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ここはポケモン達が暮らす小さな町。
この町では多くのポケモンが探検隊を結成している。
町の中心部にある探検隊ギルドを拠点に、様々な場所へ向かい、様々な依頼をこなしていくのが探検隊の仕事だ。
この町の探検隊の中で最も有名で、かつ優秀な探検隊は『イーブイズ』だろう。
結成当時はイーブイだった三匹も、既にフィールはエーフィに、シャドウはブラッキーに、シャインはサンダースに進化している。
彼らは実力があるにもかかわらず、依頼を報酬で選んだりはしない。
頼まれた依頼は全てこなす。これが彼らのモットーであった。
しかし、そんな理想の探検隊でも、初めは失敗をしてしまうこともある。
これは、そんなイーブイズの、ほとんど語り継がれることの無かった、ある失態の話である。

「ふぅ・・・最近暑いわね・・・」
水飲み場で一匹の雌エーフィが水を飲んでいる。
彼女の名はフィール。探検隊イーブイズの一員である。
「ここに居たのか、フィール。新しい依頼入ったぞ。」
ギルドの方からブラッキーのシャドウとサンダースのシャインが入ってきた。
「場所は『滝壺の洞窟』だってさ!それじゃ早速、いつものアレ、やろうぜ!」
言いながら、シャインは懐からサイコロを取り出した。
探検隊イーブイズには、リーダーという概念は無い。しかし、ギルドでの登録や緊急時の判断など、リーダーが必要な場面は少なからずある。そのため、リーダーは依頼ごとに毎回サイコロで決めている。
「俺は5か6でいこう。」
「私は1か2で。」
「じゃ、オレは3か4だな!行っけぇ!」
シャインはサイコロを投げる。
サイコロの示した数は――
「6だわ。」
「って事は、今回のリーダーは・・・」
シャインとフィールがシャドウのほうを見つめる。
「俺か。分かった。」
「それで、依頼の詳細はどうなってるの?」
フィールがシャドウに尋ねる。
「今回の依頼内容は、イーブイの護衛。目的地は滝壺の洞窟地下5階、ヒノアラシまでだ。護衛のついでに、少なくなっている『爆裂の種』の補充も行おうと思うが、どうだ?」
「私は賛成ね。」
「オッケー!そのプランで行こうぜ!」
「地下五階程度なら、道具を集めながらでも十分行けるだろう。出発だ。」
「そうね。行きましょう。」
「よっしゃぁ!そうと決まれば、依頼者連れてくるぜ!」
シャインは依頼主のイーブイを迎えにギルドに走っていった。
「俺たちはいつもの十字路で待っておくとしよう。」
シャドウとフィールはギルド前の十字路に向かった。


「おーい!依頼人来たぜー!」
十字路についてまもなく、シャインがイーブイを連れて歩いてきた。
「それじゃ・・・よろしくお願いします。」
依頼主のイーブイはどちらかと言うと控えめなのだろう。
「こちらこそ。よろしくね。」
「オレたちに任しときゃ、このくらい大丈夫さ!」
「それじゃあ、行こうか。」


「シャドウ!隊列はどうする?」
滝壺の洞窟入り口でシャインが尋ねた。
「そうだな・・・イーブイは俺の後ろについてきてくれ。シャインはその後ろ。フィールは一番後ろを頼む。」
「分かったわ。」
「オッケー!それじゃ出発ー!」
シャドウとシャインは、イーブイを連れて洞窟の中に入っていった。
その時、フィールは下半身のある部分に、ある特有の疼きを感じた。
(どうしよう・・・何だか・・・トイレに行きたくなって来ちゃった・・・)
「フィール!早く来いよー!」
シャインが洞窟の中から呼び掛ける。
「今行くー!」(滝壺の洞窟地下五階だし・・・大丈夫だよね。)
フィールはシャインの後を追い掛けていった。


(うぅ・・・洞窟の中って何でこんなに寒いのよ・・・)
洞窟の中は、直射日光が照りつける地上と比べて十度以上の気温差がある。
その寒い温度は、フィールの尿意を急速に高めていた。
(早く抜けないと・・・漏れちゃう!)
理由は違うが、フィールの前でも焦りが生まれていた。
「くそっ!階段が見つからないぞ!」
「現在地下二階、食料は無し、武器は木の枝二本、道具は爆裂の種が数個だけ、か・・・光の玉ぐらいは持ってきたほうがよかったな。」
「どうする、シャドウ?」
「くっ・・・探すしかないだろう・・・」
刹那、何者かの攻撃がイーブイめがけて飛んできた。
「危ない!」
とっさの判断でシャインが身代わりになる。
「・・・ちっ!油断したか!」
次の瞬間、シャドウが放った木の枝が相手を射抜く。
「今っ!」
間伐を入れず、フィールのサイコキネシスが命中。
対象の敵はイーブイズの猛攻で逃げて行ったようだ。
「大丈夫だったか?」
シャドウはイーブイに尋ねた。
「はい。大丈夫です。あの・・・」
イーブイはある一点を指差す。
「・・・あれって階段じゃないですか?」
イーブイの指す先には、確かに地下へと続く階段があった。
「おぉっ!よく見つけたな!」
「よし。行こう。」
一行は階段を下りていった。


