三角形の「三線座標」と「四面体」の「四線座標」(その2)と「内心I」「傍心E_D」の重心座標 2009.02.16(月)


「四面体」にたいして「2次元内接球面」の中心「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」と
その半径rの公式や、「傍接球面」の中心、「傍心E_D」のベクトルによる重心座標表現」と
その半径r_Dなどを求めるために、新たに「四面体」に関する「四線座標」も導入し、
三角形の「三線座標」と比較しながら同時に考察する。

3.
「四線座標」の導入
(1) 記号の導入:
三角形について:△ABCの面積をSとし、3辺 BC=a,CA=b,AB=cとおく。また頂点A,B,Cから
対辺BC,CA,ABに降ろした「垂線」の足を順にH_A,H_B,H_Cとする。辺BC,CA,ABをそれぞれ
「△ABC」の底辺と見たときの△ABCの「高さ」を順にh_A,h_B,h_Cとするとh_A=A(H_A),
h_B=B(H_B),h_C=C(H_C)となる。面積Sが,S=(1/2)a(h_A)=(1/2)b(h_A)=(1/2)c(h_C)
と書けるので、

 h_A=(2S)/a ,h_B=(2S)/b,h_C=(2S)/c  ・・・(3.1.1) である。

四面体について:「四面体ABCD」の「体積」をVとし,△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積を
順に  S_A,S_B,S_C,S_D・・・(3.1.2)と書く。
また頂点A,B,C,Dから対辺の△BCD,△ACD,△ABD,△ABCに
降ろした垂線の足を順にH_A,H_B,H_C,H_Dとおき、△BCD,△ACD,△ABD,△ABCを
それぞれ「四面体ABCD」の底面と見たときの高さを順に h_A,h_B,h_C,h_D ・・・(3.1.3)
とおく。さすれば h_A=A(H_A),h_B=B(H_B),h_C=C(H_C),h_D=D(H_D)・・・(3.1.4)
また、体積V=(1/3)(S_A)(h_A)=(1/3)(S_B)(h_B)=(1/3)(S_C)(h_C)=(1/3)(S_D)(h_D)から

 h_A=(3V)/S_A ,h_B=(3V)/S_B,h_C=(3V)/S_C ,h_D=(3V)/S_D ・・・(3.1.5)

場合によっては △BCD=S_A ,△ACD=S_B,△ABD=S_C,△ABC=S_D ・・・(3.1.6)と略記する。
 以後これらをずっと使用する。
(2)
[定義3.1] 四面体ABCDに関する「四線座標」の定義
 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。点Tから四面体ABCDの各面△BCD,△ACD,
△ABD,△ABCに降ろした垂線の足を順にT^A,T^B,T^C,T^D   ・・・(3.1.7)とし、
α=点Tから面△BCDまでの距離=T(T^A),β=点Tから面△ACDまでの距離=T(T^B),
γ=点Tから面△ABDまでの距離=T(T^C),δ=点Tから面△ABCまでの距離=T(T^D)  ・・・(3.1.8)
とおき、その符号は、次のように決める。
例えば点Tが「面BCDの造る平面」に関して、頂点Aと反対側にあるときは、α<0 と考える。・・・(3.1.9)

このようにして「四面体ABCD」を用いて、3次元空間E^3に「三線座標」を真似て「四線座標」が
導入できることが分かる。また、例えば面△ABC上の点Tに関しては、「四面体」での「四線座標」と
「△ABC」での「三線座標」の2通りが考えられる。このとき、「重心座標」のようには
「四線座標」が「三線座標」の「拡張」とはなってはいないので注意する必要がある。区別するときは、
「三線座標」は(α(3),β(3),γ(3))などと書き、「四線座標」の方は(α(4),β(4),γ(4),δ(4))
などで表すことにする。

点Tの「四線座標」の「一意性」は定かではないが、「四面体ABCD」に関する「重心座標」の
「一意性」とこれから述べる[命題3.2]以降によって、明らかになるだろう。

△ABC」に関する「三線座標」及び「四面体ABCD」に関する「四線座標」と「重心座標」との関係
[命題3.2]
(1) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ,ν)
  かつ κ+λ+μ+ν=1,「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
  「κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」,「λ≠1 ⇒ β=(3V/S_B)λ」
  「μ≠1 ⇒ γ=(3V/S_C)μ」,「ν≠1 ⇒ δ=(3V/S_D)ν」・・・(3.2.1) が成立する。

