第2話『GOST TOWN』
……静かだ………
俺は今街のド真ん中を歩いている。それなのに人が一人もいない。早朝だからとかいう問題ではない。その理由は街の中に入れば解る。
ルク『なんだよコレ…めちゃくちゃだ……』
電柱や信号機などが無惨に壊されていて、建物もボロボロだ。まるで何かに襲われた後のような感じだった。
しかし、やはりこの街の面影……昔どこかで見たような気がするのだ。俺は街を歩きながら考えた。しばらくして、俺ははっとし、足を止めた。
ルク『ま…まさか……ココは…マッドシティ!?』
マッドシティとは俺が生まれ育った街である。5歳ぐらいまで住んでいたが、何かの都合で父の故郷、アコサリ星のレモネード市に引っ越したような覚えがある。
もう何年も前の事だからよくは覚えていないが、マッドシティは俺が今いるこのゴーストタウンと似ている気がするのだ…。
ルク『ハハ…もしココが本当にマッドシティだったら今の俺はオリマーさんと同じ状況だな』
そう、マッドシティはピクミン星にある。
ピクミン星とは俺が最も尊敬している伝説の宇宙飛行士、オリマーが約500年前に発見した星の事だ。ピクミン星という名前の由来はオリマーさんと共に生活をしたとされている『ピクミン』という生物から取られたという。
オリマーさんも隕石にぶつかってピクミン星に不時着したのだ。もしココがピクミン星なら今の俺の状況はオリマーさんと同じ…。光栄だ……とか言っていられる余裕は無い。このコトは帰ったらじっくり考えようと自分に言い聞かせ、再び歩き出そうとした。
しかし次の瞬間、背後から変な鳴き声が聞こえた。俺は少し驚き、おそるおそる後ろを向いてみた。すると…
生物『ギャオーー!』
ルク『うわ…何だよこのトカゲ!?』
そこには体長30ミリ程の大きな緑色のトカゲがいたのだ。トカゲのクセに尻尾が短い。切られた形跡はないようだ。その変なトカゲはいきなり襲い掛かってきた。
ルク『ってちょっと待て!?何……ぐっ…』
噛みつかれた…。俺はトカゲを振り払い、全速力で逃げた。当然トカゲも追いかけてくる。しかしトカゲのクセに何故か足が遅かった。
ルク(よし、楽に逃げ切れるぞ)
そう思いながら走っていた。しかし、いきなり前方にさっきのトカゲが現れたのだ。
ルク『そんな…まさかコイツ瞬間移動ができるのかよ!?』
俺は後ろを振り返った。遠くに俺を追っているトカゲの姿が見える。瞬間移動では無い事は分かったが、更に恐ろしい事実が判明した。
ルク『アイツ…一匹だけじゃない…』
とりあえず俺は今前後から挟み撃ちにされている。左右の逃げ道を探そうと辺りを見回した。すると、いつの間にかトカゲ達に前後左右を完全に囲まれていた事に気付いた。
ルク『な…』
トカゲ達は少しずつ俺との距離を縮めていく。逃げ道も無い…。絶体絶命だ。するとその時、どこからか大きなシャボン玉のような物が飛んできた。そしてそのシャボン玉は俺の目の前のトカゲを包みこんだ。
トカゲ『ギャ―ー―』
トカゲは動きを封じられ、焦っている。他のトカゲ達も一歩退く。
?『さあ!今の内に逃げて!!』
シャボン玉と格闘しているトカゲの後ろで一人の少年が手を振っている。目が赤く、髪の毛は白い。手袋を着けているが、何故か左手だけだ。俺は少年のいる方向へ走り出した。やはりトカゲ達も追って来る。
ルク『うわ…また追ってきた!』
少年『任せなよ!』
少年は手袋の着いている左手をトカゲの方に向けた。すると、手のひらから小さなシャボン玉が多数出てきた。そして一匹のトカゲにまとわりついて、一気に破裂した。
トカゲ『アギャーー』
どうやら痛いらしい。しかし大したダメージでは無さそうだ。
少年『まだまだ~!』
少年はシャボン玉を出しまくってそのトカゲにダメージを与え続けた。
トカゲ『ギャオー…』
そのトカゲは力尽きた。死んでるようだ…。他のトカゲたちはそんな事も気にせずこちらへ向かってくる。
少年『え!?数が多いよ…』
少年は力を込め始めた。すると、先程の様な大きなシャボン玉が複数出てきた。そしてトカゲ達を包みこみ、動きを封じた。
少年『よし、今の内に逃げよ!』
ルク『ああ』
俺たちは急いで逃げ去った。
俺たちは街の路地裏に逃げ込んだ。そこは暗く、じめじめしていて嫌な所だが、トカゲ達から隠れるのには最適だった。奥の方には黒くて大きな蜘蛛の巣型のゲートらしき物があるが、あまり気にしないでおこう。
