三角形の傍心・内心及びその半径と諸公式 2009.02.08(日)
△ABCに対して、∠A内の辺BCで傍接する傍接円の「ベクトルによる重心座標表現」を前回のBlogで与えた。
その中心をE_Aとした。同様に∠Bの二等分線と∠Bの二つの外角の二等分線は1点E_Bで交わり傍接円E_Bが、
∠Cの二等分線と∠Cの二つの外角の二等分線は1点E_Cで交わり傍接円E_Cができる。
そこでこの3つの傍接円E_A,E_B,E_Cの半径を順にr_A,r_B,r_Cとする。また内接円の半径をrとし、
△ABCの面積をSとする。前回のことから次の事が言える。
1.
[命題1.1]
△ABCに対して3辺の長さを BC=a,CA=b, AB=c とおく。
そのとき、それぞれ「傍心E_A」,「傍心E_B」,「傍心E_C」の「ベクトルによる重心座標表現」は
次のようになる。 △ABC⊆E^2⊆E^mとし、任意の点P∈E^m (m≧2)にたいして、
(→PE_A)={−a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)}/(−a+b+c) ・・・(1.1.1)
(→PE_B)={a(→PA)ーb(→PB)+c(→PC)}/(a−b+c) ・・・(1.1.2)
(→PE_C)={a(→PA)+b(→PB)−c(→PC)}/(a+b−c) ・・・(1.1.3)
これは確かに△ABCに関する「ベクトルによる重心座標表現」である。
また、内接円の中心をIで表し、内接円自体も「内接円I]とよぶことにすると
[命題1.2]
△ABCの面積をS、その3辺の長さをBC=s,CA=b, AB=c とおく。またs+b+s=2s・・・(1.2.1)
とし、内接円の半径をrとする。
このとき、「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」は次のようになる。
△ABC⊆E^2⊆E^mとし、任意の点P∈E^m (m≧2)にたいして、
(→PI)={a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)}/(a+b+c) ・・・(1.2.1)
また 半径rは r=2S/(a+b+c) ⇔ r=S/s ⇔ S=rs・ ・・(1.2.2)
となる。
[注意]:[命題1.2]は既知としておく。(1.2.1)が角の二等分線と辺の関係から導かれ、(1.2.2)が
△ABCを「内心I]で3つの三角形△IBC,△ICA,△IABに分けたとき、3つの面積の和=△ABCの面積=S
から出ることはよいだろう。受験生には(1.2.1),(1.2.2)は必須であろう。
さて、「内接円I」の半径rは(1.2.2)のようになったが、「傍接円E_A,E_B ,E_C」の半径に
ついては次のようになる。
[命題1.3]
△ABCの面積をS、その3辺の長さを BC=a,CA=b, AB=c とおく。またa+b+c=2s・・・(1.3.1)
とおく。
半径 r_Aは r_A=2S/(−a+b+c) ⇔ r_A=S/(s−a) ⇔ S=(r_A)(s−a) ・・・(1.3.2)
半径 r_Bは r_B=2S/(a−b+c) ⇔ r_B=S/(s−b) ⇔ S=(r_B)(s−b) ・・・(1.3.3)
半径 r_Cは r_C=2S/(a+b−c) ⇔ r_C=S/(s−c) ⇔ S=(r_C)(s−c) ・・・(1.3.4)
となる。
したがって r_A,r_B,r_Cはみな、rよりも大きい。
◎ [命題1.3]の「証明」は [以下の[命題1.3]を拡張した[命題2.4]の中で]行われる。しばらく辛抱して欲しい。
なお a+b+c=2s だから b+c−a=2s−2a=2(sーa) などから
s−a=(b+c−a)/2>0 , s−b=(c+a−b)/2>0 ,s−c=(a+b−c)/2>0 と
なっている事を注意しておく。
この[命題1.3」からすぐ、次の[公式1.4]がでる。
[公式1.4]
△ABCにたいしてその面積をS,r,r_A,r_B,r_Cは上記のとおりとする。
このとき、
1/(r_A)+1/(r_B)+1/(r_C)=1/r ・・・(1.4.1)
「◎実は「四面体」の場合は 「傍接球面」が4つできて、このときは
1/(r_A)+1/(r_B)+1/(r_C)+1/(r_D)=2/r ・・・(☆)となる。
これはまた次回とする。」
[公式1.4]の「証明」