「うー・・・寒い・・・」
シャインがぼやいている。
「確かに早めに抜けないと、体力が持たないな・・・」
フィールの尿意も極限まで高くなっていた。
(終わるまで・・・我慢しなきゃ・・・でも・・・もう漏れそう・・・!)
そんなフィールに拍車をかけるかのような出来事が・・・
イーブイが先程からそわそわしている。
何度か何かを言おうとしていたが、結局何も言わずにいた。
シャドウはそんなイーブイの異変に気がついたらしい。
「イーブイ、さっきからそわそわしてるけど、どうかした?」
「その・・・さっきから言おうと思ってたんだけど・・・言えなくて・・・」
「何でもいいよ。言ってごらん。」
こういうときのシャドウは何処か優しい感じがする。
「・・・トイレ・・・行きたい・・・」
イーブイは顔を赤くしながら小さな声で言った。
「どうする、シャドウ?」
シャインが尋ねる。
「・・・アイテム回収は中止、依頼を最優先で実行する。イーブイ、もうちょっと我慢できる?」
イーブイは小さく頷いた。
「・・・うん、がんばる。」
この展開に、フィールは絶望のどん底に突き落とされたような感覚を覚えた。
(こんな状況で・・・私がもう漏れそうだなんて・・・言えない・・・!)
フィールは既に、大きな波が来れば簡単に壊滅してしまいそうな状況であった。
(こんなところで・・・お漏らしなんて・・・出来ない・・・したくないよぉ・・・)
「階段だ!」
シャインが指差す先には、地下四階への階段がある。
「急ごう。」
しかし、それを遮るかのようにポケモン達が三匹現れた。
「よぉ、なかなかいいモン持ってそうじゃねぇか、おん?」
三匹の頭らしいグラエナがイーブイズに近づいてくる。
(あの顔・・・!)
フィールはギルドにあったお尋ね者の写真を思い出す。
「シャドウ、シャイン、気をつけて!こいつらお尋ね者に指名されてる盗賊よ!」
「・・・悪いが、こっちは急いでるんだ。どいてくれないか?」
シャドウは冷静に言った。
「ところがそう簡単に下がるわけにはいかねぇな。」
グラエナが嘲笑うかのように言い放つ。
「あれ、やろうや、兄貴。」
子分であろうニューラが爪を鳴らしながら言った。
「・・・潰す・・・」
子分と思われるデルビルがつぶやく。
「よし・・・殺れ!」
合図とともに三匹が動き出した。
「仕方ない。応戦するぞ。」
シャドウが素早く指示を出す。
「フィール、下がってイーブイの護衛。シャイン、行くぞ!」
「任せとけって!」
シャインは素早く一歩下がって電撃を放つ。
三体は怯みはしたが、撃退にはまだ遠いダメージらしい。
「頭を落とす・・・!くらえっ!」
シャドウの電光石火がグラエナに命中する。
命中の時に出来るわずかな隙をニューラは逃がさなかった。
「食らえや!」
ニューラのみねうちがシャドウを襲う。
「ぐっ!?」
みねうちをもろに受けたシャドウはシャインの脇まで吹き飛ばされた。
「くたばれ!」
ニューラが爪を振りかざしてシャドウに飛び掛る。
「オレを忘れてんじゃねーよ!電磁波!」
「ぐぎゃぁぁ!」
シャインの電磁波でニューラは麻痺して動けなくなった。
「すまない。助かった。だが奴ら・・・一筋縄ではいかないな・・・ここは隙を見て突破したほうがいい。」
「了解!任せな!」
シャインは階段まで一直線に電撃を放った。
「今だ!階段まで走れ!」
合図とともにイーブイズは階段まで走った。
「逃がすか!」
グラエナがシャドーボールを発射しようと身構える。
「相殺するまで!」
シャドウも同じくシャドーボールの体制に入る。
その間にシャインとフィール、イーブイが階段を上りきった。
「食らえ!」
シャドウとグラエナのシャドーボールが同時に発射され、空中でぶつかり、爆発を起こす。
土煙が消えたときには、既にグラエナたちはイーブイズを見失っていた。
最終更新:2007年10月02日 13:09