作:歌詞主
第一夜
「よーし、これでいいだろうー!」
土曜日の昼。ボスは、ノートパソコンのエンターキーを押すと、大きく伸びをした。
同時に職員室のプリンターが機械的な音を立てて動き出す。
ボスが白衣をなびかせながらプリンターへ向かうと、丁度印刷が終了した。
紙には業務日誌と書かれている。今日一日の仕事の報告書だ。教師はこれを書き終え、提出すると帰宅できる。
業務日誌を取り、校長秘書の机へ持っていく。
校長秘書であるnoeは、熱心に資料とパソコンを交互に見て、データを入力している。
「noeさん、お疲れ様です」
ボスが声をかけると、noeは手を止め視線をボスに向けた。
キャリアウーマンの象徴のような細い眼鏡が、光を反射する。
ボスはnoeに業務日誌を手渡した。
「あ、はい。業務日誌ですね。今日もお疲れ様でした」
noeがそれを受け取る。
「noeさんもお疲れ様です」
「今日は皆さんでこの後飲みに行かれるんですか?」
ボスは皆さんと言う言葉に違和感を覚え、後ろを振り向く。そこには3人の教師達が待ちくたびれたかのように立っていた。
空気、ゴキ、onの3人だ。
その様子にボスは少し笑い、再びnoeの方を振り向く。
「ええ、いい店がありまして。よければご一緒にいかがですか?」
「ごめんなさい。折角ですが、仕事がまだ残っていまして」
noeは視線を少し机の端に向ける。そこには山のように詰まれたファイルがあった。
「あ~……それじゃあ仕方がないですね。お仕事がんばってください」
「ええ、ありがとうございます。皆様も楽しんで来てくださいね」
そう言うとnoeはニコリと女神のような笑みを浮かべた。
その数分後。職員室内にボスの絶叫が響き渡った。
「ああ~~~~~~!!」
ほとんどの教師が何事かとそちらに視線を向ける。
ボスの後ろにいる3人がボスの手元を覗き込む。
その手元には一枚の紙。ボスの机の引き出しから取り出されたものだ。
引き出しの中は、その紙以外何も入っていない。
「どうかしたかい?」
すでにコートを着ているonがボスに尋ねた。
「金が……ない」
絶望したような声でボスがそう告げた。
「はぁ!? 何言ってんだよ、ボス!! 俺らは確かに金払ったぞ!」
onの隣、女性だが革ジャンのよく似合う凛々しい顔立ちのゴキが思わず声を荒げる。
几帳面な性格のボスは飲みに行くときは店をしっかり調べて予約し、先に必要な金額を集めておくのだ。
その集めた金を取り出そうと、仕舞っていたはずの引き出しを開けた。だがそこに金の入った封筒は無く、代わりに今ボスの手元にある一枚の紙が入っていた。
パソコンで打って印刷したのだろう。紙にはこう書かれていた。
記号とアルファベットの羅列。そして最後には「仕事しろよ」という一文。
意味がわからず4人は首をかしげた。
「どうしたんですか?」
ボスの絶叫を聞き近づいてきたnoeが、心配そうな顔で聞いてきた。
「いや、我々の飲み会の金が無くなってまして、代わりにこれが……」
ボスが答え、紙をnoeに見せる。
紙を見て、noeは額に手を当て考える仕草をしたが、すぐに結論を出した。
「暗号文か、何かじゃないですか?」
「暗号文?」
ボスが聞き返す。
「ええ。ほら、ミステリー小説とかでよくあるじゃないですか。宝を隠した場所を記したりしてる」
noeの言葉を受けて、4人が再び紙に目を落とす。
「この紙が、そうだというのかい?」
onが訊ねる。
「お金が無くなって、この紙があったと言う現状からの推測ですけど」
「ふーむ……」
ボスの唸りに合わせて再び視線を落とす3人。
そんな3人を叱責するかのように、ゴキが声を上げた。
「よーし! この挑戦受けてやろうぜ!」
「ゴキ先生……そうですね、やりましょう!」
ボスもそれに同意する。