(2) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
  Tの「重心座標」を(κ,λ,μ,ν)、κ+λ+μ+ν=1とする。
   κ≠1 かつλ≠1 かつ μ≠1 かつν≠1 ・・・(3.2.2)のときは
   (S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=3V  ・・・(3.2.3) が成立する。
(3) △ABC⊆E^2(平面)とし、点T∈E^2をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ)かつ
   κ+λ+μ=1、「三線座標」を(α,β,γ)とする。
  「κ≠1 ⇒ α=(2S/a)κ」,  「λ≠1 ⇒ β=(2S/b)λ」
  「μ≠1 ⇒ γ=(2S/c)μ」    ・・・(3.2.4) が成立する。

(4) △ABC⊆E^2(平面)とし、点T∈E^2をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ)かつ
   κ+λ+μ=1,「三線座標」を(α,β,γ)とする。
   κ≠1 かつ λ≠1 かつ μ≠1 ・・・(3.2.5) のときは
   aα+bβ+cγ=2S  ・・・(3.2.6) が成立する
「証明」
(2)について:
まず(1)が成り立つとして(2)を証明する。
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_A)ν より、
 (S_A)α=(3V)κ,(S_B)β=(3V)λ,(S_C)γ=(3V)μ,(S_D)δ=(3V)ν ・・・(3.2.7)
 ゆえに
  (S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=(3V)(κ+λ+μ+ν)=(3V)×1=3V 
 よって(3.2.3)が成り立つ。
(4)について:
まず(3)が成り立つとして(4)を証明する。
 α=(2S/a)κ,β=(2S/b)λ,γ=(2S/c)μ より
  aα=(2S)κ,bβ=(2S)λ,cγ=(2S)μ ・・・(3.2.8)
 ゆえにaα+bβ+cγ=(2S)κ+(2S)λ+(2S)μ=(2S)(κ+λ+μ)=2S×1=2S
 よって(3.2.6)が成り立つ。
(1)について: 
 それでは(1)を証明しよう。
 点Tの「四面体ABCD」に関する「重心座標」(κ,λ,μ,ν)、κ+λ+μ+ν=1について
 「 κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」を証明する。
 κ≠1であるから T≠A となり(∵[系2.3])直線ATは「△BCDの造る平面」と1点T_Aで交わり、
 [命題2.7]から (→T(T_A))=κ(→A(T_A)) となる。H_Aは頂点Aから下した垂線の足だった。
 (ア)0<κ<1 のとき、直線AT上に3点 A,T,T_Aがこの順に並び、また線分A(H_A)が頂点Aからの
 「垂線」として存在する。点Tから「△BCDの造る平面」に「垂線」を引きその足をT^Aとおく。
  T(T^A)=α>0 である。T_A≠H_Aとしよう。△A(T_A)(H_A)∽△T(T_A)(T^A)となるから
  ⇒ A(T_A):T(T_A)= A(H_A):T(T^A) ・・・(3.2.9)となる。
  (→T(T_A))=κ(→A(T_A))から  A(T_A):T(T_A)=1:κ, T(T^A)=α,(3.1.5)から
  A(H_A)=h_A=(3V)/S_A だから (3.2.9) は 1:κ=h_A:α  
   ⇒ α=(h_A)κ=(3V/S_A)κ  ゆえに (3.2.1)の第1式が成立。

  これで α=(3V/S_A)κ が証明された。T_A=H_A のときは(→T(T_A))=κ(→A(T_A))は
  (→T(H_A))=κ(→A(H_A)) ・・・(3.2.10)となり α=T(H_A) ,A(H_A)=h_A だから 
  (3.2.10)から α=κ(h_A)=(3V/S_A)κ となり、(3.2.1)の第1式が成立。 

