川崎病 -まとめ

 

疫学
・不全型が川崎病全体の15-20%を占める.

 

臨床症候

結膜充血
・両側性の非化膿性結膜充血をきたす
・罹患早期に通常みられる.
・診察時には90%の症例で認める.

口の変化
・口唇のわずかな亀裂(口唇炎)をきたすことがある.

不定形発疹
・典型的には発疹は多形性, 全身性の発疹で, 鼠径部や体幹部で目立つ.

関節炎/関節痛
・近年の報告では, IVIG治療前に7.5%の症例で認めた.

 

臨床検査

ヘモグロビン値
・しばしば正球性正色素性貧血がみられる.
・約半数の患者で最初の2週間以内にヘモグロビン値が-2SDを下回る.

血小板数
・典型的には病期第2週頃に上昇する.
・診察時での血小板数減少は予後不良と関連している.

血清IgE
・川崎病患者で血清IgE上昇が報告されている.
・IL-4, IL-5や好酸球が関与している可能性が指摘されているが, 否定的な意見もある.

血清IL-21
・KD患者では血清IL-21が有意に上昇しているという報告がある(Allergy Asthma Immunol Res. 2012)

病勢マーカー
・各種サイトカイン以外にBNP, NT-proBNP, ペントラキシン3, テネイシンCなどが川崎病の病勢を示すバイオマーカーになる可能性が報告されている.
 ・ペントラキシン3 (PTX3):
  ・体内の炎症により産生される炎症性蛋白の1つ.
  ・CRPと同様にpentraxin super familyに属しており, PTX3はlong pentraxinに分類される.
  ・血管局所の炎症を鋭敏に反映すると考えられている.

 

鑑別疾患

全身型若年性特発性関節炎(SoJIA)
・Siwen DongらはKDとして治療されたのちにSoJIAと診断された症例の頻度や特徴などを下記のように報告している.
 ・後にSoJIAと診断されたのは全KD患者の0.2%
 ・KD患者と比較してSoJIA患者ではコーカサス人種の割合が高かった.
 ・マクロファージ活性化症候群の合併率がSoJIA発症例で非発症例より有意に高かった(30% vs 0.3%)
 ・SoJIA発症例では初期に非完全型KDと診断されていた症例の割合が高かった.

 

 

頸部リンパ節炎との鑑別
・発熱と頸部リンパ節腫脹のみ発症するKD患者がおり, 頸部リンパ節炎との鑑別が問題となることがある.
・Yanagiらは発熱と頸部リンパ腫脹のみで発症した患者のうち, KD患者と抗菌薬治療のみで改善した患者とを比較し, 以下の項目で有意差を認めたと報告した:
 ・発症年齢
 ・好中球数
 ・C反応性蛋白(CRP)値
 ・AST
・年齢≧5歳, 好中球数≧10000/μl, CRP≧7.0mg/dL, AST≧30IU/Lを3つ以上満たす場合, KDの診断において感度78%, 特異度100%であった. また満たす項目が1以下であったKD患者がいなかったことを報告した.

 

 

初期治療
総論
・一般的には免疫グロブリン静注(IVIG) 2g/日とアスピリン 30-50mg/kg/日 1日3回投与を併用して治療が開始される.
・RAISE studyにおいて, IVIG不応高リスク(群馬スコアが5点以上)群ではIVIG+プレドニゾロン(PSL)を併用することで, 初期治療の反応性や冠動脈病変の発生率を低下させることが示された.

 

初期治療不応例での治療
総論
・以下の治療が試されているが, 一般的に確立されたものはない.
 ・IVIG再投与
 ・コルチコステロイド
 ・免疫抑制剤(シクロスポリン, メトトレキセート)
 ・インフリキシマブ
 ・血漿交換

IVIG
・2004年のAHAガイドラインではIVIG 2g/日での再治療が推奨されている.

IVIG+PSL
・KobayashiらはIVIG単独投与群とIVIG+PSL投与群を後方視的に比較したところ, 以下の点で相違がみられた.
 ・治療の反応率はIVIG+PSL投与群の方が有意に高かった.
 ・治療後1か月までと1か月時点での冠動脈異常の発生率はIVIG+PSL投与群の方が有意に低かった.
 

最終更新:2015年10月08日 17:26