三角形の内心,傍心,垂心,外心 の重心座標と三線座標  2009.7.15(水)

<記号の約束>

mは自然数、E^mでm次元ユークリッド空間を表すものとし、「ベクトルAB」などを(→AB)などで表す。
また、「三角形ABC」の3辺BC,CA,ABをBC=a,CA=b,AB=cとし、その面積をSで表す。

1.三角形の「三線座標」の大雑把な復習
 △ABC⊆E^2⊆E^m (m≧2)としておく。
 よくやるように 2s=a+b+c …(1.1.1) とおく。
 「△ABC」で頂点Aから底辺BCに下した垂線の足をH_Aとし、その長さ(高さ)をh_Aとする。
 同様に、頂点B,Cからの垂線を考えてCA上に点H_B,AB上に点H_Cをとり、h_B=BH_B,h_C=CH_C …(1.1.2) 
 とする。
 E^2内の任意の点Tにたいし、点Tから底辺BCまでの「符号つき距離」をα,
 点Tから底辺CAまでの「符号つき距離」をβ,点Tから底辺ABまでの「符号のつき距離」をγとする。
 ここで、点Tから底辺BCまでの「符号つき距離α」とは「点Tから直線BCに下した垂線の長さ」で、
 その「符号」は次のように定める。点Tから直線BCに下した「垂線の足」を例によって「T^A」
 などとして T(T^A)=α であるが、

 (ア) 点Tが直線BCに関して、頂点Aと同じ側にあるとき、T(T^A)=α>0
(イ) 点Tが「直線BC上にある」とき、         T(T^A)=α=0
(ウ) 点Tが直線BCに関して、頂点Aと反対側にあるとき、T(T^A)=α<0 …(1.1.3) 

  と定めるのである。
 このような3つの実数の組(α,β,γ)はE^2内の点Tによって「一意的」に定まる。
 この3つの実数の組(α,β,γ)を点Tの△ABCに関する「三線座標」,または単に「三線座標」とよぶ。
 「注意:この符号つき距離の「符号」は次のように考えてもよい。
◎ベクトル(→AH_A)は「零ベクトルではない」から、(→AH_A)の向きを「正」と考えるのである。
  そして
 (ア)(→TT^A)≠(→0)で、(→TT^A)と(→AH_A)が同じ向きに平行なとき、TT^A=α>0
 (イ)(→TT^A)=(→0)のとき、                    TT^A=α=0
 (ウ) (→TT^A)≠(→0)で、(→TT^A)と(→AH_A)が反対向きに平行なとき、TT^A=α<0 …(1.1.4)
「命題1.2.1]
 h_A=(2S)/a,h_B=(2S)/b ,h_C=(2S)/c …(1.1.5)
「証明」
 面積の式 (1/2)a(h_A)=(1/2)b(h_B)=(1/2)c(h_C)=S からでる。
 (「証明」終わり)

「命題1.2.2」
 E^2内の任意の点Tの重心座標を(κ,λ,μ),κ+λ+μ=1とすると、任意の点P∈E^mに対して、
  (→PT)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC) …(1.2.1) となる。
  このとき、κ≠1ならば、 直線ATは、直線BCと唯1点T_Aで交わる。
  「κ≠1のときに限り」、AT:TT_A=1−κ:κ …(1.2.2) かつ A(T_A):T(T_A)=1:κ …(1.2.3)

「証明」
  証明はこのブログの「2009.05.28(木)」の [命題1.1]および、[命題1.3]の
  AT:T(T_A)=(1−κ):κ …(1.1.9) と同様にできるので、そちらを見るか、
  もっと古いのでは「2009.02.18」のブログ「     」を見て下さい。
  ポイントは 「t≠1で(→AT)=(1−t)(→AT_A)とするとき、t=κとなる」ことで、
  t=κ かつ (→AT)=(1−κ)(→AT_A) であるから、
  (→T(T_A))=(→AT_A)−(→AT)=(→AT_A)−(1−κ)(→AT_A)=κ(→AT_A)
  すなわち κ≠1のときは、(→T(T_A))=κ(→AT_A) …(1.2.4)からわかる。これから
  (1.2.2) ,(1.2.3)がでてくるのである。なお κ=1のときは別に考えるのだった。
 (「証明」終わり)

