第1話 〔思いがけない事故〕
ココはアコサリ星の都市、レモネード市。人口300万人の政令指定都市で、スグ隣には首都のレウンドン市がある。
タバサ『お~い、ルク。ちょっと来てくれ~』
ルク『わかった。今行く』
俺は祖父のタバサに呼ばれ、階段を降り祖父の部屋へ向かう。廊下の壁は白く清潔感があふれていて、所々に絵が飾られている。俺は祖父の部屋に着き、ノックもせずにドアを開けた。
ルク『どうしたんだ?じいさん?』
タバサ『ルク、実はな…おじいちゃん持病が悪化してしまって……もう…ダメみたい…なんじゃ…』
ルク『え!?そんな…』
タバサ『お前は…その技術を生かして…いつか立派なロケットを…作るのじゃぞ……』
祖父は動かなくなった。
ルク『おいちょっと待てよ…じいさん…じいさぁぁぁん!』
俺は祖父にすがって叫んだ。次の瞬間
タバサ『なーんてな♪ワシがそう簡単に死ぬとでも思ったか?第一ワシには持病などないぞ。ハハハ、やはり頭の良いお前を騙すのは実におもしろ…ごぶっ!?』
俺の蹴りが祖父の至る所に勢い良く飛んでいった。
ルク『騙すのもいい加減にしろ―ー!』
タバサ『おい!頭蹴るなよ!頭はマズいって!…あぎゃーー』
ハンパ無い生命力を持ったこのじじいはいくら乱暴に扱っても死ぬ事は無いだろう。
ルク『くだらない。俺は作業の続きをするよ』
俺は祖父の部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
タバサ『待たんかルク、お前に頼みがあるのじゃが…』
ルク『こんなことだけで呼び出したワケじゃ無かったか。で?頼みって何?』
タバサ『明日サコザエ星にいるワシの友達にこの包みを届けて欲しいんじゃ。まあ世間でいうおつかいってヤツよ』
ルク『え―!?自分で行けよ。元気なんだから』
タバサ『いや、実はな…おじいちゃんは明日自治会の会議があるから行けないんじゃよ。だから頼む!』
ルク『しょうがないな…メンドいけど行ってやるよ』
タバサ『ルク、ありがとう。ちょっと待ってろ。今渡しておく…』
祖父は机の引き出しからヘンな包みを取り出した。
タバサ『これじゃよ』
ルク『ねぇじいさん。なんか中からカチカチ音がするけど気のせい?』
タバサ『ああ、気のせいだぞ。中身は時限爆弾とかじゃないから大丈夫じゃ。あ!ルク!その包みにあまり衝撃を与えるなよ!?』
時限爆弾以外の何物でもないだろ…とツッコミたかった。
翌日
俺はガレージにある俺の愛機、スワン初号機に乗り込んだ。祖父が見送りに出てくれている。
タバサ『ルク、頼んだぞ。腹が減ったからといって包みの中身を食べるなよ』
ルク『食うワケ無いだろ!?』
タバサ『ハッハッハ。じゃあ気をつけてな』
最後はわりとマトモな事を言うな…
ルク『ああ、じいさんも留守番頼んだよ。泥棒入れたらブン殴るからな~』
タバサ『覚悟してるよ』
俺はエンジンをかけた。
スワン『サァ、出発スルヨ~』
スワン初号機は人のようにしゃべるロケットなのだ。意識して作ったつもりは無いが…
ルク『よーし!出発!』
スワン初号機は勢い良く天へと舞い上がった。
この時はまだあんな事が起きるなんて想像もしていなかった……
そして数時間後…
ルク『ふぅ…やっと終わったな』
俺は祖父から頼まれたおつかいを終え、アコサリ星に戻る途中だ。周り一面にキレイな星々が輝いている。
スワン『ねぇ、ルクサン』
ルク『ん?どうした?』
スワン『タバササンは何で爆弾なんか送ったんだろう?』
ルク『う~ん…俺にも分かんないよ。あの人のやる事は…』
スワン『うん、理解できない所があるよね。それにしてもあの受け取り人、かなりガラが悪かったね。まるでヤクザみたいだったよ』
ルク『っていうかヤクザで間違いないだろ?拳銃持ってたし。』
スワン『ルクサン!前!前!』
ルク『ん~どした~……ってえええぇ!?』
前を見ると、少し大きめの隕石が近づいて来ていた。
ルク『ちょ…マジかよ!?……スワン!右に大きく曲がるぞ!』
スワン『もうやってるけど間に合うかどうか分からないよ!』
スワンは右に大きく迂回。なんとか隕石をかわす事ができた。
ルク『ふぅ~危なかった…』
スワン『でも何でいきなり…今まで隕石の気配なんかしなかったのに…』
ルク『話に夢中で気付かなかったんじゃないか?』
スワン『いや~…そんなはずは…』
俺達はその隕石を眺めていた。しかし、しばらくして隕石の動きがピタリと止まった。
スワン『あれ?止まった…』
ルク『何なんだあの隕石…』
次の瞬間、隕石が方向転換をした。物凄いスピードでこちらに向かって来ている。
ルク『えええ!?あり得ないだろ!?』
スワン『トリアエズ逃ゲヨウ!スピード全開!』
スワンは全速力で飛び立った。後ろから隕石が追ってくる。それも物凄いスピードで、徐々に追い付かれているのが分かる。カーブしても一回転してもしつこく追ってくる。
ルク『スワン、頑張れ…』
スワン『ナンダヨコノスピード…追イ付カレル…』
そしてついに…
ドゴーン…
衝突…。俺達は真っ逆さまに落下していった。スワンの全身から煙が出ている…。その後の事は覚えていない…。あまりの衝撃で気を失ったのだろう。
……………………
ルク『う…う~ん…』
気が付くと俺は野原に倒れていた。
ルク『ハッ!?ココはどこだ!?』どうやら星に墜落したみたいだ。空を見れば太陽が東にある。つい先程日が出たばかりと見た。
ルク『そうだ!スワン!どこにいるんだー!?』
俺は辺りを見回した。すると後ろにボロボロの状態で地面に刺さっているスワンの残骸があった。
ルク『ス…スワン!?おい…大丈夫か!?』
返事は無い。俺はスワンの残骸を調べてみた…
ルク『……そんな…』
スワンの重要なパーツのいくつかが無くなっていたのだ。スワン全体のエネルギー源であるダイナエンジンも無かった…。きっと落ちていった時に散らばってしまったのだろう。
ルク『クソッ…これからどうすれば…』
俺は考えまくった。このままスワンと一緒に死のうとも思った。
『いやいや、何バカな事考えてんだ俺…』
考えた末、俺はスワンの失われたパーツを探す事にした。あても無いのに…。それにパーツ自体はとても大きく俺一人で運ぶ事はまずムリだというのも解っていた。しかし、さすがの俺でもこの状況ではこんな事しか思い付かなかった…。
ルク『よし、ちょっと探索してみよう』
俺は周りを再び見回した。噴水、ベンチ、滑り台、ブランコなど人工的なものがたくさん見られた。
ルク『……ココは公園のようだな…』
しかし人はいない。まだ早朝だからだろう。俺はこの特徴の無い公園を探索する事にした。
ルク『…この公園……昔行ってた公園によく似てる……』
相当小さい頃だったので全然覚えていない。ただそんな気がするのだ。30分ほど探索したが、何も見つからない。
ルク『ココには無いようだな…街の中を探索してこよう』
俺は公園の出口へと走った。
最終更新:2009年02月18日 11:56