「そうだそうだ。金隠しといて仕事しろってのが気にくわねぇ」
onも紙に書かれた文を指差し頷く。
早速3人は暗号文の解読に取り掛かった。
「多分この仕事しろよってのがキーワードなんだろうな」
「けど何の仕事だ? 計算でもしろってのか?」
「いや、元素記号かもしれない。ちょっと調べてみる」
それを見届けたnoeは再び自分の机に戻り、仕事の続きを再開した。
noeが資料のデータを黙々とパソコンに入力する。その姿を、スーツ姿の空気がじっと見ていた。
「そうか、そう言う事か……」
先程までずっと黙っていた空気が口を開いた。
「おい、空気! お前も考えるの手伝え!」
その声に反応してゴキの叱責が飛ぶ。しかし、空気はそれを無視してボスの机の上にあるノートパソコンを開いた。
「空気先生、どうかしましたか?」
ボスが訊ねる。残りの二人も訝しげに空気の行動を見ている。
空気は電源を入れるわけでもなく、じっとノートパソコンを見つめている。
「わかりましたよ。その暗号の意味」
はっきりと、空気が宣言した。
その予想外の回答に3人は驚き立ち上がる。
「本当か!?」
ゴキの質問に答えるように、空気が解説を始めた。
「『仕事しろよ』というのはパソコンに向かえって事なんです。そしてパソコンに向かうと必ず目に付くものがある、それがこれです」
空気がそう言って指差したもの、それはノートパソコンに組み込まれたキーボードだった。
「この記号とアルファベットを入力しろとでもいうのかい?」
onが訊ねると、空気は頷いた。
そしてノートパソコンの電源を入れた。
低いファンの音と共に起動を始めるとすぐにデスクトップが現れた。
すると空気は手馴れた手つきでメモ帳を開いた。
「ええ、半分正解です。しかし、そのまま入力しても意味が無い。だからこうするんです」
空気がマウスを動かし、入力関係の設定画面を開く。
「日本のキーボードにはアルファベットの他に、ひらがなが書かれています。つまりこれは設定を変えることによってそのひらがなの方でも入力できると言うことです」
言いながら設定を終わらせ、先ほど開いたメモ帳を出す。
そして、ボスの持つ暗号文を見ながら、ひとつひとつ入力し始めた。
魔法をかけたかのように、意味を成さなかった文が、日本語の文に変わっていく。
そして、メモ帳の一行目に表示されたのはこんな一文だった。
かこ゛め かこ゛め かこ゛のなかのとりは いついつでやる たそがれのばん かろてんわしめて うしろのしょうめんた゛あれ
誰もが一度は耳にしたことがあるだろう曲の歌詞がそこにはあった。
「かごめ歌……? けど少し違う……」
再び首をかしげるボス。
「ちなみに、『ろ』は伸ばし棒、『わ』は『を』の可能性があります」
空気が補足し、日本語として通じる文に直す。
そうして現れた一文を、onが口ずさんだ。
「かごめかごめ かごのなかのとりは いついつでやる たそがれのばん かーてんをしめた うしろのしょうめんだあれ か……」
しかし、補足を入れても正確なかごめ歌とは異なる。
「つまり、これも暗号ってことかい?」
onが聞くと空気は首肯した。そしてゴキが声を上げた。
「よーし、面白くなってきやがった!」
日が傾き、影が伸び始める校舎内。
4人はそんな中を歩いている。
ボスの手には先ほどの暗号文と解読したものを印刷した紙。
4人はあたりを探しながら歩くわけでもなく、まっすぐ目的の教室を目指す。
そして、その教室にたどり着いた。
「失礼します」
引き戸を開け、中へ入る。そこに生徒の姿は無かったが、代わりに白いエプロンをつけた女性が教室の後ろにいた。
「あれ? どうしたんですか? 先生方」
この教室で飼っている
イヤホンと言う名のジュウシマツの世話をしていたワインが振り向いて聞いてきた。
「いえ、実はですね……」
