「行かないで!」
「ごめんよ、父さん冒険をしたいんだ」
あの別れの時の子供達の顔……忘れることもできない。こうやって夢の中にも浮かんでくるのだ。
だが私も男だ、一度冒険をしてしまった、あの高ぶる気持ちを抑えることなどできない……
「オリマーサン……」
どれぐらい移動したのだろうか、そろそろ着いてもいい頃だが。
このように寝ていて、起きた頃に事故にあったことを思い出した。
あのときは、きまぐれレーダーの気紛れさが事故の原因のひとつだったか……
「オリマーサン!」
「ん?……」
ドルフィン号の声……そうか、もう着いたのか
「どうしたドルフィン号、もうあの惑星に着いたのか」
「ソウデスヨ!」
窓の外を見ると……そこにはあった。地獄の惑星である、堂々と私達を向かえているようだ。
さてと、どこへ降りるべきだろうか。一度目の墜落地点は、のぞみ大地に当たるところ。
二度目はねむりの谷だったか……。ドルフィン号に任せようか。
「ドルフィン号、前回のデータから最適な着陸地点を考えてくれ」
「残念デスガ、二号カラ受ケ取ッタデータハ、参考ニナリマセン」
「何故だ?」
「アマリニモ地形ガ変ワリスギテイマス……ネムリノ谷ノ位置シカ分カリマセン」
「分かった、眠りの谷に降りよう」
予想外だ。前回の探検での地形を記録しておけば、ねむりの谷、めざめの森、まどいの水源、のぞみの大地
の地形変動を計算し、降りれるかと思ったが……。
この惑星は私達の想像を超えている、一度めと二度めの間の短時間でもあれほど地形が変化したのだ。
二年程経った今ではさらに地形が変化しているだろう。それを何故私は予想していた。
いや……予想できていた。だがあまりにも未熟だったのだ、私の予想などこの惑星には通用しない。
「大気圏ニ突入シマス」
窓を覆う防御壁が作動した。隙間から、若干外が見えるが恐ろしい世界である。
高熱の炎がドルフィン号を襲うのだ。私は何度もこれを体験しているが、生きた心地がしない。
特に一度目はひどかった…ドルフィンが破壊されたからな。
「ドルフィン号……大丈夫か?」
「平気デスヨ……ソロソロ揺レガ収マリマス」
少しずつ振動が弱くなっていく。そろそろ空を抜け、地上が見えてくるはずだ。
今日はいつもより早めに防御壁を解除した。2年ぶりの眺めだ、早く見たいのだ。
「ん?」
やはり地形が変わっている。まるで別の惑星へと来たのかと疑う程だ。
ドルフィン号には、ねむりの谷に直行せずにしばらく飛行を続けろと命令した。
あそこがめざめの森か、あそこがまどいの水源か、いろいろと想像してみたが納得はできなかった。
元々ピクミンがいた場所に行けば、会える確率が高いのだが……
「すまないドルフィン号、ねむりの谷へ向かってくれ」
「了解シマシタ!」
「こんなもの予想なんてできなかった……」
「デスネ」
ねむり谷……前回の探検で最初に降りた場所だ。特徴的なのは冬のように雪が降り、寒いということだ。
さらにそれが永遠に続く……常に冬の場所である。静かの場所なので、私はねむりの谷という名前をつけたが……
しかし今はまるで別の場所だ。溶岩が流れ、上空にもその熱気が伝わっている。
降りようとは思ったが……果たして降りる場所なんてあるのか?
「ドルフィン号、降りれる場所なんてあるか?」
「探シテミマス…… アリマシタ!元々、辺境ノ洞窟ガアッタ場所デス」
「よし、そこに降りてくれ」
さすが私のドルフィン号である。辺境の洞窟といえば、ねむりの谷の最も奥にあった洞窟だ。
かつてはクイーンチャッピーという強敵がいたが、今は洞窟というものは残っているのだろうか。
さらに、地形の変化が小さいねむりの谷……となると、エリアの端に降りる事になる。
「ソロソロ着陸シマス」
考え事をしていたらいつの間にか着陸地点に着いたらしい。今回の探検で始めての地上だ。
今回の探検、冒険の目的はこの惑星の謎を解明することだ。ピクミンや原生生物の謎も解き明かすのだ。
この惑星に慣れている私が調査員として選ばれたが、私は研究員ではない。
調子に乗って謎を解明すると言ったが、もしかするとなにも分からないかもしれない。
ただ私は、少しでも謎を解明したいのだ。
「オリマーサン!気ヲツケテ!」
ドルフィン号に見送られ、早速調査開始である。
ただ出発前に何度も言われたことがあった、宇宙服の緊急ランプが点滅したら帰れ……と
おそらく温度のことだろう。この
火山地帯は灼熱地獄だ、宇宙服も炎熱ならともかく、溶岩の熱には耐えられない。
数分歩いたが、未だにピクミンの姿は見えない。
「どこだ……ピクミン」
すぐ見つかると思ったが、見当違いだった。
ピクミンが見つからないとこの先の探検も困難になる。ドルフィン号に他のエリアを検索してもらっているが、
スフィアマップなどのこの惑星を詳しく知ることの出来る物がなければ、それも困難だろう。
「ランプはついていない……といっても、後10分ももたないだろうな」
なんとしても今日中にはピクミンをみつけたい。
この流れる溶岩さえなければ、向こうの岸へと行けるはずなのだが……