 次の「命題1.3」は「命題1.2.2」のA(T_A):T(T_A)=1:κ …(1.2.3)と三角形の相似を使う。

「命題1.3」 「重心座標」と「三線座標」との関係
  △ABC⊆E^2⊆E^m (m≧2)としておく。
  E^2内の任意の点Tの重心座標を(κ,λ,μ),κ+λ+μ=1 …(1.3.1)とし、「三線座標」を(α,β,γ)と
  すれば 
    α=(2S/a)κ ,β=(2S/b)λ ,γ=(2S/c)μ …(1.3.2)
  また 
    aα+bβ+cγ=2S  …(1.3.3)

 ここに、Sは三角形ABCの面積、a=BC,b=CA,c=AB である。
「証明」
 (1) κ≠1のときは、「命題1.2.2」の(1.2.3)から A(T_A):T(T_A)=1:κ …(1.3.4)
  そこでTが直線BC上になく、(→AT)が「直線BCと垂直でない場合」だけ証明しておく。α=T(T^A)である。
  △A(T_A)(H_A)∽△T(T_A)(T^A)だから A(H_A):T(T^A)=A(T_A):T(T_A)=1:κ (∵ (1.3.4) )
  つまり h_A:α=1:κ …(1.3.5) ⇒ α=(h_A)κ …(1.3.6) ここで「命題1.2.1」の(1.1.5)から 
  h_A=(2S)/a,よって (1.3.6)は α=(2S/a)κ …(1.3.7) となる。
 (2) κ=1のときは、(→AT)は「点Aを通って底辺BCに平行な直線上」にあり、
   したがって α=T(T^A)=h_A また κ=1なので α=(h_A)κ …(1.3.6)がやはり成り立つ。
   よって 「命題1.2.1」の(1.1.5)から α=(2S/a)κ …(1.3.7) となる。 
  同様に β=(2S/b)λ ,γ=(2S/c)μ も β=(h_B)λ ,γ=(h_C)μ からでる。
 (3)
  次に(1.3.2),(1.3.1)から aα+bβ+cγ=(2S)κ+(2S)λ+(2S)μ=(2S)(κ+λ+μ)=(2S)×1=2S 
  となって (1.3.3)が示された。
2.
 それでは、△ABCの「内心I」と「傍心E_A」の「ベクトルによる重心座標表現」を求めよう。
「命題2.1」
 △ABC⊆E^2⊆E^m (m≧2)としておく。また △ABCの面積をSとし、a=BC,b=CA,c=AB とする。
 △ABCの「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」は、任意の点P∈E^m に対して

  (→PI)=[1/(a+b+c)][a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)] …(2.1.1)

     =[1/(2s)][a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)] …(2.1.2)
  また 「内接円I」の半径をrとおけば
   r=(2S)/(a+b+c)=(2S)/(2s)=S/s       …(2.1.3)

  ここで 例によって 2s=a+b+c としている。
 「証明」
 「内心I」から辺BC,CA,ABに下した垂線の足をそれぞれ、I^A,I^B,I^Cとおく。
 「内心I」の「三線座標」を(α,β,γ)とおけば α=I(I^A),β=I(I^B),γ=I(I^C)である。
  また、任意の点P∈E^m に対して「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」を
  (→PI)=κ(→PA)+λ(→PB)+ν(→PC)  …(2.1.4) かつ κ+λ+μ=1 …(2.1.5)
  とし、「内接円」の半径をrとおけば、「内心I」はまず△ABCの「内部」にあるから
  κ>0,λ>0,μ>0  …(2.1.6) かつ I(I^A)=I(I^B)=I(I^C)=r すなわち
  α=β=γ=r  …(2.1.7) これに「命題1.3」の(1.3.2)を代入して(2.1.7)は
  (2S/a)κ=(2S/b)λ=(2S/c)μ=r つまり、
  (2Sκ)/a=(2Sλ)/b=(2Sμ)/c=r …(2.1.8) この κ,λ,μとrの連立方程式を
  κ+λ+μ=1 かつ κ>0,λ>0,μ>0  …(2.1.6)の基で解けばよい。
 そこでいわゆる「加比の理」を用いて
  r=(2Sκ/a)=(2Sλ/b)=(2Sμ/c)
   =[(2Sκ)+(2Sλ)+(2Sμ)]/(a+b+c)
   =(2S)[κ+λ+μ]/(a+b+c)=(2S)/(a+b+c) ( ∵ (2.1.5)のκ+λ+μ=1)
  ゆえに r=(2S)/(a+b+c) かつ 
  κ=a/(a+b+c) ,λ=b/(a+b+c),μ=c/(a+b+c) となるが、
  これは(2.1.5)(2.1.6)を満たす。 よって (2.1.4)は 
 (→PI)=a/(a+b+c)(→PA)+b/(a+b+c)(→PB)+c/(a+b+c)(→PC) 
    =[1/(a+b+c)][a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)] 
 (「命題2.1」の「証明」終わり )
 次に「角A内の傍心E_A」の「ベクトルによる重心座標表現」を求めよう。
「命題2.2」
 △ABC⊆E^2⊆E^m (m≧2)としておく。また △ABCの面積をSとし、a=BC,b=CA,c=AB とする。
 △ABCの「傍心E_A」の「ベクトルによる重心座標表現」は、任意の点P∈E^m に対して

