今から10年程前、まだホウエン地方とカントウ、ジョウト地方間での交流が少なかったころ
ここはサイユウシティから東に9キロほど行った所にある、ノウガ島。
島民 僅か31名 9世帯の小さな島である。辛うじてポケモンセンター(極小)だけはあるが、
病院 学校 保健所 警察(駐在込み)などは4キロ離れた ササ島まで行かないと無いほどの
辺鄙な島だ。
主な収入は 漁業とサニーゴの養殖と珊瑚工芸などを細々行っている。
唯一の観光名所はミズゴロウ種の群生地があることだ、裕福なものは殆ど居ない。
しかし島民達はこの島が大好きだ。一年を通して温暖で、台風、津波もほとんど来ない
なにより ご先祖様が必死の思いで開墾した、ありがたい土地でもある。
だが この平和な島を掌握せんと、ロケット団が暗躍しているとは 島民達はだれも思わなかっただろう
勿論 略奪を行う為ではなく、島そのものを欲しがった為だ。
人目に付き難く、島の裏手には天然の要塞と言っても過言ではない洞穴や磯場が数多くあるためだ。
最初は平和的解決として全世帯に立退き料と手付金(口止め料含む)での退去を勧告したが、
島民達は頑として首を縦に振らなかった・・・
「バカな連中だぜ・・・ いいだろう、徹底的にいくぞ。 おい、実験も兼ねて《K》を投入しろ・・・」
「了解しました。では1ペア あの海域に投入しときますぜ。」
「ああ、ヤツラに地獄を見せてやるぜ、ヒャハハハハ!!」
その夜、海に2組のモンスターボールが投げ込まれた
翌日の夕方、島の外れのサニーゴ養殖場では大変な事が起きていた、サニーゴ達の家が全て破壊され、
40匹ものサニーゴが根こそぎ 殺されていたのが見つかったのだ・・・ 大損害どころではない。
発見が遅れたのには訳がある、養殖場の隣に住んでいる管理人も死体で見つかったからだ。
管理人の下半身は何か高圧の物を食らったのか、バラバラに吹き飛んでおり ほぼ即死だったであろう。
頭部と胴体には何かのポケモンの鱗が、まるで散弾のように食い込み、酷い状態だ。
サニーゴの方は、おそらくハイドロポンプをしこたま食らったのだろう、硬い外殻は圧力でひしゃげ
大穴が開いている物が殆ど、腸が飛び出て酷い臭いだ・・・ 1日放置してあったため腐敗し始めている。
唯一生き残ったサニーゴは、怪我をしていてポケモンセンターで治療をしていた3匹だけだ・・・・
大の大人ですら嘔吐しかける凄惨な現場を、3匹のポケモンを連れた女性が懸命に証拠集めを行っている
彼女は スガル この島で唯一のポケモントレーナーで、もう無くなった診療所の女医だった母と
漁師の長を父に持つ。
4年前 亡くなった母の影響か、本土でトレーナー試験と医療を学ぶため離島、修行を積む。
今年16歳になり 報告と墓参りも兼ねて 先週から帰ってきていたのだ。
「・・・例のロケット団だとしても、ここまでやるとは思えないんだけどなぁ・・・ザグ、そっちは?」
地面を嗅ぎ回っていたジグザグマは首をフリフリし、「ザグゥ・・・」と小さく鳴く。めぼしい証拠は
ないようだ・・・
キノコの胞子で、管理人邸の指紋を探しているキノガッサとノクタスにも 特に変化が無い。
半日かけての調査で判った事は
昨日の晩 一人暮らしの管理人は外で物音でもしたのか、玄関を出た所で何者かに攻撃された事
指紋に関しても、収穫ゼロ 手袋の跡すら見つからず、砂浜にも人の足跡は無かった。
臭いも手がかりになるような物は残っておらず、水ポケモンである事と攻撃に使った鱗 数十枚だけである
島の設備では 解析は不可能であった為、明日 隣のササ島のセンターまで行く事となり、とりあえず
解散となった。被害者達の遺体に関しては 衛生上の理由と保存が困難な為、その日のうちに火葬された。
自宅で図鑑片手に鱗の分類を行うスガル、この大きさは異常だ 一枚でパスケース程ある。
側面はカミソリの様に鋭く、ペンチが無いと折れないほど硬い。
「うーん・・・・この辺りに住んでるポケモンじゃないのかな? ブツブツブツ・・・・・」
周囲の海で人間を襲えそうな水ポケモンも限られる、群生地のラグラージ サメハダー キングラー
シザリガー位だ、どれもここまでの鱗は持っておらず、 また 人間を襲ったことは島に移住して70年
一度たりとも起こってはいない。(漁の際 おこぼれを漁りにくる程度だ)
候補としてギャラドスが挙がったが、それこそこの周囲ではコイキングすら居ない
「もしかしたら捨てポケモンかも・・・・・まあ 明日ササ島にいけば詳しく分かるか。」
そのまま床に就つくスガル、しかし この後新たな犠牲者が出てしまうとは想像できなかっただろう。
午前5時頃 父親が血相を変えて起こしに来た、今度は朝 漁に出た船がやられたとの事だ!
