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そしてしばらくして――クロゲネシティ。
町中をトボトボと歩く、一人の男と一匹のポケモン。
チクワブとダイノーズ。
彼等は結局反則負けして、クロゲネへと帰ってきたのだった。

「どうするんだよお…このままじゃあ…弟子達に合わせる顔が…」
「そりゃあな…トレーナーに戦い挑めばそうなるわな。お前アレだよ。クリリンを殺された悟空並の殺気放ってたもん」

一応、ミキュリのフローゼルと引き分けた(?)ということで、クビは免れたらしい。
が、戦闘の様子はクロゲネジムで放映されていたらしく、無論弟子も見ていたということになる。
あんな事で反則負け…流石にデリカシーゼロのチクワブでも、それはかなり気まずい。

考えている内に、一行はジムの目の前まで。
「……はあ…」
「…しょうがねーよ。入れよ」
「…ああ」
チクワブは決心をし、ジムのドアを開ける――。

そこには、弟子達が居た。
チクワブは申し訳なさそうに、顔を俯かせながら歩いていく。
すると、独りの弟子に呼び止められる。
「…チクワブさんッ!」
「な…何?」
驚きを抑えながら、チクワブは答えた。
すると、弟子は喋り始める。
「…ジム、復興させましょうよ!」
「…はい?何ですか?耳が遠いんです。ブラジルから日本くらい遠いんです」
チクワブには本当に聞こえていなかったらしい。
弟子はもう一度、大きな声で言った。
「ジム、復興させましょうよ!」
「…!!」
驚きの、言葉だった。
「何でだよ…オレ、負けたんだぞ?チクワ野郎なんだぞ?」

チクワブの返答に、弟子は少し溜めて言う。
「…だって、チクワブさん頑張ってたじゃないスか。確かにアレはセコい。けど…ジムを続けたいからやったんじゃないですか!」
そんな弟子の科白に、ダイノーズは口を挟む。
「外道だったけどな」
「黙ってろ鼻毛」
弟子に即答されたダイノーズは、コンプレックスをピンポイントに刺された為、黙り込む。
「俺たち、正直チクワブさんから今までやる気が伝わってこなかったんです。だからオレ達のやる気も出なくて…でも、今回のジム戦を見て、改めました。続けましょうよ!ジム!」
「……!!」
弟子の、決死の言葉だった。
ほかの弟子達も、チクワブを見ながら頷く。
すると、ダイノーズが再び割ってはいる。
「そりゃあクビが掛かってたからな」
「五月蠅え特防しか能がないヤツが」
またもや即答されたダイノーズは、撃沈する。

間が空いて、弟子が再び話しかけてくる。
「だから…復興させるんスよ!ジムを!」

「お……おう!」
チクワブは、そう嬉しそうに応じた。

――あれからというもの、クロゲネジムは活気に満ちあふれていたという。
道行く挑戦者も増えてきて、忙しい毎日となったらしい。

チクワによるチクワの為のチクワのジムは、これからもきっと、チクワなジムとして続いていくのだろう。

――通行人の証言だ。
クロゲネジムの前を通ったところ、前には、“おでん配布中”なんていう看板があったとか。
嘘か誠かは分からないが、ともかく。
チクワブが今でもリーダーを努めていることには、変わりはなかった。


ビッパ伝 外伝 ~チクワブ物語~

最終更新:2014年08月30日 17:20