 (イ)κ=0 のとき (→T(T_A))=κ(→A(T_A))=(→0)からT=T_A∈「△BCDの造る平面」 ゆえにα=0
   よって α=(3V/S_A)κは両辺とも「0」となり成立する。
 (ウ)κ< 0のとき、四面体ABCDの面△BCDを底面、頂点Aを上方にもってきたとき、点Tは底面の△BCD
    よりも下方にある。直線AT上には頂点A、交点T_A、点Tの順に上方から並んでいる。
    α=T(T^A)<0である。T_A≠H_Aとしよう。△T(T^A)(T_A)∽△A(H_A)(T_A) である。
    よって A(T_A):T(T_A)=A(H_A):T(T^A) すなわち 1:(−κ)=h_A:(−α)
    ⇒ α=(h_A)κ=(3V/S_A)κ つまり α=(3V/S_A)κ 
    T_A=H_A のときは (→T(T_A))=κ(→A(T_A))は (→T(H_A))=κ(→A(H_A)) ・・・(3.2.11)
    となる。α=T(H_A) A(H_A)=h_A から (−α)=(−κ)(h_A) これから
    (ア)と同様に式がでる。
 (エ) κ>1のとき (→T(T_A))=κ(→A(T_A))から点Tは「四面体ABCD」の上方にあり、
       直線AT上に上方から点T、頂点A,交点T_Aの順に並んでいる。T_A≠H_Aとしよう。
    △(T_A)A(H_A)∽△(T_A)T(T^A) ⇒ A(T_A):T(T_A)=A(H_A):T(T^A)
    すなわち 1:κ=h_A:α よって α=κ(h_A)=(3V/S_A)κ となる。T_A=H_Aのときも
    式がでる。
以上により、「κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」が証明された。
 (3.2.1)の他の式も同様である。
 こうして、[命題3.2]の(1)が「証明」された。
 [命題3.2]の (3),(4)が「三線座標」の場合で(3)はh_Aなどで (3.1.5)の代わりに(3.1.1)を使えば同様にできる。
([命題3.2]の「証明」終わり)  
[命題3.3]
(1) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を
  (κ,λ,μ,ν)かつ κ+λ+μ+ν=1,「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。このとき

  α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_A)ν ・・・(3.3.1) が成立する。

(2) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
  このとき 
  (S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=3V  ・・・(3.3.2) が成立する。 

(3) △ABC⊆E^2(平面)とし、点T∈E^2をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ)かつ
   κ+λ+μ=1、「三線座標」を(α,β,γ)とする。このとき

   α=(2S/a)κ,β=(2S/b)λ,γ=(2S/c)μ ・・・(3.3.3) が成立する。
(4) △ABC⊆E^2(平面)とし、点T∈E^2をとる。Tの「三線座標」を(α,β,γ)とする。

   このとき aα+bβ+cγ=2S  ・・・(3.3.4) が成立する。
「証明」
 (1) で κ≠1 かつλ≠1 かつ μ≠1 かつ ν≠1 および(3)でκ≠1 かつλ≠1 かつ μ≠1の場合は
 [命題3.2]から(1)(2)(3)(4)は成り立つ。
 そこで(1)では、
 「κ=1 または λ=1 または μ=1 または ν=1」・・・(3.3.5)のときに「証明」をすればよい。
 また(3)では
  「κ=1 または λ=1 または μ=1」 ・・・(3.3.6) のときに「証明」をすればよい。
(1)について:
 κ=1 または λ=1 または μ=1 または ν=1 ・・・(3.3.5)とする。
 点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を (κ,λ,μ,ν)かつ κ+λ+μ+ν=1,
「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。 そして κ=1とする。
  (ア) T=A のときは、頂点A」の「重心座標」は  (κ,λ,μ,ν)=(1,0,0,0)で(3.1.5)から 
    α=T(T^A)=h_A=(3V/S_A)、 κ=1だから α=(3V/S_A)κ がやはり成立する。
  (イ) κ=1でT≠A とすると [系2.3]から (→AT)//「△BCDの造る平面」であり、
   よって、またα=T(T^A)=h_A=(3V/S_A),κ=1だから α=(3V/S_A)κ が成立する。

