四面体の垂心・外心の重心座標表現の具体例_第5(3直角四面体の場合)
「A―3直角四面体 ⇔ x=0」の「垂心・外心」の「ベクトルによる重心座標表現」
「垂心四面体の具体例」を今まで、4つあげて「垂心・外心」を具体的に計算してきた。
具体例の「第1・第2は x>0 の場合」であり、「第3・第4は x<0 の場合」であった。
そこで、今回は第5の例として x=0 の場合を考えよう。
<前の復習> 垂心四面体(または直辺四面体)において、
x=((→AB) ,(→AC)) =((→AB) ,(→AD)) =((→AC) ,(→AD)) ,
y=((→BA) ,(→BC)) =((→BA) ,(→BD)) =((→BC) ,(→BD)) ,
z=((→CA) ,(→CB)) =((→CA) ,(→CD)) =((→CB) ,(→CD)) ,
w=((→DA) ,(→DB))=((→DA) ,(→DC)) =((→DB) ,(→DC))
・・・(1.1.1) と おくと、
x+y=AB2=c2 ,
x+z=AC2=b2 ,x+w=AD2=d2,
y+z=BC2=a2 ,
y+w=BD^2=e2 ,z+w=CD2=f2・・・(1.1.2)で、
detJ(3)=yzw+xwz+xyw+xyz ・・・(1.1.3) また
外接球面の半径を R(3)とするとき、
R(3)2=k2/4―(xyzw)/{detJ(3)} ・・・(1.1.4) であった。
(1.1.1)からx=0 ⇔ ∠BAC=∠BAD=∠CAD=90.度・・・(1.1.5)
このとき、(1.1.2)から y=c2 ,z=b2 ,w=d2 ・・・(1.1.6)となり、
これから
(1.1.2)の残りは c2+b2=a2 ,c2+d2=e2 ,b2+d2=f2 ・・・(1.1.7)
となる。
(1.1.5)と(1.1.7)とは同値である。
ゆえにこの「垂心四面体ABCD」には、四つの三角形の うち、△ABCは
∠BAC=90度,△ABDは∠BAD=90度,△ACDは∠CAD=90度の
「直角三角形」である。
逆に 正の数 ,b,c,dを任意にとって、 正の数 aをc2+b2=a2,
正の数 eをc2+d2=e2 ,正の数 fをb2+d2=f2 とすれば (1.1.5)
が
成り立つ。
そして
a2+d2=b2+c2+d2 ,b2+e2=b2+c2+d2 ,
c2+f2=b2+c2+d2 だから a2+d2=b2+e2=c2+f2=b2+c2+d2
・・・(1.1.8) が成り立ち、
「垂心四面体ABCD」の条件は満たされている。
あとは
(1)
実際に四面体ができるのか、とうことだが、これは3次元のxyzー空間E^3に
おいて、
頂点Aを原点O(0,0,0)にとり、点Cをx軸上(b,0 ,0)に、点Bをy軸上
(0,c,0)にとり、点Dをz軸上(0,0,d)にとれば各頂点を結んで
「四面体ABCD」ができる。
b,c,dは任意の正の数でよいので、このタイプの「垂心四面体ABCD」は無数にできる。
(残りの a,b,e,fは自然に決まるわけである。各自 図を描いてください)
この形の「垂心四面体ABCD」は頂点Aに集まる3つの面の角がみな直角なので
「A―3直角四面体」と呼ぶことにする。
なお、
x=0 のときは (1.1.2)から
y=c2>0 ,z=b2>0 ,w=d2>0 ・・・(1.1.6)
だったから
この3つの直角以外の角度は、みな鋭角になっていることに注意しよう。
(2)
この「A―3直角四面体」の「垂心H」はどこだろうか?
