疫学
・発生率: 3.5-12/10000人
・好発年齢: 生後6か月から2歳
・性差: やや男児が多い.
病理
・主な病理所見:
・リンパ過形成
・パイエル板肥大
病歴
先行感染
・スイスの調査では腸重積症例の24%で胃腸炎が先行していた.
・アデノウイルスが最も研究され, 腸重積と最も強力な関係性が示されている.
・Okimotoらの報告ではウイルスが分離された56例において, 2歳未満の54.3%(19/35),
2歳以上の81.0%(17/21)でアデノウイルスが分離された.
・その他の腸炎の主な原因:
・サイトメガロウイルス
・Epstein-Barrウイルス
・ヒトヘルペスウイルス6型
・アストロウイルス
・Yersinia enterocolitica
・Satphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
・Escherichia coli (大腸菌) O157;H7
・Clostridium difficile
・Salmonella typhimurium
・Nylundらの報告では, 細菌性腸炎後の腸重積発症の相対危険度は40.6であった.
ロタウイルスワクチン
・現在投与されているロタウイルスワクチン(単価ワクチン(RV1)と5価ワクチン(RV5))の接種後に腸重積の発症率が高まる事が指摘されている.
・Yihらの報告では, 米国での市販後研究でRV5(Rotateq®)の初回接種後21日までで,
接種者10万にあたりの腸重積の寄与危険度が1.5であった.
・Weintraubらの報告では, 市販後研究で, RV5接種後と比較したときのRV1(Rotarix®)接種後7日以内の腸重積発症の相対危険度は9.4で,
RV1接種後の腸重積発症の寄与危険度は接種乳児10万にあたり5.3と推測された.
・Patelらの報告では, メキシコとブラジルにおける症例シリーズと症例対象研究でのRV1接種後と腸重積発症に関する研究で,
RV1接種者51000人から68000人に1人の割合で腸重積発症の危険性があった.
画像検査
腹部単純X線
・感度, 特異度ともに良好ではないため, 診断には有用ではない.
・右上腹部と右下腹部のガス欠損がみられることがある.
・診断除外における有用性:
・Roskindらの報告では, 仰臥位, 腹臥位, 左側臥位でのX線写真における上行結腸のガス像を評価し, 全方向でガス像がみられた場合,
腸重積の可能性が低下ないしは除外できる可能性を示唆した.
・腸重積を呈するようになると, 液面形成や遠位腸管でのガス減少がみられるようになる.
腹部超音波検査
・感度, 特異度いずれも良好であり, 診断, 除外のいずれでも有用.