  (ウ) κ=1のとき、λ+μ+ν=0 で 「ベクトルによる重心座標表現」は
   任意の点 P∈E^n(ただしn≧3)にたいし
  (→PT)=(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(3.3.7)
   となる。ここで もし λ≠1ならば[命題3.2]から β=(3V/S_A)κ が成立する。
  そこで、さらにλ=1とすれば、Tの重心座標は(1,1,μ,ν) ,1+μ+ν=0 となる。
  よって T≠Bである。 λ=1だから「系2.3」と同様にして 
  (→BT)//「△ACDの造る平面」となる。ゆえに β=T(T^B)=h_B=(3V/S_B)となる。λ=1なので
   β=(3V/S_B)λが成立する。次にμ≠1ならばT≠Cで [命題3.2]からγ=(3V/S_C)μが成立する。
 そこで
  (エ)κ=1 かつ λ=1かつ μ=1としよう。するとκ+λ+μ+ν=1からν=−2 となる。
    μ=1だから (→CT)//「△ABDの造る平面」となる。
    よって γ=T(T^C)=h_C=3V/S_C そしてμ=1 なのでγ=(3V/S_C)μ が成立する。
    そして ν=−2なのでν≠1であり、(→DT)//「△ABDの造る平面」とはならない。 
    ゆえに δ=(3V/S_D)ν が成立する。
   以上により κ=1 かつ λ=1かつ μ=1かつν=−2のときも
   α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν ・・・(3.3.1)が成立する。

  (オ) この κ=λ=μ=1かつ ν=−2のときを図形的に考えてみよう。点Tは「四面体ABCD」に関して
   どこにくるのか調べてみる。κ=λ=μ=1かつ ν=−2より 点Tの「ベクトルによる重心座標表現」は
   (→PT)=(→PA)+(→PB)+(→PC)−2(→PD) ・・・(3.3.7)だから 特に P⇒D とおくと
   (→DT)=(→DA)+(→DB)+(→DC) ・・・(3.3.8) そこで△ABCの重心をG_D とおくと
   G_D の「四面体ABCD」に関する「ベクトルによる重心座標表現」は
   (→PG_D)=1/3(→PA)+1/3(→PB)+1/3(→PC)+0×(→PD)・・・(3.3.9) 。G_Dの「四面体ABCD」
   に関する「重心座標」は(1/3,1/3,1/3,0) 、△ABCに関する「重心座標」は(1/3,1/3,1/3)で
   あって(3.3.9)で特にP=D とおいて (→DG_D)=1/3[(→DA)+(→DB)+(→DC)] ・・・(3.3.10) 
   これと(3.3.8)から (→DT)=3(→DG_D) ・・・(3.3.11)となる。ゆえに(→DT)はDから対面の
    △ABCに向かってその重心G_Dを通り、DG_Dの長さを3倍にしたもので、Tは四面体ABCDの外部の所にある。 
  つまり D(G_D):(G_D)T=1:2 ・・・(3.3.12)となる。T_D=G_Dであり、 T(T^D)=δはδ<0である。
  すなわち (→DT)は「△ABCの造る平面」とは平行にはならず、
  T(T^D):D(H_D)=T(G_D):D(G_D)=(−2):1 ⇒ δ:h_D=(−2):1
      ⇔ δ=(h_D)×(−2) ・・・(3.3.13)
  h_D=3V/S_D ,ν=−2だから (3.3.13)は δ=(3V/S_D)ν となる。
  このようにして、κ=1から始めてλ,μ,νとやっていって、
  α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν ・・・(3.3.1) が成立する。
  よって他の場合も(3.2.2)は成立する。ゆえに(2),(4)も成立する。 
([命題3.3]の「証明」終わり)  
[命題3.4]
(1)四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3の「重心座標」
(κ,λ,μ,ν),κ+λ+μ+ν=1 と「四線座標」(α,β,γ,δ)の間には[命題3.3]の(1)の
関係が成立し、1対1の対応がある。「四線座標」では、点が異なれば「四線座標」も異なる。
(2) 
△ABC⊆E^2とし、点T∈E^2の「重心座標」(κ,λ.μ),κ+λ+μ=1 と「三線座標」(α,β,γ)の
間には[命題3.3]の(3)の関係が成立し、1対1の対応がある。「三線座標」では、点が異なれば
「三線座標」も異なる。   
☆ 
最後に、「重心座標」、「三線座標」、「四線座標」ともその比さえ分かればよいときもある。