  (→PE_A)=[1/(−a+b+c)][ーa(→PA)+b(→PB)+c(→PC)] …(2.2.1)

     =[1/{2(s−a)}][ーa(→PA)+b(→PB)+c(→PC)] …(2.2.2)
  また 「傍接円E_A」の半径をr_Aとおけば
   r_A=(2S)/(−a+b+c)=(2S)/{2(s−a)}=S/(s−a)    …(2.2.3)
 「証明」
  「傍心E_A」から辺BC,CA,ABに下した垂線の足をそれぞれ、(E_A)^A,(E_A)^B,(E_A)^Cとおく。
 「傍心E_A」の「三線座標」を(α,β,γ)とおけば α=E_A((E_A)^A),β=E_A((E_A)^B),γ=E_A((E_A)^C)である。
  ただし、α<0,β>0,γ>0  …(2.2.4)である。
  また、任意の点P∈E^m に対して「傍心E_A」の「ベクトルによる重心座標表現」を
  (→PE_A)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)  …(2.2.5) かつ κ+λ+μ=1 …(2.2.6)
  とし、「傍接円E_A」の半径をr_Aとおけば、「傍心E_A」はまず△ABCの外部で
 「辺BCに関して頂点Aと反対側」にあり、∠BACの造る領域内にあるから κ<0,λ>0,μ>0  …(2.2.7)
  そして(2.2.4)からα=E_A((E_A)^B)<0,β=E_A((E_A)^B)>0,γ=E_A((E_A)^C)>0に注意して、
  もう 一つの 条件は −E_A((E_A)^A)=E_A((E_A)^B)=E_A((E_A)^C)=r_A  
  すなわち   −α=β=γ=r_A  …(2.2.8) 
  これに「命題1.3」の(1.3.2)を代入して(2.2.8)は
   −(2S/a)κ=(2S/b)λ=(2S/c)μ=r_A …(2.2.9) この κ,λ,μとr_Aの連立方程式を
   κ+λ+μ=1 かつ κ <0,λ>0,μ>0  …(2.2.10)の基で解けばよい。
   そこで
  r_A=−(2S/a)κ=(2S/b)λ=(2S/c)μ を
  r_A=(2Sκ/−a)=(2Sλ/b)=(2Sμ/c) と変形して「加比の理」を用いれば
  r_A=(2Sκ/−a)=(2Sλ/b)=(2Sμ/c)=[(2Sκ)+(2Sλ)+(2Sμ)]/(−a+b+c)
    =(2S)[κ+λ+μ]/(−a+b+c)=(2S)/(−a+b+c) ( ∵ (2.2.6)のκ+λ+μ=1)
  ゆえに r_A=(2S)/(−a+b+c) かつ 
  κ=−a/(−a+b+c) ,λ=b/(−a+b+c),μ=c/(−a+b+c) となるが、
  これは(2.2.6)(2.2.7)を満たす。 よって (2.2.5)は 
 (→PE_A)=−a/(−a+b+c)(→PA)+b/(−a+b+c)(→PB)+c/(−a+b+c)(→PC) 
    =[1/(−a+b+c)][−a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)] そして 
  −a+b+c=(a+b+c)−2a=2s−2a=2(s−a)より成り立つ。
 (「命題2.2」の「証明」終わり )
「命題2.3」   
 (1) △ABCの「内心I」の真の「三線座標」は
    ((2S)/(a+b+c),(2S)/(a+b+c),(2S)/(a+b+c))
   よって 「内心I」の「三線座標」の比は 1:1:1 となる。
(2)  △ABCの「傍心E_A」の真の「三線座標」は
   (ー(2S)/(−a+b+c),(2S)/(−a+b+c),(2S)/(−a+b+c)) 
    よって 「傍心E_A」の「三線座標」の比は ー1:1:1 となる。
3.
 「命題1.2.2」で、「κ≠1のときに限り」、AT:TT_A=1−κ:κ …(1.2.2) かつ
 A(T_A):T(T_A)=1:κ …(1.2.3) としたが、この「κ≠1」という「制限を外すことはできない。」
 次の例を考えてみよう。
[命題3.1]
△ABC⊆E^2⊆E^m (m≧2)としておく。また△ABCの面積をSとし、a=BC,b=CA,c=ABとする。
 点Tの「重心座標」を(κ,λ,μ) ,κ+λ+μ=1としておく。
(1) Tが「垂心H」のときに、κ=1となるのは、「垂心H」が「頂点A」のときである。つまり、
   κ=1 ⇔ △ABCは∠A=90°の直角三角形で、「垂心H」=「頂点A」のときである。