「オリマーサン!」
「なんだ?そんなに慌てて」
ドルフィン号の慌てた声など最近は聞いたことがなかった。
なにを言おうと思ったのか、それを聞く前に答えが分かった。
突然、前の前の溶岩が襲ってきたのだ。
「!?」
さすがこの惑星である。なにが起きるか予想などできないのだ。
私はこの溶岩の謎も解かないといけないのか……
「チャッピー!?」
以外にも溶岩の正体はすぐにわかった。チャッピーである。溶岩に覆われた巨大なチャッピーだ。
こいつは見たことが無い種類だ……ヤキチャッピーよりも大きく、皮膚組織の破壊がさらにすさまじい。
チャッピーと認識するのがやっとのくらいだ。実際はイヌムシ科でもないのかもしれない。
「どうした?襲わないのか?」
ピクミン以外の原生生物に知能などないと思ったが…このチャッピーは私の品定めをしているようだ。
生かすか、殺すか……。残念だが、今はチャッピーがそれを決める。今は、こいつの目をにらみつけるしかない。
そのときだった。どこか懐かしい、あの音が聞こえた。
「赤ピクミン!?」
赤ピクミンが突然現れた。私のことを覚えていてくれたのだろうか、それともピクミン達の餌なのか……
しかし餌にしては狙う相手を間違えている、飛び掛ったピクミン達が燃えている。
「このチャッピー……炎以外の力を持っているのか」
赤ピクミンでさえ葉っぱが燃えている。相当な熱を発しているのか……
それよりもだ、ピクミン達に隙ができてしまう。目の前でピクミン達を失うのはつらい。
私は大きく息を吸い、笛を吹いた。
「私を覚えているか?ピクミン」
ピクミン達の苦しむ声が消えた……それに私の周りに存在を感じる。
目を開けるとそこには確かにいた
「ピクミン…覚えてくれたいたのか」
ピクミン達は私を見ている。なにを考えているのかは分からない。
ただ命令を待っているのはよく分かった。だが、今は命令することが無い。
相手は溶岩で覆われている敵なのだ、赤ピクミンでは歯が立たない。今は…
「逃げるかない、行くぞピクミン!」
ピクミン達を引き連れてドルフィン号の元へと行くしかない。オニヨンに返してあげたいところだが
それには時間がかかる。チャッピーにもオニヨンが襲われる。ドルフィン号の格納庫に入れて今日は飛ぶしかない。
「やっぱり追いかけてくるか」
チャッピーは私達を追いかけ始めた、走り出した時間差はあるが……あっという間に追いつかれるだろう。
「ドルフィン号!エンジンを準備しておけ、それに格納庫を開けていろ!」
ドルフィン号に着いたときにすぐに飛び立てるよう。今はこれしかできない。
赤ピクミン達は、葉、蕾、花がそれぞれいるが、しっかり着いてきている。
着いてきてほしくないやつもいるが……。しかし意外にもチャッピーは走る速度は遅い。
皮膚組織が崩れて走れないのだろうか。それも日記に記しておこう。
「オリマーサン!早ク!」
「ピクミン!そこに入れ!」
ピクミン達は素直に言うことを聞いた。入ったと同時に格納庫を閉めた。
敵はすぐそこへと来ている。時間との勝負だ。
「ドルフィン号!エンジン点火!フルパワーで上昇しろ!」
「ハイ!」
全身が座席へ押し付けられる。命令どおりフルパワーで上昇してくれているようだ。
首を動かすのが困難だが、辛うじて外を見ることができた。
チャッピーはすぐそこまで来ていた……もしこれが夜間ならば、確実に襲われていただろう。
「ありがとうドルフィン号……」
「危ナカッタデスヨ。 格納庫ノ映像ヲ出シマス」
赤ピクミン達はしっかり生きている。あのGをしっかり耐えてくれた。
いつの間にか外は暗くなっていた。原生生物達のうめき声も聞こえる。
あれほど恐ろしい溶岩も夜間になると、綺麗に輝いて見える。
「オリマーサン、オニヨンハ?」
「見つけることはできなかった。あのチャッピーが襲ってきたんだ。探す暇もない」
「ワカリマシタ。データヲ残シテ、寝ルノハドウデスカ?」
「そうだな……」
私は疲れた体を起こし、機体後部で今日見たことを記録することにした。
いつの間こんなに疲れたのだろうか、必死で走って、そんなものも気にしていられなかった。
探検1日目……今日は忙しい日だったな。とりあえずピクミンを見つけることが出来た。
それだけでも今日は大きな意味がある日だ。しかし謎なのは赤ピクミンがあの地域にいたことだ。
なぜ苦手な溶岩が流れる地にいたのだろう。明日降りて、それを確かめる必要もある。
それに、赤オニヨンを探す必要もある。今は赤ピクミンが10匹程いるが、もうちょっと増やす必要がある。
そしてチャッピーだ。あのチャッピーはなんなのか。皮膚組織の破壊がひどかったが、あの体のつくりはイヌムシ科であろう。
大きさはヤキチャッピーより大きく、背中は溶岩で覆われていた…マグマチャッピーとでも名づけておこう。
マグマチャッピーは明日もあそこにいるのだろうか。
明日も降りてみよう、真下に広がる元ねむりの谷であった、灼熱の火山地帯に……
最終更新:2012年06月23日 20:51