だが皮肉にも、この事件のおかげで犯人の特定が出来たのだった 生きて帰ってきた漁師が居たからだ。
唯一生き残った漁師達は 持っていたコダックによって島まで運ばれてきた。船員7名中 生存者2名だ
例の鱗が腹部に突き刺さってはいるが、2人とも生死に関わるほどではない。
その場で鎮痛剤を投与し、状態を見ながら 事情を聞く・・・
彼らは、いつも通り島を出て、漁場に向かい いつも通り掛けておいた網を引き上げに行った。
ところが、何故か網には魚は一匹もかかって居なく、所々 大穴が開いていたそうだ。
その時、船の後方と前方に突然 渦潮が出て船が大きく揺れる、作業を中断する漁師達。
すると 渦巻きから突然 ポケモンらしき影 それも2匹浮かび上がってきた!見たことも無い形だ。
「キングドラ」
漁師の一人がその名前を出す、本でしか見たことない伝説のポケモンだ。所有者など指の数程だ
さらに本来 青い筈の体は毒々しい紫に染まり、体も記述より1周り大きい。
キングドラ達は船に乗る漁師達を見るなり、ニンマリと笑い、体から鱗を飛ばして攻撃してくる!
それも本来 覚えられる筈の無い《逆鱗》だ。
あっという間に 突き刺さり、2名の漁師の血をすする鱗、全身に浴びせられ まるでガラス片が突き刺さったように
なってしまった・・・ ビクンビクンと痙攣した後、二人は動かなくなった・・・・・・
もう一匹のキングドラは船の側面にハイドロポンプを発射する、木造の魚船では10秒と持たずに
大穴が空き、浸水してくる。 さらに 突進を仕掛け、船を転覆させる!
海に放り出される5人、 そこにもう一匹が冷凍ビームで追い討ちをかけてくる。
応戦するスキを与える気は無いようだ・・・・・ 3名が一瞬で氷に包まれ 氷塊と化す。
キングドラ♂「ひゃはははは!死ねクズどもめ!」♀「いい気味ね!ひゃははは!」
凍りついた漁師達を激鱗で砕くキングドラ2匹、一方的虐殺を楽しんでいる。
が この際、主人の危機を救う為 ボールから出たコダックが2名の生き残りを運んで逃げた事は
気付いていないようだ、一心不乱に漁師達を砕いていたからだろう。
キングドラ それも色違いで逆鱗を使う・・・ 余りにも不自然すぎる
島には原動機つきの魚船は沈没した一艘を除くと、あと一艘。強行突破は無謀だろう。
「とりあえず 夜の無燈航海はリスクが高すぎます、明日の朝まで頑張ってください。」
漁師2名を励ます、この島の簡易医療では 麻酔が限界だったからだ。感染症を引き起こす前に早急に
運ぶ必要がある、後は2人の体力次第だ。
「大丈夫だよ、スガルちゃん・・・俺達は体だけは丈夫だから。」「きにすんない! イテテ・・・・」
元気に振舞う二人を担架に乗せ、とりあえずポケモンセンターまで運ぶ。
「なるべく 表に出ないようにして下さい、もしヤツが出たら、ポケモンや銃で応戦せず、高台の
ポケモンセンターまで逃げて下さい。」
残っている島民に説明し、自宅に戻る 対策を練るためだ。
「・・・私の手持ちのポケモンじゃダメか、みんなのは泳げるけどレベルが低いし・・・・・」
キングドラは獲物を襲う時以外は深海生活だ、もし水面まで誘き寄せても 潜られたら叩き様が無い。
応援を頼もうにも、何故か島のパソコン ポケギア 電話は不通、警察や助けを呼べないのもそのせいだ。
