作:kys
その女性の肩は小刻みにふるふると震えていた。
暗がり、細い小道、薄明かりの下。
きょろきょろと辺りを見回しながら、黄昏時の帰路をひとりの女性が歩いていく。
名前は
コンコン。私立
キメラ学園の図書館司書である。
冬の風が耳元を掠めて、女性は身をすくめた。ただでさえ寒いこの時期、さらに身を縮めるように彼女が歩いているのにはわけがある。
「…今日は…いないのかな…?」
この小道。不審者が出ると有名な、道である。
まるで小動物のようにきょろきょろと、家まで続く暗がりを眺めながら、彼女はひたひたと、家路を急ぐのだった。
そんな彼女の後ろに迫る、ひとつの黒い影。
「…今晩はお嬢さん!」
「…だれ!?」
無駄にさわやかな声と共に、その黒い影は降ってきた。コンコンが目を見開いてそれを見る、と同時に…彼女は、声を上げることすら忘れてしまった。
「I am Jooooooooooooooooooohn!!!!」
裸コートに蛇を巻きつけた不審者。キメラ学園近辺に出るという、Johnだった。
たすけて、と叫べさえすればよかったのだろうが、体が固まってしまったコンコンは口すらうまく動かない。
涙目のコンコンに、その不審者が近づこうとした、そのとき…
「ふぐり、ふぐり、ふぐり!」
やや遠くの暗がりから聞こえてきたのは『魔法の言葉』。聞こえると同時に、その不審者はまたもとの暗がりの中へと戻っていってしまったのだった。
「…う、わあ…」
力が抜けてしまった。コンコンの膝はがたがたと震え、今にも崩れんとしていた。ようやく動くようになった口からも情けない声しか漏れず、ああもう膝が折れてしまう、コンコンの膝が、へたりと崩れるのと、コンコンが誰かに抱きとめられたのは同時だった。
「コンコンさん大丈夫ですか?」
「う…は…わっ…な、だっ…!?」
ぼんやりと照らす街灯の中、コンコンの瞳に写ったのは金髪の男性だった。
生茶。キメラ学園の体育教師(柔道専門)である。
「いや、昇降口でコンコンさん見かけたんで、追いかけてきたんですけど…大丈夫でした?最近不審者が出るっていうから…でも間に合ってよかったなあー」
瞬間、コンコンは思った。
状況、暗がりの街灯の下。
自分の現状、涙目、ガクブル、力がない。
そして現在地、生茶先生の腕の中。
「…あれ、コンコンさん?大丈夫?すげー震えてますけど…風邪?」
きっと彼は天然だったのだろう。というか何も考えていなかったのだろう。コンコンはそう思った。でなければこんなことするはずなかった。
まさか熱?なんて言いながら生茶先生がおでこっつんしてこようなどと。
「くぁswでfrgthyじゅきぉ;p@:」
「ちょ、コンコンさん!?コンコンさぁん!!!!?」
きゅう、という断末魔をあげ、顔を真っ赤に染めて、コンコンは生茶先生の腕の中で意識を飛ばした。
気絶してしまったコンコンを抱えて生茶先生があたふたしてしまったのはまた別の話。
最終更新:2007年12月02日 16:52