3-27

「ここがヤルキモノの巣か・・・。」僕は仕事でトウカの森の奥深くにある洞窟へと足を踏み入れていた。
どうやらヤルキモノが最近山を降りて民家に被害を及ぼし、子供達がさらわれたというのだ。
しかし子供の捜索のためにここにいるのではない。害獣の排除、それが僕の仕事だ。
ついでに子供達も助けるつもりでいたが洞窟の入り口に着いた瞬間それは無理だと分かった。ひどい匂いがする。
「今日は君達だ。おいで、カブトプスにデンリュウ。」子供に追った出来事を想像すると吐きそうになりながらも
手持ちのポケモンには的確に指示を出す。
感受性の良い彼らに自分の感情の高ぶりを見せてはいけない。そういう僕だからこそ
ポケモンは僕に忠誠を誓ってくれていると自覚している。

二匹と一人がどんどん奥に進むと、匂いも感じなくなった。それ以上に景色が衝撃的だったから。
もはや子供ではなかった。パーツとでも言えばいいのだろうか。
多数のヤルキモノがパーツを弄んでいる。指であった部分を喰らい、脚と頭部のパーツに股間をなすりつけて。
腸で綱引きをしているヤツもいる。「カブトプス・・・」
その一言で彼はすぐに動いてくれた。腸を弄んでいるヤツの首をカマで切り裂く。
炭酸飲料を振って缶を開けたように、首から血液が勢いよく噴出している。
しばしの静寂が続いたが、ある一匹の怒りの咆哮でそれは崩された。
何十匹ものヤルキモノが一匹のカブトプスに襲い掛かる。でも多分ダメだろう。
カブトプスは思い切り飛び上がり天井にぶら下がった。胸元には一匹のヤルキモノが優しく抱擁されている。
そしてそっと首元にキスをする。
最初は暴れていたが、じきに動かなくなった。まるで干物のように、力なくしぼんでいく。
ご馳走のほうは顔がやせ細り、目玉が飛び出ている。

多数のポケモンはその光景におののき、そして・・・・・僕のほうを見た。
「トレーナーを先に殺せばいいって分かるんだ。知恵はあるんだね。でもよかったよ。君を出しておいて。」
デンリュウは少し照れくさそうな仕草を見せたあと、仕事の表情に戻した。
「電磁砲!」激しい光が辺りを包み、激しい轟音が鳴り響く。しばらくして視界が戻ると、
そこには手足を丸めた赤ん坊のようなモノが多数転がっていた。

電磁方の威力はすさまじく、洞窟の天井に穴が開き光が漏れている。
どうやら直撃を避けた奴もいたが、後ろからカブトプスに捕食されていた。
「仕留めるときは苦しませないよう手際よく!」と教え込んでいるのだが、
三大欲求のひとつを満たす事に夢中であるようだ。食われているほうは目をキョロキョロさせながら
自分の内臓が減っていく様を戸惑っている。
横には手足を寸断され、ギャーギャー騒いでいるのもいた。傷口は捻られ、止血されてある。
「ほら、もういいだろ?早く帰ろう。」
腹がふくれたのか最後の一匹は頭部を踏み潰すだけに止まった。
そして出口に向かおうとした瞬間。地震が起きた。
「!?」地震ではない何かの足音だ。突然、影が全身を包んだ。後ろを振り返ると、すさまじい形相のケッキングが立っていた。
ケッキングが思い切り拳を振り上げるが、どうも動きが遅い。カブトプスが脚に一線を描き、デンリュウの電磁波を浴びせてやった。これで五感がマヒするはずだ。
だが、それでもケッキングは何か必死だった。次は目にカマを突きつけてやった。
血を流しながらもなんとカブトプスに重い一撃を与えた。
「もういい!デンリュウ終わらせろ!」再び電磁砲を口から吐き出した。
一瞬で頭部は花火のように飛び散り、つづいて血の雨が降り注いだ。
そして股からは・・・異物が流れ出てきた。
「コイツ、妊娠していたのか。」母の無念を晴らすため、母を殺したのであった。
因果なものである。
異物は生きるつもりのようだ。ペットは主人に良く似るというが、僕は自分に似たポケモンを集めるようだ。かつて惨殺されたロケット団幹部を母に持つ僕に似たそのナマケロを連れ帰ることにした。
こうしてトウカの森は静寂を取り戻し、狩人が一匹増えることとなった。

最終更新:2021年05月25日 14:22
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