[命題1.3]から r_A=S/(s−a) ⇒ 1/(r_A)=(s−a)/S
r_B=S/(s−b) ⇒ 1/(r_B)=(s−b)/S
r_C=S/(s−c) ⇒ 1/(r_C)=(s−c)/S
よって 1/(r_A)+1/(r_B)+1/(r_C)={(s−a)+(s−b)+(s−c)}/S={3s−(a+b+c)}/S
=(3s−2s)/S=s/S そして (1.2.2)から 1/r=s/S
したがって 1/(r_A)+1/(r_B)+1/(r_C)=1/r
([公式1.4]の「証明」終わり)
[公式1.5]
△ABCにたいしてその面積をSとし,s,r,r_A,r_B,r_Cは上記のとおりとする。
このとき 「内接円」の半径r と「傍接円」の半径 r_A,r_B,r_C は3辺の長さ
a,b,cを用いて表せる。ここに 2s=a+b+c とする。
(1) r=√[(s−a)(s−b)(s−c)]/s] = (1/2)√[(b+c−a)(c+a−b)(a+b−c)/(a+b+c)] ・・・(1.5.1)
(2) r_A=√[s(s−b)(s−c)]/(s−a)]=(1/2)√[(a+b+c)(c+a−b)(a+b−c)/(b+c−a)]
r_B=√[s(s−c)(s−a)]/(s−b)]=(1/2)√[(a+b+c)(a+b−c)(b+c−a))/(c+a−b)]
r_C=√[s(s−a)(s−b)]/(s−c)]=(1/2)√[(a+b+c)(b+c−a)(c+a−b)/(a+b−c)] ・・・(1.5.2)c
[公式1.5]の「証明」
ヘロンの公式 S^2=s(s−a)(s−b)(s−c) を使う。
(1)は rs=S ⇒ r^2=(S^2)/(s^2)=[s(s−a)(s−b)(s−c)]/(s^2)=[(s−a)(s−b)(s−c)]/s
⇔ r=√[(s−a)(s−b)(s−c)]/s]
(2)は [命題1.3]の(1.3.2)から
(r_A)^2=(S^2)/(s−a)^2=[s(s−a)(s−b)(s−c)]/(s−a)^2=[s(s−b)(s−c)]/(s−a)
⇔ r_A=√[s(s−b)(s−c)]/(s−a) となって証明された。
([公式1.5]の「証明」終わり)
[ 公式1.6] ついでに △ABCの「外接円」の半径Rを3辺の長さで表しておく。
R=abc/√[(a+b+c)(b+a−c)(c+a−b))(a+b−c)] ・・・(1.6.1)
[ 公式1.6]の「証明」
よく知られた 公式 S=abc/4R すなわち R=abc/4Sと ヘロンの公式
S=√[s(s−a)(s−b)(s−c)]=√[(a+b+c)(b+a−c)(c+a−b)(a+bーc)]/4
を使えばよい。
([公式1.6]の「証明」終わり)
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2.
[命題1.3]を証明するために、いくつか準備をする。
[補題2.1]
△ABCの「内接円I」と辺BC,辺CA,辺ABとの接点を順にL,M,Nとおく。
2s=a+b+cとする。このとき次のことが成り立つ。
AM=AN=s−a , BN=BL=s−b ,CL=CM=s−c ・・・(2.1.1)
「証明」
AM=AN ,BN=BL,CL=CM だからAM=AN=x ,BN=BL=y ,CL=CM=z とおいて
x,y,zの連立方程式をたてて、x,y,zを求める。
x+y=c ,y+z=a,z+x=b ・・・(2.1.2) この3式を加えて
2(x+y+z)=a+b+c=2s⇒x+y+z=s ・・・(2.1.3)
(2.1.3)と(2.1.2)から順に z=sーc,x=s−a ,y=s−b
よって証明された。
([補題2.1]の[証明」終わり)
◎ なお [補題2.1]はよく知られたことである。
次に
[補題2.2]
△ABCについて[補題2.1]と同じ記号を使う
tan(A/2)=r/(s−a) ,tan(B/2)=r/(s−b) ,tan(C/2)=r/(s−c) ・・・(2.2.1)
「証明」
tan(A/2)=r/(s−a)だけ示そう。△ANIは∠ANI=90° の直角三角形で∠IAN=A/2
そして[補題2.1]から 辺AN=s−a ,NI=r (内接円の半径) よって tan(A/2)=r/(s−a)
([補題2.2]の[証明」終わり)
[計算補題2.3]
△ABCについてその面積をS,BC=a,CA=b,AB=c,2s=a+b+c,内接円の半径をrとする。