すぐ分かるように「垂心H」は「頂点A」である。
これを「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」の公式で確認してみよう。
(→PH)=1/{detJ(3)}[yzw(→PA)+xzw(→PB)+xyw(→PC)+xyz(→PD)]
・・・(2.1.1) において
x=0 だから (1.1.3)から
detJ(3)=yzw=(cbd)2>0 ・・・(2.1.2) ( なぜなら (1.1.6))
よって (2.1.1)は (→PH)=1/{yzw}[yzw(→PA)]=(→PA)
すなわち (→PH)=(→PA) ・・・(2.1.3) ⇒ H=A
これで、公式より「垂心H」=「頂点A」 と求まった。
(3) 「外心O」の「ベクトルのよる重心座標表現」を求めてみよう。
公式は
(→PO)=1/{2detJ(3)}(―yzw+xzw+xyw+xyz)(→PA)
+1/{2detJ(3)}(yzw―xzw+xyw+xyz)(→PB)
+1/{2detJ(3)}(yzw+xzw―xyw+xyz)(→PC)
+1/{2detJ(3)}(yzw+xzw+xyw―xyz)(→PD) ・・・(3.1.1) だった。
x=0 と(2.1.2)により (3.1.1)は
(→PO)=1/{2yzw}×(―yzw)(→PA)+1/{2yzw}×(yzw)(→PB)
+1/{2yzw}×(yzw)(→PC)+1/{2yzw}×(yzw)(→PD)
=(1/2)[―(→PA)+(→PB)+(→PC)+(→PD)]
すなわち 「A―3直角四面体ABCD」では、AC=b,AB=c,AD=dの値に
関係なく その「外心O」の「ベクトルによる重心座標表現」は「一定」の
(→PO)=(1/2)[―(→PA)+(→PB)+(→PC)+(→PD)] ・・・(3.1.2) となる。
「外心O」は「A―3直角四面体ABCD」の外部にあり、平面BCDに関してAと
反対側にある。
(4)
また、AC=b,AB=c,AD=dの「A―3直角四面体ABCD」の2次元の
外接球面の半径 R(3)は どうなるか?
x=0だから (1.1.4)の第2項の xyzw/{detJ(3)}=0 よって R(3)2=k2/4
・・・(4.1.1)
ゆえに R(3)=k/2 ・・・(4.1.2)
(これは、公式(1.1.4)を使わずとも(3.1.2)でP⇒ Aとして
R(3)2=|(→AO)|2=|(1/2)[(→AB)+(→AC)+(→AD)]|2を計算すればでる。}
ところが(1.1.8)より k2=a2+d2=b2+e2=c2+f2=b2+c2+d2
よって k=√{b2+c2+d2}
ゆえに R(3)=k/2=√{b2+c2+d2}/2 ・・・(4.1.3)
(5) 最初 2007年2月ころだったか、「A―3直角四面体」の大きさに関係なく
「外心O」が 「一定の式」(3.1.2)になることを、導きだしたときは一瞬、
不思議に思えたが、 頭の中に「A―3直角四面体」を描いてこの図形を
いろいろな角度から眺めている内に 程なく理由が分かった。
理由は次のとおりである。
この「A―3直角四面体」に外接する「直方体」を考えその外接球面を
考えれば よいのである。
喩えて言えば 1個の「ショートケーキ」が「紙の箱に」入っていて、それが
「端っこ」に隙間なくピッタリ一杯にくっついているような場面を
思い浮かべてみる。
「ショートケーキ」は 普通「三角柱」であるが、このケ―キを上の方を少し
食べて三角錐の「A―3直角四面体ABCD」の形をした「ショートケーキ」と
なっているとする。
そのとき、この「紙の箱」が外接する直方体である。 この外接する
「直方体ABKC―DEFG」は、ただ一つに決まる。
(「A―3直角四面体ABCD」の底面は△BACとし、ABKCが「底面」の
長方形で、DEFGが「上面」の長方形とする。)
この「直方体ABKC―DEFG」を内部に持つ、「直方体ABKC―DEFG」の
外接球面Tがただ一つ決まるが、Tは「A―3直角四面体」にも外接する
ことになり、Tは「A―3直角四面体」の2次元の外接球面である。
(「四面体の外接球面はただ一つである」ことは「外心O」の 存在の「証明」
と一意性から分かる )
「直方体ABKC―DEFG」の「外接球面Tの中心U」は「対角線AFの中点である」 ことは明らかで、
