元ねむりの谷、灼熱の
火山地帯に降りた……こうやってまた一日が始まる。
今日するべきことはいくつかある。マグマチャッピーの調査、赤オニヨンの探索、そしてピクミンを増やすことだ。
赤ピクミンは溶岩に対しては無力だ、15匹とも連れて行く必要は無いだろう。
「ドルフィン号、赤ピクミンを頼む」
赤ピクミンを10匹残し、5匹だけ連れて行くことにした。
緊急ランプの電源を入れ、着陸地点を後にした。
昨日、マグマチャッピーと遭遇した地点だが……特に異常はない。
マグマチャッピーはどうやらどこかへ行ってしまったようだ。調査したかったが残念だ。
となると、次にすることは赤オニヨンを探すことだな。
「赤ピクミン、君達のオニヨンはどこだい?」
赤ピクミン達は私を見るばかりだ。一瞬、向こうのほうを指差したようにも見えたのだが、
果たしてそれは赤オニヨンを指差したのか、それとも何の意味もない動きなのだろうか、
そもそも彼らは私の言葉を理解しているのか、知能はあるのか、いろいろと謎である。
考えていては、仕方が無い。とりあえず彼らが指差した方向へ向かうとしよう。
ピクミン達が指を指した方向へ向かうと、謎が二つ解決された。マグマチャッピーがいるのだ。
しかし、死体となっている。それを赤ピクミンが運んでいる、この先にオニヨンがあるということだ。
やはりピクミンのあの動作は……私の言葉を理解していたということか
「赤ピクミンじゃないか、どうやってマグマチャッピーを倒した?」
私の言葉など聞かないで必死にマグマチャッピーの死体を運んでいる。
そうか、この子達は私の隊列にはいない、今は野生のピクミンだ。
とりあえず赤オニヨンに着くまではこのままにしておこう。野生のピクミン達を私を睨んでいるが、攻撃してくる気配は無い。
しかし、なぜこの子達はマグマチャッピーを倒せたのか……昨日の戦いを私は見た。
マグマチャッピーに襲い掛かったピクミン達は燃えてしまった。
「ピクミン、なんで……」
質問をしようと思ったが、やめておいた。ピクミン達が私の言葉を理解しているかどうかはまだ分からない。
それに、ピクミン達の言葉を私は理解できない。例え彼らが私に倒した術を説明しても、私はそれを知ることはできないのだ。
数分歩くと、外の気温が下がっていることに気づいた。この完全防備の宇宙服を通してもそれが分かる。
赤ピクミン達は気温が比較的低いこの地点にオニヨンを着陸しておいたのだろう。
小さな丘を超えると、そこにはあった。赤オニヨンである。
「赤オニヨン……やっとみつけた」
野生のピクミン達はマグマチャッピーを赤オニヨンに吸収させた。するとオニヨンは十数個の種を吹き出した。
ピクミン達はそれを必死に抜こうとしている。手伝ってあげよう。
「私も手伝うよ」
野生のピクミン達は私を不思議そうに見ている。敵か味方かよく分かっていないらしい。
途中からは私を信頼し始めたのか、一緒に種を引き抜き始めた。
しばらく経つと全ての種を引き抜くことができた。ここで笛を吹いてみよう。
「よかった……着いてきてくれるんだな」
野生のピクミンはコミュニティーを作っているようだったが、部外者である私の命令をしっかり聞いてくれた。
私の隊列の中で新たなコミュニティーを作成するのだろうか。しかしなぜ野生でも私の笛をしっかり聴いてくれるのか
前回の探検では、私のことを覚えてくれていたピクミンは着いてきた。だが今引き抜いたピクミンは完全な野生である。
進化のどこかで私の笛の命令を聞くようになったのだろうか、それも解明しなければならない。
「赤ピクミン、君達は何故あのチャッピーを倒せたんだい?」
赤ピクミン達は私を見るだけだ。さぁどうすればいい、野生のピクミン達にとって今は私がリーダーだ。
私がなにか命令をしないといけないが、地形がよく分からない。
分かったのはマグマチャッピーとここの位置ぐらいだ。マグマチャッピーは元々ダンゴナマズがいた場所だ。
水が溜まっている場所に、今は溶岩が流れている。
次にこの赤オニヨンがある場所。それは元々ヤキチャッピーのいる場所のはずだ。
ここであることに気づいた。
「マグマチャッピーは元々ヤキチャッピーだったのかな……」
位置的には合っているはずだ。それに姿も似ている。とりあえず今の段階ではマグマチャッピーはヤキチャッピーの亜種ということにしておこう。
「さてと……赤ピクミン、この近くに仲間はいるのかい?」
あの時と同じように、赤ピクミン達はある一定の方向を指出した。前回と一緒ならば、向こうになにかあるはずだ。
今はピクミンを信じるとしよう。30匹ほどを連れ、向こうに見える丘を登る事にした。
昨日と何かが変わったのだろうか、気温は昨日より低くなっている。マグマチャッピーが一匹死んだだけだが、これほど変わるものなのか
自然界の中で虫が一匹死のうとそれほど影響は無い。だがこの星はそうではないのかもしれない。
「しかし何故だ……原生生物がいない」
マグマチャッピーの声とは別の声は昨日聞いた。他の原生生物もいるはずだ。
ねむりの谷にはアカコチャッピー、アカチャッピー、ダンゴナマズ、フタクチドックリの幼虫など、さまざまな種類がいた。
その内確認できた種類はいない。マグマチャッピーは今の段階ではヤキチャッピーの亜種と考えているが、それ以外に過去にいた生物の面影は無い。
「皆どこへ消えたのか……」
ふと口に出したが、その通りだ。原生生物はどこへ消えたのか。