このとき
(s−a)(s−b)−r^2=(cr^2)/(s−c) ・・・(2.3.1)
「証明」
ヘロンの公式と r=S/sを使う。
S^2=s(s−a)(s−b)(s−c) だから (s−a)(s−b)=S^2/{s(s−c)} よって
(s−a)(s−b)−r^2=(S^2)/{s(s−c)}−(S/s)^2=(S^2)×{s−(s−c)}×1/{(s^2)(s−c)}
=c{(S/s)^2}/(s−c)=(cr^2)/(s−c)
([計算補題2.3]の「証明」終わり)
◎[補題2.1]と[補題2.2] は「内心I]の方からでてくる性質であった。
次に「傍接円」の方からの性質を述べる。
[命題2.4]
△ABCにたいし BC=a,CA=b,AB=c,2s=a+b+c,内接円の接点を[補題2.1]のように
L,M,Nとしておく。
また「傍接円E_A」を考え、直線ABとの接点をD,直線ACとの接点を点Eとおく。
DE_A=r_A である。このとき、
BD=s−c ,CE=s−b・・・(2.4.1) ,r_A=S/(sーa) ⇔ S=(r_A)(s−a)・・・(2.4.2)
また r_A=(s−b)(s−c)/r⇔rr_A=(s−b)(s−c)・・・(2.4.3) となる。
「証明」
まず D(E_A)=r_A に注意。 BD=X とおく。Xと r_A の連立方程式を作り、それを解く。
(1) ∠CBD=180°−B だから ∠DB(E_A)=∠CBD/2=90°ーB/2
よって 直角三角形BD(E_A)において ∠B(E_A)D=B/2 ・・(2.4.3) ← ここがポイントである。
ゆえに tan(B/2)=BD/D(E_A)=X/(r_A) つまり tan(B/2)=X/(r_A) ・・・(2.4.4)
[補題2.2]の(2.2.1)から tan(B/2)=r/(s−b)
よって、まず X/(r_A)=r/(s−b) ・・・(2.4.5) の等式を得る。
(2) 次に
直角三角形AD(E_A)では、∠DA(E_A)=A/2 ,AD=AB+BD=c+X だから
tan(A/2)=(r_A)/(X+c) これと [補題2.2]の(2.2.1)から tan(A/2)=r/(s−a)
よって (r_A)/(X+c)=r/(s−a) ・・・(2.4.6) の等式を得る。
(3) そこで
(2.4.5)×(2.4.6)として r_Aを消去して、
X/(X+c)=(r^2)/[(s−b)(s−c)] 逆数をとり (X+c)/X=(s−a)(s−b)/(r^2)
⇔ 1+c/X=(s−b)(s−c)/(r^2) ⇔ c/X=[(s−a)(s−b)−(r^2)]/(r^2) ・・・(2.4.7)
ここで[計算補題2.3]より (s−a)(s−b)−(r^2)=(cr^2)/(s−c) これを(2.4.7)に
代入して c/X=[(cr^2)/(s−c)]/(r^2)=c/(s−c)
したがって X=s−c ・・・(2.4.7) すると X+c=sとなるから (2.4.6)より
r_A=(rs)/(s−a)=S/(sーa) つまり r_A=S/(sーa) の(2.4.2)式を得た。(これで[命題1.3]も
証明された。) なお、 rs=S を用いた。
また X=s−cを(2.4.5) に代入し、その逆数をとり変形して
r_A=(s−b)(s−c)/r となり (2.4.3)を得る。CE=s−bも同様にできる。
またtan(A/2)=(r_A)/s=r/(s−a) ・・・(2.4.8) も分かった。
([命題2.4]の「証明】終わり)
同様に考えて以上のことをまとめれば、
[命題2.5]
S=rs=(r_A)(s−a)=(r_B)(s−b)=(r_C)(s−c) ・・・(2.5.1)
r_A=S/(sーa)=(s−b)(s−c)/r ⇔ rr_A=(s−b)(s−c)・・・(2.5.2)
r_B=S/(sーb)=(sーc)(s−a)/r ⇔ rr_B=(s−c)(s−a)・・・(2.5.3)
r_C=S/(sーc)=(sーa)(s−b)/r ⇔ rr_C=(s−a)(s−b)・・・(2.5.4)
tan(A/2)=r/(−a)=(r_A)/s ,tan(B/2)=r/(s−b)=(r_B)
tan(C/2)=r/(−c)=(r_C)/s ・・・(2.5.5)
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3.