少年『ふう…何とか逃げられたね。キミ、大丈夫?』
ルク『ああ…お前のおかげで助かったよ。ありがとう』
少年『あはは、どういたしまして』
ちょっと照れくさそうだ。
ルク『そういえば自己紹介がまだだったな。俺はルク。アコサリ星人だ。お前は?』
少年『え!?キミもアコサリ星人なの!?。実は僕もアコサリ星人なんだ。僕はミレア。好きな食べ物はクッキーで嫌いな食べ物は枕カバー、好きなてんびん座はてんびん座で好きな言葉は自画自賛だよ』
ルク『なんかツッコミ所満載だな!?』
枕カバーは俺も嫌いだ。
ルク『…ところでココは一体どこなんだ?』
ミレア『ココはピクミン星のマッドシティって所だよ』
俺はそれを聞いてがっかりした。自分の故郷が滅びたなんて信じたく無かった。が、受け止めるしか無い…。コイツから色々聞いてみる事にする。
ルク『やっぱり…。この街で一体何があったんだ?』
ミレア『…2日前まではこの街も平和だったよ…。でもいきなり誰かがキョウリュウモドキ科の生物を率いてこの街に攻め込んで来たんだ。』
キョウリュウモドキ科の生物…さっきの変なトカゲ達の事か。
ルク『警察や自衛隊はいなかったのか?』
ミレア『いたけどトカゲ達の数が多すぎて全員やられたよ…。街の人達は町長が臨時ロケットに乗せて非難させたから全員無事だけど…』
ルク『ちょっと待て。お前は非難しなかったのか?』
ミレア『しなかったっていうか逃げ遅れてロケットに乗れなかったんだよ…。それで助けが来るのを待ってるんだ。ところでルク君は何でココにいるの?』
俺はこれまでの事をミレアに説明した。
ミレア『へ~…じゃあ僕と同じような状況なんだね…。これから一緒に行動しない?』
ルク『そうだな…』
ふと気付いた…。心細さが半減している。
ミレア『ねえ、ルク君の宇宙船ってエンジンがあれば動くんだよね?』
ルク『ああ、なんとかな。だがエンジンだけじゃ宇宙に行くのは無理だよ』
ミレア『十分だよ!!』
ミレアが目を輝かせて言う
ルク『な…どうしたんだ?』
ミレア『この星は夜になると生物が活発化するんだよ。だから地上で寝る事はできないんだ。僕だってこの2日間寝てないよ。そこでロケットに乗って空ですごせば安心かなって思って…』
そういえばそうだ。オリマーさんの日誌にも書いてあった。彼も危険だから、夜はロケットに乗って空で過ごしていたらしい。
ルク『じゃあ日没までにエンジンを見つけないとヤバいな…よし!探そう』
ミレア『うん!』
ミレアはポケットから小型のレーダーを取り出した。
ミレア『貸してあげるよ。このレーダーがあればこの辺の地理が分かるよ。』
ルク『悪いな…』
俺たちは路地裏から出た。
俺はレーダーを見た。ある道のド真ん中にある大きな紙袋のせいで公園より北部のエリアへ行く事が出来なく、行動できる範囲は非常に少ないという事が分かった。それにも関わらずトカゲがうろうろしている。
できるだけトカゲに見つからないように移動しているが、見つかってしまう事もある。まあ見つかった時はミレアのシャボン玉攻撃でやり過ごしているが…
ルク『それにしてもスゴいな…そのシャボン玉の手袋…』
ミレア『シャボン玉じゃないよ!バブルボールだよ!』
ルク『どっちも変わらないだろ…』
すると、ミレアは手袋を外し始めた。そして、左の手のひらを俺に見せた。俺は自分の目を疑った。
ルク『な…何だよコレ…』
ミレアの手のひらには、丸い宝石の様な物が埋め込まれていた。そのサファイアの様な石は、青い輝きを放っている。
ミレア『僕の家系の人たちは手のひらにこんな石が埋まってるんだ。生まれた頃からね…。この石の力は個人個人によって違うみたいでさ、僕の場合は特殊なシャボン玉が出せるんだ』
ルク『スゴいな…。ところでお前…今自分でシャボン玉って言ったよな?』
ミレア『あ…』
大丈夫か…コイツ……
ルク『なぁ』
ミレア『ん?どうしたの?』
ルク『お前はこの星に来て何年くらいなんだ?』
ミレア『う~ん…8年くらい』
結構長い。コイツなら俺がずっと疑問に思っていた事の答えを知っていそうだ。
ルク『なぁ…ピクミンって実在するのか?』
俺は思いきって聞いてみた。すると………
最終更新:2009年02月18日 11:58