気がつくと、私は森の中に一人、佇んでいた。
「ここは・・・。」
言いかけて自分のした事を思い出す。
初めて独りで世界を創造することを試し―――成功、したのだ。
「良かった・・・。」
ほぅ、とため息を吐く。
失敗したら、何がどうなるのかもわからない。成功して、本当に良かった。よく見たら、自分の服装も変わっている。鉄で出来ている割には軽い、不思議な鎧だった。腰には銃が二丁、ぶら下げられている。背中には短い槍が背負ってある。
と、自分の姿を確認してる私に何かが流れ込んでくる。多分、世界が私にこの世界の情報、この世界で生きるための力を私に渡しているのだろう。一度、大地と一緒に世界を創ったときに経験していたからたいして驚きはしない。早速、いま流れ込んできた情報を使い、自分の経歴を調べてみる。
目をつぶると目の前に資料の紙のようなものが浮かび上がってくる。
さて、どのようになっているのか・・・。
氏名 『風路 風香(かざみち ふうか)』
性別 ♀
年齢 14
武器 銃 二丁 短槍一つ
魔法の適性 有
職業 用心棒
参考 母、父との三人暮らしだったが金品目的の盗賊に両親を殺される。その恨みのせいか女用心棒として現在も活動中。
・・・予想以上に物騒な世界だと感じた。
用心棒が必要な上、盗賊が人を殺し金品を奪っていく。これは物騒としか言いようが無いだろう。弟が昔やってたゲームを基に創った世界だけど・・・こんなに物騒だったかなぁ?
「ま、いっか。」
目を開き、世界から渡された情報を頼りに、街へ向かって歩いていった。
―――港町、ハジマ
夕暮れ頃にはこの街に着いた。出発が昼だったから結構早かったかな?
とりあえず宿を探すと、簡単に見つかった。けれど、問題が一つ、
お金が、ない。用心棒の仕事をするにしても、この時間から契約しても出発は明日になるし、なにより自分の経験が少ないからまだ無理だ。
「・・・危険な賭けだけど、やってみるしかないかなぁ・・・。」
お金を手に入れるため、あまり乗らない気持ちを無理やり盛り上がらせるかのように走って酒場に向かっていった。
酒場では、船乗りと思わしき男たちが酒を飲みながら、雑談をしていた。濃いアルコールのにおいがつんと鼻をつく。辺りを見回し、赤いスカーフを腕に巻きつけている男を見つけた。
この赤いスカーフは『決闘士』の証である。
決闘士は自分の腕に自信のあるものがなり、挑戦者と決闘をする。決闘士が勝てば金目の物を、挑戦者が勝てばお金を相手からもらうといういわば賭けである。なめられると勝負もしてくれないようだから、とりあえず口調でごまかしておこう。
「ねぇ、アンタ。私と決闘しないかい?」
決闘の申し出をすると、男は私の姿を驚いたように見、それからあざ笑うかのような視線を向けてきた。
「ハッ、やめときなお嬢ちゃん。さっさとママのところにでも帰って泣きついていな!」
どっと、周りから笑いが沸く。
「あいにく、なきつけるような親はとっくにいない。それに、私は用心棒をやっている。それで十分だろう?それともあんたの言うこんなお嬢ちゃんにおびえてるのかい?」
男の目に怒気が見えた。
「よーし、いいだろう。俺が勝った場合はその銃をもらう。両方ともな。」
その言葉が聞こえるや否や、酒場の客たちが机やいすをはじに寄せる。安全と、見物ついでに賭けをするためだ。
「ああ、いいよ。だけどこれは特注物、結構高い。私が勝った場合は金貨30枚をいただく。」
「な・・・金貨30枚?!」
「これをつくるのに金貨40枚もしたんだ。これを賭けるからにはそのくらいはあんたにかけてもらわないと困る。」
金貨一枚で、私がいた世界でのお金で言うと10万はする。
銃のことは嘘はついていない。
「・・・解った。じゃあ始めるぜ?後悔するなよ?」
「ああ。」
背中の短槍を取り、鞘をとる。男は腰から短剣を2本、取り出した。
「じゃあ、・・・行くぜっ!」
掛け声と共に、短剣を投げつけてくる。
それに恐怖を感じる前に、体が勝手に動いていた。短剣を短槍の柄ではじきながら、男に向かって突進する。男はまた短剣を投げ、腰から長剣を取り出す。短剣をかがんで避け、さらに近づく。男は長剣を振り下ろすが、それを短槍の先で弾きあげ、勢いそのままに石突きを腹に食らわせた。男が痛みと衝撃に体を折り曲げた時、その頭に短槍を思いっきり振り下ろした。男はそのままうつぶせに倒れる。その首の真横に、短槍の刃を突き刺した。
「・・・さぁ、負けを認めるか?」
「ああ。完敗だ・・・。」
とたんに周りが騒がしくなった。私に賭けていたのか、興奮して自慢をするもの、賭けに負けてわめき散らすものなどが、酒場を騒がしくしていた。
「ふぅ・・・。」
男から受け取ったお金で5日の宿を手に入れた。
それでもまだまだ金貨は余っている。
初めての命のやり取りを、今思い出すだけでも冷や汗が出てくる。
よく、あんなことが出来たものだ。
とりあえず、これからをどうするか考えることにした。
ゆっくり考えれば良い。時間もお金もまだまだあるのだから。
最終更新:2009年06月17日 17:57