これを用いて次の[命題3.1]を示そう。
[命題3.1]
△ABCの面積をS、外接円の半径を Rとし、r,r_A,r_B,r_C は上記と同様とする。このとき
(1) S^2=r(r_A)(r_B)(r_C) ⇔ S=√[r(r_A)(r_B)(r_C)] ・・・(3.1.1)
(2) r=4Rsin(A/2)sin(B/2)sin(C/2) ・・・(3.1.2)
(3) r_A=4Rsin(A/2)cos(B/2)cos(C/2) ・・・(3.1.3)
同様に
r_B=4Rsin(B/2)cos(A/2)cos(C/2) ,r_C=4Rsin(C/2)cos(A/2)cos(B/2)
[命題3.1]の「証明」
(1) [命題2.5]の(2.5.2)(2.5.3)(2.5.4)を掛け合わせれば
ヘロンの公式 S^2=s(s−a)(s−b)(s−c) と r=S/s より
(r^3)(r_A)(r_B)(r_C)=[(sーa)(sーb)(sーc)]^2=(S^4)/(s^2)=(S^2)(S/s)^2=(S^2)(r^2)
よって r(r_A)(r_B)(r_C)=S^2 となり(3.1.1)が示された。
(2) 正弦定理の a=2RsinA ,b=2RsinB,c=2RinCと「和・積」と2倍角の公式を使う。
なおcos(90°ーΘ)=sinΘ、sin(90°ーΘ)=sin0は縦横に使う。
[命題2.5]から
r=(s−a)tan(A/2)=R(sinB+sinB−sinA)tan(A/2)
=2R[sin(B+C)/2×cos(BーC)/2−sin(A/2)cos(A/2)]tan(A/2)
=2Rcos(A/2)tan(A/2)[cos(BーC)/2ーcos(B+C)/2]
=4Rsin(A/2)[sin(B/2)sin(C/2)]
=4Rsin(A/2)sin(B/2)sin(C/2) となる。
よって r=4Rsin(A/2)sin(B/2)sin(C/2) となり (3.1.2)が導かれた。
(3) 同様に [命題2.5]から
r_A=stan(A/2)=(1/2)(a+b+c)tan(A/2)=R(sinA+sinB+sinC)tan(A/2)
=R[2sin(A/2)cos(A/2)+2sin{(B+C)/2}cos{(B−C)/2}]tan(A/2)
=2R[sin(A/2)cos(A/2)+cos(A/2)cos{(B−C)/2}]tan(A/2)
=2Rcos(A/2)[sin(A/2)+cos{(B−C)/2}]tan(A/2)
=2Rcos(A/2)×tan(A/2)[cos(B+C)/2+cos(B−C)/2]
=4Rsin(A/2)[cos(B/2)cos(C/2)]
=4Rsin(A/2)cos(B/2)cos(C/2)
よって r_A=4Rsin(A/2)cos(B/2)cos(C/2) となり(3.1.3)が示された。
([命題2.5]の「証明」終わり)
「注意」:(2)は sinB+sinC−sinA=4cos(A/2)×sin(B/2)sin(C/2)
(3)は sinA+sinB+sinC=4cos(A/2)cos(B/2)cos(c/2) を
「証明しておいて」からやるとわかり易かった。
4.最後に Napier(ネーピア)の公式と呼ばれる式の証明を示しておく。今となっては簡単な
式の変形に過ぎない。「対数」と関係があるのかもしれない。
[命題4.1] Napier(ネーピア)の公式
(a+b)/(a−b)=[tan(A+B)/2]/[tan(A−B)/2] ・・・(4.1.1)
「証明」
正弦定理から
a+b=2R(sinA+sinB)=4R[sin(A+B)/2)cos{(A−B)/2}] ・・・(4.1.2)
a−b=2R(sinA−sinB)=4R[cos{(A+B)/2}sin{(A−B)/2}] ・・・(4.1.3)
(4.1.2)÷(4.1.3) をして
(a+b)/(a−b)=[sin{(A+B)/2}cos{(A−B/2}]/[cos{(A+B)/2}sin{(A−B)/2})
=[sin{(A+B)/2}/cos{(A+B)/2}]/[sin{(A−B)/2}/cos{(A−B)/2}]
=[tan(A+B)/2]/[tan(A−B)/2]
(Napier(ネーピア)の公式「証明」終わり)
最終更新:2009年02月08日 08:22