(2) Tが「外心O」のときに、κ=1となるのは、B=C+90°または C=B+90°のときで、 
   このとき、(→AO)//「直線BC」であって、外接円の半径をRとして、
 (ア)B=C+90°のときは「外心O」の「重心座標」は
   (κ,λ,μ)=(1,−1/(2sinA),1/(2sinA)) …(3.1.1)であり、
   「外心O」の「ベクトルによる重心座標表現」は
   (→PO)=(→PA)−1/(2sinA)(→PB)+1/(2sinA)(→PC) つまり

  (→AO)=1/(2sinA)(→BC) …(3.1.2) となる。(→AO)は(→BC)と同じ向きに平行で、その長さ|(→AO)|=R

 (イ)C=B+90°のときは「外心O」の「重心座標」は
   (κ,λ,μ)=(1,1/(2sinA),−1/(2sinA)) …(3.1.3)であり、
   「外心O」の「ベクトルによる重心座標表現」は
   (→PO)=(→PA)+1/(2sinA)(→PB)−1/(2sinA)(→PC) つまり

  (→AO)=−1/(2sinA)(→BC) …(3.1.4) となる。(→AO)は(→BC)と反対向きに平行で、その長さ|(→AO)|=R
「証明」
 △ABCの「垂心H],「外心O」の「ベクトルによる重心座標表現」の三角関数表記は、
 任意の点P∈E^2⊆E^m (m≧2)に対し、「コタンジェント(余接)」を用いて(2008.8~9月位のところ参照)
  (→PH)=cotBcotC(→PA)+cotCcotA(→PB)+cotAcotB(→PC)               …(3.1.5)
 (→PO)=[1/(4sinAsinBsinC)][(sin2A)(→PA)+(sin2B)(→PB)+(sin2C)(→PC)] …(3.1.6)を
  用いる。

(1) (→PH)では上の(3.1.5)から κ=cotBcotCだから、κ=1 ⇔ cotBcotC=1
   ⇔ (cosBcosC)/(sinBsinC)=1  ⇔cosBcosC=sinBsinC
   ⇔cosBcosC− sinBsinC=0 ⇔ cos(B+C)=0 ここで 0°<B+C<180°だから
  ⇔ B+C=90°⇔ A=90°⇒ cotA=0,⇒ λ=cotCcotA=0,μ=cotAcotB=0
  よって (κ,λ,μ)=(1,0,0)で「垂心H]の「ベクトルによる重心座標表現」は
   (→PH)=(→PA) ⇔ H=A これで(1)は証明された。
(2) (→PO)では上の(3.1.6)から κ=(sin2A)/[4sinAsinBsinC] だから  
  κ=1 ⇔ (sin2A)/[4sinAsinBsinC] ⇔sin2A+sin2B+sin2C=sin2A
      (∵ sin2A+sin2B+sin2C=4sinAsinBsinC ) 
  ⇔ sin2B+sin2C=0 ⇔sin(B+C)cos(B−C)=0 ⇔sinAcos(B−C)=0 ⇔cos(B−C)=0
  −180°<B−C<180°だから ⇔ B−C=±90°
(ア)B=C+90°のとき、λ=(sin2B)/[4sinAsinBsinC],μ=(sin2C)/[4sinAsinBsinC]
  ここで、(sin2B)/[4sinAsinBsinC]=(2sinBcosB)/(4sinAsinBsinC)=cosB/(2sinAsinC)
          =cos(C+90°)/(2sinAsinC)=−sinC/(2sinAsinC)=−1/(2sinA) 
  ゆえに λ=−1/(2sinA) …(3.1.7),同様にして
   μ=(cosC)/[2sinAsin(C+90°)]=1/(2sinA) …(3.1.8)
   よって(→PO)=(→PA)−1/(2sinA)(→PB)+1/(2sinA)(→PC)
  ⇔ (→PO)−(→PA)=1/(2sinA)[(→PC)−(→PB)] ⇔(→AO)=1/(2sinA)(→BC) 
  また点Oは「外心」だから|(→AO)|=R 
   または実際に |(→AO)|=1/(2sinA)|(→BC)|=a/(2sinA)=(2RsinA)/(2sinA)=R 
    (∵ 正弦定理)  
(イ)C=B+90°のとき、λ=(sin2B)/[4sinAsinBsinC]=cosB/(2sinAcosB)=1/(2sinA) …(3.1.9)
     μ=(cosC)/[2sinAsinB]=−sinB/[2sinAsinB]=−1/(2sinA)  …(3.1.10) 以下同様である。

