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「残火の太刀 東 旭日刃」
次々と自分に向かって生えてくる氷に覆われた樹木や枝を李信が残火の太刀で切り付けると、灰となって崩れ落ち消滅した。
「この旭日刃は斬りつけた対象を消滅させる。貴様の攻撃など通用しないと言った筈だ。」
「俺の…禁忌にまでされている奥義が…!」
「確かに大したものだが貴様は俺に勝てはしない。熱と氷では天地の差がある。氷の温度は下限があるが熱にはそれがない。この勝負、最初から決していたのだ。」
「残火の太刀 南 火火十万億死大葬陣」
李信の周りを数体の骸が取り囲む。
「これは…!」
エイジスを目指して骸達は歩き始める。
「俺が今までに葬った者の骸だ。と言ってもまだ5人しか居ないがな。」
一体はグリーン王国に来る途中で倒した性犯罪者、もう四体はみさくらを倒しに行く時に鬼道で葬った雑魚怪人である。
「アッ…アノコ…アノコォォォ!!!」
骸の1人がエイジスに飛びかかる。
「きもちわりいんだよ!」
エイジスの氷の息吹で骸達は氷漬けにされ、砕かれた。
「こんなもんかよ。お前の卍解とやらの力は。」
「この気温の中で氷の息吹を吐けるなどありえない筈だ。俺も頭は悪いが冷気に限界があることくらいは分かる。」
李信はあっさりと破られた 南 の力を見て確信した。
「お前の冷気や氷は膨大な魔力により気温すら超越し、俺の炎熱に対抗してきた。でなければ流刃若炎を解放中でお前は冷気や氷を出せるわけがない。だが!」
「だが、何だって言うんだ?」
「俺の旭日刃と残日獄衣の前では貴様は無力!そろそろ終わりにしよう、この戦いを!貴様の死をもってな!」
残火の太刀を下段に構えて踏み込み、瞬歩でエイジスの目の前に迫る。
「コキュートス」
蛇龍エイジスの口腔と全身から青紫の魔力と冷気が周囲広範囲に噴き出される。滝の様に流れていた汗も冷気に変わる。李信の旭日刃と冷気の霧がぶつかり合い、激しい蒸発音がお互いの耳をつく。
「旭日刃に消し飛ばせないものなどない!」
しかし残火の太刀はエイジスの冷気によって徐々に刀身の先から凍りついていく。
「流刃若火の爆炎を刀身に固めた旭日刃を凍らせ、更に残日獄衣を纏った俺に接近されても死なないその肉体と冷気…ここまでの力があるとは流石に思っていなかったぞ…。」
「このコキュートスは絶対零度を遥かに下回る冷気で広範囲を襲う俺の最終奥義だ。見ろ、お前の残日獄衣とやらの力も虚しく俺の冷気により周りを氷の世界に変えてやったぞ。」
ハッと李信が辺りを見回すと一面見渡す限りが氷の世界と化していた。
「外道なお前の力など、全て俺の力で凍らせる。俺はお前を倒して故郷に帰らねばならない!」
エイジスが口から氷の息吹を吐く。李信は瞬歩で右横に避ける。
「と言っても、俺も魔力を使い過ぎた。お互い、そう余力は残ってないようだな。」
「ああ、次の一撃でケリをつける。」
最終更新:2022年09月04日 16:09