第一章 第五話 テスト

咲「教官、これ受け取ってください。」


そういって渡したものは、先ほど倒したモンスターの核だった。

モンスターも、ただ魔力に意志があるわけではない。魔力に意志が宿るにしても、ただ集まればモンスター、では危険すぎる。

なにがあっても破壊することができない、魔樹という樹がある。その樹の種子がモンスターの核となる。

元を断つことが出来ないので、産まれたモンスターを狩り続けるしかない。そのための戦闘技術育成学園だ。

教官「・・・色からして危険度A・・・まさか、倒したのか!?」


咲「そうですけど、マズかったですか?」

教官「いや、大丈夫だが、お前なぜ無傷なんだ?教官レベルでも無傷では倒せないレベルの敵のはずだが・・・」

教官は、間違ってはいない。確かに教官試験の最終課題は危険度Aランクのモンスターとの戦闘。

だが、無傷で達成したものはいままで一人もいない。

つまり、咲の能力は『異常』なのだ。

まず、二つ以上の能力を持つ人間など、いない。

あの身体能力も、能力なしにはあり得ない。そんなことをすれば、肉体が崩壊する。能力の使用は生命力を使用する。

一つの能力を持つだけで特別なのだ。二つの能力を持つことができる人間は、歴史上一人もいない。

ならば、咲が人間ではなければ?話がズレた。修正しよう。

教官「本当に、お前が倒したのか?」

あれこれ考えるよりも聞くほうが早いと判断したようだ。

咲「はい。そうですけど、どうかしましたか?」

さらりと答えられた。この様子だと、評価のために嘘をついているのではなさそうだ。

雷「横から口を出して申し訳ないのですが、テストはどうなっているのでしょうか?」

教官「ん?ああ、テストは行う。モンスターの駆除が終わってからだ。」

咲「ねぇ、雷。こっそり駆除手伝っちゃおうか?」

雷「はぁ!?何言ってんだよ!またAランクの・・・って、お前はいいよな。オレは死ぬんだぞ。逃げることもできず。」

咲「いいからいいから。さあ、行くぞー。」

雷の腕をつかみ、教官の視界からはずれると、咲が「屋上」と呟いた。

その瞬間、周りの景色が変わった。見た目から屋上のようなところとわかる。

雷「おい!人の話は聞けよ!ってかよぉ・・・お前いくつ能力あるんだよ?」

咲「いっぱいあるよー。他にも危険なものからふつーのものまでたくさん。」

常識が分かっていない咲の様子に脱力してしまいそうになるが、踏みとどまる。

雷「んで、どうすんだよ?」

咲「いちいち探してつぶすほど強くなさそーだしなー。数もいるんでしょ?だったら一気に倒しちゃおうよ。」

咲が何にしようかなー、とお菓子でも選ぶように考え始めたところで完全に雷は脱力した。

咲「よし、これにしようかな。第一プロセス中止。第二プロセス即時起動。宇宙創造を発動。」

空が一瞬だけ星空に変化し、いつも通りの空に戻った。

だが、いつもと違う点がふたつある。

まず、いくつもの星が浮かんでいること。そして、体が異常に軽いことだ。重力が小さくなっている。

咲「雷にも効果反映しておいたから、頑張ってね。すぐ終わるけど。」

そう言い残し、咲は上空へと跳びあがる。

雷「状況に適応しないといけないな。んじゃ、まぁ、手伝いますか。」

ポジティブに考え始めた雷は、重力の小さな抵抗を押し返し、咲同様跳んだ。

咲「さっさと片付けちゃおうかなー。どれを使おうかな?ウラヌス、プルート、うーん・・・ソルでいいや。」

ふたつの星が動こうとしたとき、それを押しのけて巨大な星が現れた。

ソル、その名の通り太陽。咲の使った能力の一部だ。

ソルが咲の真上に移動した。咲は右腕を突っ込む。

咲「標的確認、完了。総数73体。プロミネンス・アロー。」

少し間をあけてからソルに変化が表れる。無数の火炎弾が射出される。

不規則に見えるが、しっかりと標的に向かって飛んでいく。

ぴぎゃっ!と哀しげな悲鳴がそこらじゅうから聞こえる。

咲「ソル、もういいよ。ルナ、おいで。」

ルナ、と呼ばれた星-月が来る。

咲「核回収するから、引力で引き寄せて。学校はダメだからね。」

次の瞬間には核は全て咲の周りにあった。ルナはもう離れていった。

咲「さーてと、雷も何匹か潰してくれたみたいだし、戻ろうかな。」

集会所に戻った瞬間、校長に「春樹 咲!光陰 雷!てめぇらどこいってやがった!」

と、フルネームのおまけ付きで全校生徒の前で怒鳴られた。

咲「すみません。教官の静止を無視し、ドグマフの駆除を行いました。光陰 雷は、共犯ではなく、私が無理矢理連れていっただけです。彼に罪はありません。罰ならば、私だけに与えてください。」

あまりにも潔く、はっきりとそういったので、校長も一瞬だけたじろいだ。

校長「度胸あるな、お前。処罰は保留だ。とりあえず核を回収する。神田、受け取れ。」

神田「わかりました。春樹 咲、光陰 雷、核を渡しなさい。」

数の多さに少し驚いたようだが、回収してどこかへ持って行った。

校長「他のやつらはもう寮に戻っていいぞ。」

咲「え、ここって寮制なんですか?荷物持ってきてないんですけど・・・」

そんなこと聞かされていない。当然、用意もしていない。

校長「制度も理解していない、事件は起こす。気に入った。お前、どうせ反省文なんぞ書くよりも化け物との殺し合いのほうがいいだろ?」

わかっているようだ。理解してくれるのはありがたい。

咲「罰は、なんでしょうか?ご察しの通り、そうしていただけるとありがたいですね。」

校長「やっぱりおもしれぇやつだな。んじゃ、Aランク10体くらいでどうだ?まぁ、決定権はこっちにあるからな。おい、波間、用意しとけ。」

波間「ですが、校長!一年生がAランクと戦えば、10体いなくとも、1体で死にます!」

普通ならば、そうだろう。だが、咲ならば大丈夫だ。どちらかというと、反省文を書かされたらそれはそれで困る。ここで校長の意見を押しておかなければ。

咲「大丈夫ですよ、教官。この処罰を受けます。どちらに向かえばよろしいでしょうか?」

校長「あー、んじゃ、波間。用意するついでに連れてけ。」

波間という教官に連れられて、咲はどこかの教室へと移動した。


  • 次からはセリフの前の名前消します。 -- (tensyu) 2009-02-27 16:19:51
  • おもしろいですね。次回作期待してますよ。 -- (かっちー) 2009-03-01 23:00:27
  • 題名と中身かんけぇねーw -- (tensyu) 2009-03-03 16:00:39
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最終更新:2009年03月03日 16:42
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