ボスはワインに近づきながら状況を説明し、問題の暗号文と解読文を手渡した。
「それで、籠の中の鳥というとここしか思い当たらなくて……」
ボスが説明すると、ワインは頭を傾げたが、すぐに返答してきた。
「うーん、確かに鳥を飼ってるといえばここしかないと思うけど、封筒みたいなのは見かけてないですねぇ」
「そうですか……」
落胆の色を見せるボス。残りの三人も視線が下を向く。
しかし、ワインの言葉はまだ終わってなかった。
「何か知ってる? イヤホンちゃん」
籠の中にいる小鳥、黄緑色の羽毛で覆われたイヤホンに訊ねる。
すると、イヤホンは籠の中を動き回り、籠の下に敷いてあるちぎった新聞紙の中をつつき始めた。
5人がその様子を見守っていると、程なくして小さな紙をイヤホンが引っ張り出した。
「おお?」
onが声を上げる。全員がその紙に釘づけになり、ワインがその紙を籠から取り出した。
折りたたまれた小さな紙。それを開くとそこにはあまりにも著名な人物の名前が6人分、記されていた。
『バッハ ベートーベン チャイコフスキー ヴィヴァルディ ワーグナー モーツァルト』
クラシック音楽の巨匠達の名前、それが書かれていた。
「これは音楽室に行けって事か!」
ゴキが我先にと走り出す。
「あ、ちょっとゴキ先生!」
空気が後を追いかけ、onもそれに続く。
「それでは先生、イヤホンさんも、ありがとうございました!」
ボスが一礼をし、部屋を後にすると、再び教室内に静寂が訪れた。
そしてワインが口を開く。
「今日は私達もお酒飲みましょうか、イヤホンちゃん」
その提案に籠の中のイヤホンは小さく鳴いて答えた。
第二夜
「失礼っ!」
ゴキは走った勢いに任せて扉を開いた。
大きな音を立てて開く引き戸に驚き、音楽室の中からこっちを見ていたのは音楽教員ふぁのと新任の杜だった。
「ど、どうかしたんですか?」
大きい目をさらに見開いたまま訊ねるふぁの。
その間に残りの3人も音楽室の入り口にたどり着いた。
「この6人に関するものってこの部屋にあるか!?」
小さい紙を手渡すゴキ。
それを受け取って読むと、ファノと杜は部屋を見渡した。
「ええ、肖像画なら壁に6人ともかかってますけど……」
壁を見る4人、確かに額縁に収められた肖像画が、音楽室の壁にかかっていた。
「ちょっと失礼!」
ゴキはそう言うと部屋に入り、ベートーベンの額縁に向かった。
残りの3人も捜索を開始しようとする。
「あ、あの。どうかしたんですか?」
杜がおずおずと尋ねる。
ボスがその質問に答えた。
「まぁ、それは大変。私たちも手伝いますよ」
「ええ、そうしましょう」
ふぁのの提案を杜が受け、早速行動を開始する。
「すみません、ありがとうございます」
ボスも捜索に移った。
しかし、結果は誰も同じだった。
「ダメだ、こっちにはねぇ!」
ゴキがそう言って振り向く。
「こっちもだ」
「同じく」
onと空気も振り返り、残り3人を待つ。
だがその3人も振り返って首を振った。
「どういうことだ……? あれはヒントではないのか?」
空気が首をかしげる。
「いや、籠の中から出てきたんですから。これは間違いなくヒントなはず」
ボスがそう返し、再び3枚の紙を見る。
すると、onが笑いながら冗談を言った。
「なんかさ、こうやって6人立ってると悪魔の儀式みたいだな」
「なんだ? それ」
ゴキが意味を尋ねる。
「いやさ、ちょっと崩れてるけど俺達を線で結ぶと、六芒星みたいな形になるだろ?」
「六芒星?」
杜が訊く。
「ほら、上向きと下向きの三角形を2つ組み合わせたやつだよ」
現在の6人の配置は、南北の壁に一人づつ、東の壁に二人、西は窓側だが、柱に絵がかけられているため二人が立っている。
確かに正確な六芒星では無いが、近い形にはなる。