このUが「A―3直角四面体ABCD」の「外心O」である。
(→AK)=(→AB)+(→AC) であるから
(→AF)=(→AK)+(→KF)=(→AK)+(→AD)=(→AB)+(→AC)+(→AD)
故に(→AO)=(→AU)=(1/2)(→AF)=(1/2)[(→AB)+(→AC)+(→AD)]
すなわち
(→AO)=(1/2)[(→AB)+(→AC)+(→AD)] ・・・(5.1.1)
よって
(→PO)―(→PA)=(1/2)[(→PB)+(→PC)+(→PD)]―(3/2)(→PA)
ゆえに (→PO)=(1/2)[―(→PA)+(→PB)+(→PC)+(→PD)] となり、
(3.1.2)がでてくる。
また
AF=√{b2+c2+d2}だから R(3)=AO=AF/2=√{b2+c2+d2}/2 ・・・(5.1.2)
となって (4.1.3)が出てくるわけである
(6)
ついでに四つの三角形△ABC ,△ABD ,△ACD ,△BCD の
「三角形としての垂心」も順に求めておこう。
まず△ABC ,△ABD ,△ACD はみな直角三角形であるから、その「垂心」は
みな頂点Aである。
次に△BCD は鋭角三角形であり、その「垂心」を「HA」,面積を「SA」と
する。(1)の(1.1.6)により、
y=((→BC),(→BD))=c2 ,z=((→CB),(→CD))=b2 ,
w=((→DB),(→DC))=d2 で △BCDについて考えているから、
(2SA)^2=detJ(2)=zw+yw+yz=b2d2+c2d2+c2b2
=(bd)2+(cd)2+(bc)2 となる。
すなわち
(2SA)^2=detJ(2)=(bd)2+(cd)2+(bc)2 ・・・(6.1.1) より
(→PH_A)=1/{detJ(2)}[zw(→PB)+yw(→PC)+yz(→PD)] ・・・(6.1.2)
=1/{(bd)2+(cd)2+(bc)2}×[(bd)2(→PB)+(cd)2(→PC)+(bc)2(→PD)]
つまり
(→PH_A)=1/{(bd)2+(cd)2+(bc)2}×[(bd)2(→PB)+(cd)2(→PC)+(bc)2(→PD)] ・・・(6.1.3)
となる。
また △BCD の「三角形としての外心O_A」は
(→PO_A)
=1/{2detJ(2)}×[y(z+w)(→PB)+z(y+w)(→PC)+w(y+z)(→PD)]
=1/[2{(bd)2+(cd)2+(bc)2}]
×[c2(b2+d2)(→PB)+b2(c2+d2)(→PC)+d2(c2+b2)(→PD)]・・・(6.1.4)
となる。
(7) ∠BDC=θは鋭角のはずである。cosθを求めておこう。
w=((→DB),(→DC))=d2 であって|(→DB)|=e=√{c2+d2} ,
|(→DC)|=f=√{b2+d2} だから
cos∠BDC=cosθ=w/(ef)=d2/[√{c2+d2}√{b2+d2}] ・・・(7.1.1)
ゆえに
0<cos∠BDC<1 となる。
(8)
最後に、よく知られた四つの三角形の面積について成り立つ関係を述べ、
証明しておく。
△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積をそれぞれ、S_A ,S_B ,S_C,S_D と
すれば、「A―3直角四面体ABCD」について
(SB)2+(SC)2+(SD)2=(SA)2・・・(8.1.1) が成立する。
これは SB=(bd)/2 ,SC=(cd)/2 ,SD=(bc)/2 よって
2SB=bd ,2SC=cd ,2SD=bc だから
(6.1.1)で示した式
(2SA)2=(bd)2+(cd)2+(bc2) が
{2(SA)}2={2(SB)2+{2(SC}2+{2(SD)}2
つまり (SA}2^=(SB)2+(SC)2+(SD)2 となってでてくる。
このことは SAは
(2SA)2=(bd)2+(cd)2+(bc)2 と求まると言っているに過ぎない。
(8.1.1)の一般の「垂心四面体ABCD」への一つの拡張式として
x(SA)2+y(SB)2+z(SC)2+w(SD)2=27V2・・・(8.1.2)をあげておく。
ここに Vは「垂心四面体ABCD」の「体積」である。これについては、またいつか話をしたい。