4.
 △ABCの「垂心H」と「外心O」の「三線座標」を求めてみよう。
 まず△ABCの面積をSとし、外接円の半径をRとおく。
 このとき、正弦定理より、a=2RsinA ,b=2RsinB,c=2RsinC 
 また、面積公式より 2S=bcsinA=casinB=absinC に注意すれば
 「命題1.3]の「重心座標」と「三線座標」との関係は次のようになる。
「命題4.1」
 α=(2RsinBsinC)κ ,β=(2RsinCsinA)λ ,γ=(2RsinAsinB)μ …(4.1.1)
「証明」
 まず 2S/a=(bcsinA)/(2RsinA)=(bc)/(2R)=(2RsinB)(2RsinC)/(2R)=2RsinBsinC
 同様に2S/b=(casinB)/(2RsinB)=2RsinCsinA ,2S/c=(ab)/(2R)=2RsinAsinB …(4.1.2)
 これより 
  α=(2S/a)κ=(2RsinBsinC)κ ,β=(2S/b)λ=(2RsinCsinA)λ ,
  γ=(2S/c)μ=(2RsinAsinB)μ 
  (「命題4.1」の「証明」終わり )

「命題4.2」 △ABCの「外接円」の半径をRとする。
 (1) △ABCの「垂心H」の真の「三線座標」(α,β,γ)は
   α=2RcosBcosC ,β=2RcosCcosA ,γ=2RcosAcosB …(4.2.1)
 (2) △ABCの「外心O」の真の「三線座標」(α,β,γ)は 
   α=RcosA , β=RcosB ,γ=RcosC  …(4.2.2)
「証明」
 (1)「垂心H」については、κ=cotBcotC ,λ=cotCcotA ,μ=cotAcotB だから
  「命題4.1」により
  α=(2RsinBsinC)κ=(2RsinBsinC)×cotBcotC
   =(2RsinBsinC)×(cosBcosC)/(sinBsinC)=2RcosBcosC
  β=(2RsinCsinA)λ=(2RsinCsinA)×cotCcotA
    =(2RsinCsinA)×(cosCcosA)/(sinCsinA)=2RcosCcosA
  γ=(2RsinAsinB)μ=(2RsinAsinB)×cotAcotB
    =(2RsinAsinB)×(cosAcosB)/(sinCsinA)=2RcosAcosB

(2)「外心O」については、
 κ=[1/(4sinAsinBsinC)]sin2A,λ=[1/(4sinAsinBsinC)]sin2B,μ=[1/(4sinAsinBsinC)]sin2C 
 だから「命題4.1」により
 α=(2RsinBsinC)κ=(2RsinBsinC)×[1/(4sinAsinBsinC)](sin2A)
  =(2RsinAcosA)/(2sinA)=RcosA
 β=(2RsinCsinA)λ=(2RsinCsinA)×[1/(4sinAsinBsinC)](sin2B)=RcosB
 γ=(2RsinAsinB)μ=(2RsinAsinB)×[1/(4sinAsinBsinC)](sin2C)=RcosC