「ああ~。じゃあこの中心に何かでてきたりして?」
ゴキが冗談で返すと、少し笑いが起こった。
しかし、ボスはその冗談を聞き、再び何か考え始めた。
そしてすぐ、勢いよく顔を上げた。
「そうか、それだよ!」
勢いよくonを指差すボス。指されたonは「へ?」といい呆気にとられた表情になった。
「かごめって言うのはそれのことだよ! 竹で編んだ籠の目。つまり六芒星の形だ!」
今ではあまり見かけなくなった目の粗い竹編みの籠。その目は確かに六芒星の形をしている。
「ってーことは、この真ん中に……?」
ゴキが机の間を縫うように教室の中心へ向かう。
残りの5人も同じように動き始めた。
答えはすぐに出た。
「……何も、ないな」
天井を見上げる空気が言う
天井にも床にも、周りにある机の中にも封筒どころか紙すらない。
「あの、解読の紙を見せてもらえますか?」
ふぁのが言う。
「いいですよ」
ボスが紙を手渡すと、ふぁのはそれに目を通し、杜にも見せて一点を指差した。
頷く杜、その様子に、「何かわかりましたか?」とボスが尋ねた。
「いえ、あのここの文にカーテンを閉じてってあるので、とりあえず閉じて見ましょうか?」
「あ! そうですね。お願いします」
ボスが答えると杜とふぁのはそれぞれ南北の窓際に向かい、カーテンに手をかけた。
すると、ふぁのが異変に気づいた。
「何これ!」
それと同時に杜も「うわ!」と声を上げた。
「どうした!?」
声を聞き、ゴキがふぁのの方へ向かう。
「あの、カーテンが誰かに切られてるんです……」
「こっちもです」
ふぁのと杜が言う。
「おいおい、誰だこんないたずらしたのは」
ゴキがカーテンを少し開いて見ると、確かに黒く分厚いカーテンの真ん中あたりが多数切り刻まれ、穴が開いていた。
「と、とりあえず閉じて見よう」
空気の言葉に二人とも頷き、カーテンを閉じた。
遮光カーテンのため、陽光が遮られ、少し暗くなる室内。
カーテンに多数開いた穴からかすかに光が差し込んでいる。
「ったく、生徒にも困ったもんですな」
onがすこし怒りを込めて言う。
「まぁ報告は後でしておきましょう。それよりも今はこの謎です」
ボスが3枚の紙を机の上に広げる。
「うーん、籠の中がこの教室の中心だとすると……とりってなんだ?」
ゴキが腕を組んで疑問を口にした。
「とり……鳥……?」
空気が呟くように言う。
「イヤホンさんをこの教室に連れて来るとか?」
ボスが思いついたことを口にする。
「うーん、別に飛ばないと取れないような場所になんかあるわけじゃないしなぁ」
onがそれを否定したとき、杜が口を開いた。
「とりって、干支とか関係あるんじゃないですか?」
「干支? ああ、確かに酉ってありますね」
空気が思い出したように言う。
「ねーうしとらうーたつみーうまひつじさるとり……あ、ほんとだ」
ゴキも気付く。
「干支、干支か……」
ボスが呟くように反芻すると、onが気付いた。
「方角じゃないかい? 確か干支で方角ってあるだろ?」
「酉の方角? えっと、北がねずみだから……」
部屋にかかっている時計の文字盤を見ながら、頷くリズムで当てはめていく空気。
答えはすぐに出た。
「西だ!」
「ふぁの先生。この教室の北ってどっちですか?」
ボスが聞くと、ふぁのは少し考えてグランドピアノや黒板のある方向を指差した。
「確かこっちです」
「じゃあ、その左側だから……」
ボスが左を向くと、そこには先ほど閉じたカーテンがあった。
カーテンに開いた穴からは、夕日が見え隠れしている。
「このカーテンの傷が、なんかあんのか? もしかして」
ゴキが呟く。
「酉の方向……黄昏……カーテンを閉じて……うしろの正面……」
後ろを振り向くボス。廊下側の壁に夕日の光が届いてうっすらと明るくなっている。
「すみません、蛍光灯を消してもらえますか」
