Prologue
二年前――――。
「やめろ、こいつだけは・・・!」
一人の男が一匹のポケモンを抱き抱えながら震えている。
「フッフッフ・・・。情けない姿だなぁ、ポケモントレーナーの恥め・・・・」
もう一人の男が、懐から黒いモンスターボールを手に取った。
「やっ、やめろ! 頼む、やめてくれ・・・!!」
男はそのモンスターボールを、震える男に抱かれたポケモンに向かって投げた。
やがて、ポケモンはそのモンスターボールに吸い込まれる様に中に入っていった。
「あああああああああああああ!!!!」
「アッハッハッハッハ!!」
二人の男の嘆きと高笑いが辺りに響いた。
2034年8月3日――――。
此処、イッシュ地方にも暑い季節がやって来た。
その中でも人口密度の高いヒウンシティは格別暑いだろう。
俺もその街に住んでいた。
俺は流崎 彰(りゅうざき あきら)。
何処にでも居そうな平凡高校生。
強いて特徴的な部分を言うと、瞳が青いのと高身長ってとこぐらいか。
今はこの街の私立高校に通っているが、数年前まではポケモントレーナー修行の旅に出ていた。
小学五年生くらいからあの事件が起きるまでだったか・・・。
極悪非道の組織「D.D(Destiny Destroyers)」
彼らはその名の通り、人とポケモンとの運命を破壊する者達。
三年前から活動を開始していて、現在に至っては警察もほとんど手も足も出せないほどの脅威を持っている。
それもそうだろう。彼らに関わった者は絶望の谷底へ突き落とされるのだから。
彼らはあらゆるポケモンを必ず捕獲できるDボールというボールを開発した。
モンスターボールの赤い部分を黒くしただけというデザインはともかく、機能はマスターボールをも上回る。
その機能とは、既に別のトレーナーのモンスターボールに捕まえられているポケモンすらも吸い込んでしまうという、恐ろしいものだ。
しかもそのボールに捕まったポケモンは本人の意思に関わらず、Dボールの所有者の指示に必ず従わなければならない。
正確に言えばそのポケモンの意思そのものを操ってしまうということ。
絶望の谷底へ突き落とされる、とはこのことだ。
俺もその絶望を味わった者の一人だ。
二年前、イッシュ地方の8つのバッジを手に入れた者のみが参加の許されるイッシュリーグを目の前にして、全てを失った。
ポケモンと、バッジと、俺自身を。
それ以来、俺はポケモンとはほとんど関わっていない。
捕まえて自分のものにもしていない。
あいつらがいると、また絶望するから。
今のままが、一番楽だから。
そう...俺はもう、ポケモンと一生を過ごすという夢を捨てたんだ。
最終更新:2014年01月30日 22:15