[命題4.3」
△ABCの「垂心H」,「外心O」の「三線座標」の簡単な比は次のようになる。
(1)△ABCの「垂心H」については、
  「三線座標」の簡単な比は cosBcosC:cosCcosA:cosAcosB …(4.3.1)
(2)△ABCの「外心O」の
  「三線座標」の簡単な比は cosA:cosB:cosC …(4.3.2) 
5.
最後に
「命題5.1]
△ABCの「垂心H」について、頂点Aから引いた垂線の足をH_A とすると、見かけ上の三点A,H,H_A
は直線A(H_A)上にあるが、(→A(H_A))の向きを「正」と考えたとき、

 AH=2RcosA …(5.1.1) ただし(→A(H_A))の向きの長さを「正の長さ」と考える。ベクトルを使えば

(→AH)=(2RcosA)×[(→A(H_A))/|(→A(H_A))|] …(5.1.2)
「証明」 
まず、「命題1.2.1]と(4.1.2)より |(→AH_A)|=h_A=2S/a=2RsinBsinC …(5.1.3)
「垂心H」ではκ=cotBcotCより 
 1−κ=1−cotBcotC=(sinBsinCーcosBcosC)/(sinBsinC)=−cos(B+C)/(sinBsinC)
   =−cos(180°−A)/(sinBsinC)=cosA/(sinBsinC)
 すなわち 1−κ=cosA/(sinBsinC) …(5.1.4) 
 これから κ<1 ⇔ Aは鋭角,また κ >1 ⇔ Aは鈍角
 そして 「命題1.2.2」より
  「κ≠1のときに限り、(→AH)=(1−κ)(→AH_A)」 …(1.2.5)であった。
(ア)Aが鋭角のとき cosA>0で 1−κ>0 ⇒(→AH)と(→AH_A)は同じ向きだから、
   AHは「正の長さ」といえる。よって AH=(1−κ)|(→AH_A)|=(1−κ)(h_A) 
   すなわち AH=(1−κ)(h_A)  …(5.1.5)
  これに(5.1.3)と(5.1.4)を代入して AH=cosA/(sinBsinC)×(2RsinBsinC)=2RcosA …(5.1.6)
  すなわち AH=2RcosA …(5.1.7)
(イ)Aが鈍角のとき cosA<0で 1−κ<0 ⇒(→AH)と(→AH_A)は反対向きだから、
   AHは「負の長さ」と考えられる。よって AH=(1−κ)(h_A) …(5.1.5)
  これに(5.1.3)と(5.1.4)を代入して AH=cosA/(sinBsinC)×(2RsinBsinC)=2RcosA …(5.1.6)
  すなわち AH=2RcosA …(5.1.7)
(ウ)κ=cotBcotC=1のときは[命題3.1]の(1)でやったように
   A=90°,[垂心H]=[頂点A]であり、AH=0である。このときはA=90°なので
   2RcosA=2Rcos90°=0となる。よって AH=2RcosA=0 となって AH=2RcosA …(5.1.7)は
   成り立つ。
  以上により AH=2RcosA が成り立つ。ただし(→A(H_A))の向きの長さを「正の長さ」と考える。 
 ([命題5.1]の「証明」終わり)
[命題5.2]
 「命題4.2」の△ABCの「外心O」の「三線座標」(α,β,γ)について 
  OO^A=α=RcosAであることと、「命題5.1]の △ABCの「垂心H」について 
  AH=2RcosAであることにより△ABCの「外心O」,「重心G」,「垂心H」について
 「オイラー線の関係」が成り立つことが分かる。
「証明」
  概略を示す。A≠90°のとき、「外心O」から直線BCに下した垂線の足を「O^A」とする。
  点Aと点O^Aを結び、点Oと点Hを結び、その交点をXとすれば、△X(O^A)O∽△XAH となり、
  AX:X(O^A)=AH:OO^A=2RcosA:RcosA=2:1,OX:XH=OO^A:AH=RcosA:2RcosA=1:2。
  Oが「外心」よりO^Aが辺BCの中点になる。このことからA(O^A)は頂点Aからの「中線」で
  AX:X(O^A)=2:1,点Xは△ABCの「重心G」になりOG:GH=1:2となり
  △ABCの「外心O」,「重心G」,「垂心H」について「重心G」は線分OHを
  1:2に内分している。
  (この「証明」は△X(O^A)Oや△XAHができていることを仮定していて完全ではない。)
 ( [命題5.2]の「証明」終わり)
最終更新:2009年07月15日 16:35