その光を睨みながら、ボスはふぁのに頼む。
「あ、はい」
ふぁのがぱたぱたとスリッパの音を立てて蛍光灯のスイッチのところへ向かい、消した。
「うお!」
「おお!」
「なんと……」
「すげぇ!」
「はぁ~……」
「すごい……」
6人がそれぞれ感嘆の声を上げた。
見つめる先、廊下側の壁には夕陽の光でつくられた文字が映し出されていた。
少し歪だが、光の文字はこう書かれている。
ヴルタヴァ川の流れ
「俺、今鳥肌立ったよ……」
ゴキが二の腕をさすりながら言う。
「俺も……すげぇなぁ」
onも呟く。
「ヴルタヴァ川って、どこかにあるんですかね?」
ボスが尋ねる。答えたのは地歴を担当しているゴキだった。
「確か、ヨーロッパのチェコとドイツの国境を流れる川の名前だったと思うぞ」
「ほおー。それにしてもヴルタヴァ川って言いにくいですね」
空気が言うと、ゴキはさらに補足説明を入れる。
「確か、チェコ語だったかな。ドイツ語で言うと……モルダウ川、だったかな」
「そっちの方がいいやすいな。モルダウ川の流れ、か……まさか今から行けって事じゃないだろうな」
onがそう言うとふぁのと杜が顔を見合わせた。
「これって……」
「そうですよね……? ふぁの先生」
何かを相談する二人。その様子に気付いたボスが問いかけた。
「どうかしましたか?」
その問いの杜が答える。
「あの、モルダウの流れっていうクラシックの曲があるんですよ。スメタナって言う人が作曲したんですけど」
その答えに、ゴキが目を輝かせる。
「そいつの肖像画はあるのか!?」
「い、いえ。肖像画は無いですけど……」
「その曲の楽譜ならありますよ。ちょっと待っててください」
そう言うとふぁのは再びスリッパの音を立てながら教室の電気をつけ、グランドピアノの傍らにある小さな本棚を探し始めた。
本はすぐに見つかり、取り出したふぁのは埃を飛ばそうと本を振った。
すると、本の間から茶色の封筒が、落ちた。
「ああ!」
ボスが声をあげ、急いで近づく。
残りの4人も駆け寄ると、ボスが封筒を手に取り、手を上げた。
「あった! これだ!!」
「おお!!」
5人の感嘆が一致した。
「お、おい。金はちゃんと全額入ってるんだろうな」
ゴキが心配そうに言う。
「ちょっと待ってください……1,2,3……あれ?」
「どうした?」
onが封筒を覗き込む。
「1万円、多くなってる……」
「まじで!?」
ゴキもすごい勢いでボスの手元をのぞく。
「うん、確かに1万円増えてる……後こんな紙が」
ボスは封筒の中から小さな紙を取り出し、広げた。
そこには、大きなフォントでこう書かれていた。
あまり飲み過ぎないように。 怪盗バードマン
「……怪盗バードマン? 誰?」
ゴキが訊ねるが、みんな首をかしげる。
「さあ? 謎を解いたごほうびってことか?」
onが言う。
「まぁ、貰っておきましょう。とりあえず見つかってよかった」
空気が胸をなでおろす。
「そうですね。では、行きましょうか。あ、お二人もいかがですか?」
ボスが提案すると、ふぁのと杜は快く承諾し、戸締りをして音楽室を後にした。
「とり校長」
緑茶を校長室の豪奢な机の上に置きながら、noeはとりに声をかけた。
「はい、なんですか?」
校長用の革張りの大きな椅子に、子供と見間違うほど幼い容姿を埋めているとりが答える。
「カンパするなら素直に渡せばよかったのではないですか? あんな仕掛けをしなくても」
noeはチラっと音楽室の方向に目を遣る。
「どうせなら面白いほうがいいじゃないですか」
あっけらかんと言うとり。
そんな様子にnoeは一つ息をつくと、とりに伝えた。
「まぁ構いませんけどね。ただ、カーテンの代金は校長が払ってくださいよ」
「……はい」
完
最終更新:2007年12月11日 00:41