溶岩の中からダンゴナマズぐらい出てこないだろうか、マグマナマズとでも名づけてあげよう。
私はなにを期待しているのか、この惑星のピクミン以外の生物は怪物ばかりだ。
遭遇なんてしたくないが……、こうやって出てこないと逆に不安になってくるとは、私もこの惑星に慣れた者だな
「こういう人だから、調査員に選ばれたんだな」
そうこうしていると、着陸地点よりかなり離れた地点まで来ていた。
そのおかげで火山地帯の地形データを手に入れることができた。ねむりの谷の地形データと照らし合わせると……
「なるほどな、よく似てる」
ここまで来て正解だった。
しかしピクミン達はまぜ私をここまで案内したんだ。やはりあの腕の動きは意味の無い動作なのだろうか……
なにかがここにあるのか、それともないのか。
「オリマーサン!大変デス!」
「ドルフィン号?どうしたんだ」
「時間デスヨ!」
私はなんというミスをしたんだ。時間を忘れるとは、私もまだ未熟だ。
ここまで来るのに半日以上かかった。日没までにドルフィン号に帰るのは不可能だ。
さぁどうするべきなんだ。
「ドルフィン号こっちに来れるか?」
「無理デス。安全ナ着陸地点ガアリマセン」
「分かった、今すぐそっちへ帰る」
と言ったものの、すぐには帰ることなど出来ない。まずはここの探索をしたい。
ピクミン達を信じよう、彼らが指差したこの場所になにかがある。
この場所はどうやら溶岩が固まってできた場所のようだ。ねむりの谷の着陸地点があった場所だ。
ここのどこかに、なにかがあるのだろうか。地面を触っても、他の石や岩とはそれほど違いはないようだ。
「ピクミン?」
いつのまにピクミン達は私の隊列から離れたのか……一箇所に集まってフリー状態になっている。
あそこになにかあるのだろうか。
近づいてみるとそこには小さな窪みがあった。そしてピクミンの葉が地面から伸びている。
「これは!?ピクミンなのか?」
やはり赤ピクミン達は私の言うことを理解していたのだ!
あの手の動作も、今回のこのフリー状態も、しっかり私の話を理解しているという証拠だ。
何度も共に冒険をしてきたピクミン達だが、この3度目の冒険で新たな事実を発見することができた。
それと同時に、感激を覚えた。今まで言葉が通じないと思っていたピクミン達が、私の話を理解していたのだ。
「これを……抜けばいいのかな?」
ピクミン達は頷いた。これも私の言葉を理解しているから行える動作だ。
ピクミン達に従い、私はこの葉を抜いた。
「オニヨン!? オニヨンの種なのかこれは」
ピクミンの謎を解明した次はこれだ。なんとオニヨンの種である。
種はみるみる大きくなり、私の目の前で脚を生やしあっという間に自立した。
なぜだろうか、一度目の遭難のときはこんな種など無く、地面からオニヨン自体が飛び出た。
しかし今回は違う、新しいオニヨンが目の前で生まれたのだ。赤色のようだが少し違う……紅色のようだ。
「紅オニヨンか……何故紅オニヨンはこのように地面から出たんだ?」
紅色のオニヨンは今回で始めて見る。オニヨンが生まれたということは、今まさに紅ピクミンが誕生したということなのか。
つまり、一度目の赤、青、黄オニヨンが地面から飛び出したのは、ただ休んでいただけかもしれない。
この紅オニヨンは休んでいたとかではなく、生まれたのだ……ということにしておこう。
「紅ピクミンの種は……これか?」
目の前にいつの間にか種があった、さっそく引き抜いてみよう。
目の前に現れたのは、紅色のピクミン……紅ピクミンと名づけよう。背中から伸びる管のような器官が見える。
この種類がどのような能力を持っているかは分からない。時間をかけて解明するとしよう。
とりあえず紅ピクミンにオニヨンで上空へ逃げろと命令させオニヨンに帰した。
オニヨンはしっかり上昇した、しっかり命令を聞いてくれたらしい。
あとは私達だ、ここからドルフィン号へと帰らないといけない。ピクミン達には悪いが、日没後も動いてもらわないといけない。
「行くぞ赤ピクミン」
丘を一つ超えたが赤オニヨンはまだ先だ。日は既に落ちた。辺り一面に原生生物の鳴き声が轟く。
やはりマグマチャッピーだけではなかったのだ、比較的涼しい夜間に活発になるらしい。
「あそこに行く間に……遭いそうだな」
まさかこんなことをしないといけないとは……
敵が向こうを向いた瞬間、私はピクミン達と全力で走った。
だが……そう上手くいかないものである。私達の目の前に、ダンゴナマズのような生物が現れた。
昼間なら特に問題ない、だが夜間である。生物達の動きは、昼間よりも俊敏なのだ。
「品定めをしているのか……襲ってこないのか?」
そう思った、だが始めてみる生物相手に私の予想など意味は無い。
突然背中から発火し、私達に襲ってきた。今は、逃げることしか出来ない。
「走れ!走るんだピクミン!」
必死に追いかけてくるが、今にも敵にやられそうだ。
「!?」
いつの間にいたのか……そこには大きく口を開けた巨大なチャッピー
そう、マグマチャッピーが待ち構えていたのだ……
そのときだ、マグマチャッピーが暴れ始めたのだ。
いや、もがいている。ピクミンに攻撃されているかのように……ピクミン!?
「黒…ピクミンなのか?」
炎の中に確かに見えた、黒いピクミンである……
溶岩も炎ももろともせず、果敢にマグマチャッピーと戦っている……
「そうか……あの晩、マグマチャッピーを倒したのは、このピクミンだったのか」
最終更新:2012年06月23日 20:51