病原
・多くの発熱を呈する感染症が原因となりうる.
・インフルエンザウイルス, アデノウイルス, パラインフルエンザウイルス, RSウイルス, ロタウイルスでのFSでは,
RSウイルスおよびロタウイルスでの頻度がやや低かった.
・これらのウイルスによるFSでは臨床像に違いは認めなかったという報告がある(Arch Dis Child 2007; 92: 589-93).
ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)
・ある報告では初回熱性けいれんの患児55人中10人(18%)でHHV-6所感染が確認された(Pediatr Neurol 2010).
・HHV-6感染によって引き起こされた熱性けいれんでは以下のような傾向がある:
・熱性けいれんの発症年齢がより若年
・より複雑なけいれんを呈する(群発するけいれん, 局所性のけいれん, 持続するけいれんなど)
危険因子
抗ヒスタミン薬
・けいれん前に抗ヒスタミン薬を投与されていた児では投与されていなかった児と比較して以下のような違いがあった(Int J Gen Med. 2012).
・発熱に気づいてからけいれん発症までの時間が短かった.
・けいれんの持続時間が有意に長かった.
病態形成
・熱性けいれんの病態形成は明確にはわかっていない.
IL-1β
・IL-1β高値は熱性けいれんの発生とけいれん時間延長に関連している
臨床症候
発作
・典型的には短い全般性強直間代発作.
・熱性けいれんの発作の8%は部分発作.
・5%は20分以上発作が持続する.
・非けいれん性発作としては, 一点凝視, 眼球上転のみの焦点発作を疑わせるものや脱力を示すものがある.
単純型と複雑型
・以下の1つ以上を満たすものを複雑型と定義されている.
・焦点性発作の要素のある発作
・15分以上持続する発作
・1発熱機会内の, 通常は24時間以内に複数回反復する発作
・複雑型が30-40%を占める.
臨床検査
鉄
・熱性けいれん児では, 発熱のある非熱性けいれん児と比較して鉄欠乏の頻度が有意に高いと報告されている(Seizure 2012, Indian Pediatr
2012)
亜鉛
・健常児やてんかん発作をきたした児と比較して, 血清亜鉛値が低いという報告がある(Ann Trop Paediatr 2011, Acta Medica
Iranica 2008).
神経画像検査
MRI
・熱性痙攣患者と比較して熱性痙攣重積後の患者では以下のような所見を多く認める:
・海馬のT2高信号
・海馬の発達異常 (特にhippocampal malrotation (HIMAL))
・側頭葉の異常所見
・FEBSTAT studyでは熱性けいれん重積群の11.5%で, 頭部MRIにおける海馬のT2強調画像での信号亢進を認めていた(Neurology 2012).
鑑別診断
細菌性髄膜炎
・以下の所見は細菌性髄膜炎の予測因子である(Pediatr Neurol 2011):
・30分以上のけいれん
・けいれん後の傾眠
・神経学的障害 (もっとも信頼性が高い)
・24時間以内の2回の短時間の熱性けいれんの反復のみの患者では細菌性髄膜炎を発症している可能性は低い可能性があり,
その他の神経疾患の臨床所見を認めない場合には腰椎穿刺は必要ないかもしれないという報告がある(West J Emerg Med
2013).
予防
レベチラセタム(LEV)
・熱性けいれんの既往のある児において, 発熱後1週間レベチラセタム15-30mg/kg/day内服させ,
その後2週目までで中止すると再発率が減少したという報告がある(Ann Clin Transl Neurol 2014)
解熱薬
・多くの研究で解熱薬,
解熱薬投与は熱性けいれん再発に予防効果がないことが示されている(Eur J Paediatr Neurol
2013, Arch Pediatr Adolesc
Med. 2009).
予後
再発
・約30%の患者で再発を認める.
・再発時期は1年以内が70%, 2年以内が90%とされている.
・再発の危険因子:
・睡眠中の発作
・てんかん, 部分発作, 熱性けいれんの家族歴
・神経学的異常
・脳波異常
・保育園通園
・微熱での熱性けいれん
・初回の熱性けいれんが1歳未満での発症
・特に初回の熱性けいれんの発症年齢が1歳未満であることが最も強力な再発因子とされている.
てんかん
・通常, 熱性けいれんからてんかんへの移行率は2-3%程度とされている.
・以下のリスクをすべて有する場合の移行率は50%:
・けいれんが部分発作
・けいれんの持続時間が15分以上
・24時間以内に再発
・発熱に気づいてからけいれん発症までの時間が著明に短い, あるいは長いことが, 後のてんかん発症のリスクになるかもしれないことが示唆されている(Pediatr
Int 2012).
・てんかんへ移行する年齢は0-14歳で最も高く, 年齢が上昇するとともにてんかん発症のリスクは低下すると考えられている(Neurology
2012).
気管支喘息
・熱性けいれんを発症した児では, 発症しなかった児と比較して,
後の気管支喘息の発症率が有意に高かったという報告がある(Pediatr Neurol 2014).
・熱性けいれんに関連した医療機関受診の回数が多い患者では, より気管支喘息を後に発症しやすい(Pediatr Neurol 2014).
アレルギー性鼻炎
・熱性けいれんを発症した児では, 発症しなかった児と比較して, 後のアレルギー性鼻炎の発症率が有意に高かったという報告がある(Wen-Ya Lin et
al, 2014)
・熱性けいれんに関連した医療機関受診の回数が多い患者では, よりアレルギー性鼻炎を後に発症しやすい(Wen-Ya Lin et al, 2014).