4.
例えば
(1)「内心I]では、内接円,または2次元の内接球面の半径をr>0とすれば
三角形では (α,β,γ)=(r,r,r)、四面体では(α,β,γ,δ)=(r,r,r,r)がそれぞれ
真の「三線座標」と「四線座標」である。その比を考えると、それぞれ
  α:β:γ=1:1:1, α(4):β(4):γ(4):δ(4)=1:1:1:1となる。
(2)「重心G」では、「△ABC」のその真の「三線座標」は(α,β,γ)=(2S/3a,2S/3b,2S/3c)
その比は α:β:γ=1/a:1/b:1/c、「四面体ABCD」では、その真の「四線座標」は
(α,β,γ,δ)=(3V/4S_A,3V/4S_B,3V/4S_C,3V/4S_D)で、「四線座標」の比は
 α:β:γ:δ=1/S_A:1/S_B:1/S_C:1/S_D ・・・(4.1.1)
(3)
「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」を求めてみよう。
任意の点P∈E^nにたいし、その「ベクトルによる重心座標表現」を
(→PI)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(4.1.2) かつ
   κ+λ+μ+ν=1・・・(4.1.3) とし、「内接球面」の半径をr(r>0)とする。
また「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
「内心I」から「△BCDの造る平面」、「△ACDの造る平面」、「△BDの造る平面」、
「△ABCの造る平面」へ降ろした「垂線」の足を順にI^A,I^B,I^C,I^Dとすれば
求める条件は
 r=I(I^A)=I(I^B)=I(I^C)=I(I^D) ・・・(4.1.4)
このI(I^A)=α,I(I^B)=β,I(I^C)=γ,I(I^D)=δ だから(4.1.4)は
 r=α=β=γ=δ ・・・(4.1.5) ここで[命題3.3]の(1)から
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν だから(4.1.5)は
 r=(3V/S_A)κ=(3V/S_B)λ=(3V/S_C)μ=(3V/S_D)ν ・・・(4.1.6) となり、
 これをκ+λ+μ+ν=1・・・(4.1.3)のもと、5つの方程式で、5つの未知数κ,λ,μ,νとrを
 解けばよい。 
(4.1.6)にたいしていわゆる「加比の理」を用いれば、
 r=(3V/S_A)κ=(3V/S_B)λ=(3V/S_C)μ=(3V/S_D)ν
  =(3Vκ+3Vλ+3Vμ+3Vν)/(S_A+S_B+S_C+S_D)=(3V)(κ+λ+μ+ν)/(S_A+S_B+S_C+S_D)
  =(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)
よって r=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(4.1.7)
    κ=S_A/(S_A+S_B+S_C+S_D)、λ=S_B/(S_A+S_B+S_C+S_D),
    μ=S_C/(S_A+S_B+S_C+S_D),ν=S_D/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(4.1.8) 
   と解けた。これらを(4.1.2)に代入して、次の「定理4.2]が得られた。
「定理4.2]
「四面体ABCD」の2次元の「内接球面」の半径をr( r>0)とし「内心」をIとしたとき、
「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」は 任意の点P∈E^n(ただし n≧2)
 にたいして
 (→PI)=[1/(S_A+S_B+S_C+S_D)]×[(S_A)(→PA)+(S_B)(→PB)+(S_A)(→PC)+(S_D)(→PD)]
   ・・・(4.2.1)
その半径rは r=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(4.2.2)
 detJ(3)=(6V)^2 だから (4.2.2)は
 r=√[detJ(3)]/2(S_A+S_B+S_C+S_D) ・・・(4.2.3)とも表現される。
☆ 同様に「角D内で△ABCで『傍接する』傍接球面」の「中心」を「E_D」で表せば。
 「傍心E_D」の「ベクトルによる重心座標表現」は 任意の点P∈E^n(ただし n≧2)
   にたいして

 (→PE_D)=[1/(S_A+S_B+S_C−S_D)]×[(S_A)(→PA)+(S_B)(→PB)+(S_A)(→PC)−(S_D)(→PD)]
   ・・・(4.2.4)
  2F=S_A+S_B+S_C+S_D とおけば、
 (→PE_D)=[1/2(F−S_D)]×[(S_A)(→PA)+(S_B)(→PB)+(S_A)(→PC)−(S_D)(→PD)] 
 そして、この傍接球面の半径r_Bは
 r_D=(3V)/(S_A+S_B+S_C−S_D)=√[(detJ(3)]/2(S_A+S_B+S_C−S_D)
   =√[detJ(3)]/4(F−S_D) ・・・(4.2.5)
   などとなる。三角形の場合も容易に求まる。これらはまた、次回に示そう。
最終更新:2009年02月16日 11:05