度は100%であった (Pediatrics 2015)
尿グラム染色
・UTI診断における感度は約93%.
血液培養
・上部UTIでは, 新生児期の症例の31%, 生後1-3か月の症例の21%, 生後3か月以降の症例の5%で菌血症を合併する.
診断
・最新のUTI診断に関するAAPガイドラインでは以下を満たした場合にUTIと診断する:
・膿尿
・適切に採取された尿検体での尿培養で, 単独の菌が最低5万コロニー/mL
合併症
菌血症
・菌血症合併UTIと菌血症非合併UTIでは臨床的特徴にわずかな差しかないと考えられている.
・Honkinenらの研究では菌血症合併UTIの方が哺乳障害を認める頻度が高い他, CRPがより高値であった.
・Newmanらによる前方視的研究では, 生後3か月未満の児でのUTIにおいて,
菌血症合併例と非合併例とでは臨床的外観や最高体温で有意差はみられなかった.
治療
・抗菌薬治療を行う
抗菌薬治療 (上部UTI)
・主として以下の様な抗菌薬が選択される:
・セファゾリン 75mg/kg/day q8h
・セファタキシム 150mg/kg/day q8h
・原因として腸球菌が疑われる場合にはペニシリン系抗菌薬も併用する:
・治療期間: 7-14日間
・より短期間の治療では失敗率が高いことが示されている.
・生後3か月以降では2-4日間の静注治療後に内服治療への変更を検討できる