「・・・・母さん、どうしたらいいんだろ?」
部屋にある遺影に問いかける、ふと 昔を思い出す・・・
ふと 母がよく話してくれた、昔話を思い出した。《大岩とラグラージ》とか言ったような・・・
『昔 昔 この島に大きな台風がやってきたの、普段台風なんて来ないけど運が悪かったのね』
『なんの用意も出来ずに、津波と暴風雨によって 島の家ごと洗い流されそうになったしまたの』
『その時、一人の娘が 島に住んでるラグラージにお願い事をしました。「お願いします 島を助けて」って』
『ラグラージの長はある条件で、助けてあげようと言い 娘はその条件に「はい」と答えたの』
『ラグラージの群れは大岩を沢山持ってきて 岩の防波堤を作ってくれました 』
『御蔭で津波も大事に至らず、島は無事でした。帰っていくラグラージ達』
『しかし、娘の姿は何処にも有りませんでした・・・ どうなったんだろうね?』
「う~ん・・・分からないよ。」
『大きくなったら分かるわ・・・・きっと。』
スガルはふと島の歴史を調べる、 確かに60年前に1度だけ暴風雨が島に来た事が記されている。
実話? まさか・・・ でもその娘はどうなったんだろう? 考えを巡らせる・・・ そして1つの答えを出す
「・・・・まさか、人身御供?」
ラグラージは 見た目ほど恐ろしいポケモンではなく、人間など食わない筈 しかし昔話通り、
嵐の際に 最高1tもの岩を積み上げ 防波堤状の物を作る習性は観測されている・・・
「試してみる価値はありそうね・・・ ありがとう母さん。」
そのまま 出発の準備と身辺整理を行う、場合によっては帰れないだろうからだ。
「・・・・・私 一人の命で足りるかな。まあダメ元ね・・・・」
午前7時 朝日が眩しかった 「最後の朝にならないといいな・・・」と呟く。
観光地でもある、ミズゴロウ族群生地は島の中央を抜けた干潟にある。
繁殖期は過ぎた為、人はまず居ないだろう。
周囲警戒の為、ジグザグマを先頭にしながら、林道を突っ切る 潮の香りが微かに し出す。
ふと視界が開けたと思ったら、目の前に見渡す限りの干潟が出てくる、ここで間違いない。
しかし・・・・何も居ないようだ、ジグザグマも反応を見せない。普段なら泥遊びをしてるのが10~20匹
はいるのだが・・・
仕方なく ジグザグマをしまい 足に泥かんじきを着け、干潟に足を踏み入れる。
すると入り口から10mほどの所で、突然何かに足を取られる。
「ん?なん・・・・ きゃっ!」
地面から青い手がガッチリとスガルの手を掴む、そのまま足を取られ 尻餅をつく。
ラグ「ヤッタ ヤッタ ツカマエター!」
泥の中からラグラージがズボッっと出てくる!どうやら隠れていたようだ。
一斉に出てくるラグラージやヌマクロー
「アレレ?服ニR文字ナイヨ?」「目モどぶ色ジャナイヨ!?」「・・・・・モシカシテ間違エタ?」
ラグラージ達はスガルには目もくれず 相談始めた、どうやら人違いらしい。
ラグ「アレレ?モシカシテ マチガエチャッタ?」「ソウダヨ!コノぼけ!」「ハズカシイ・・・」
「ゴメンナサイ・・・・人違イデス・・・ ホラ!皆謝ッテ!」
一同「・・・・ゴメンナサイ!」 ラグ「アワワ・・・ ゴメンナサイ、ボクワルイコデス・・」
泥だらけのラグラージ達は一生懸命謝る、泥を払うスガル。
「気にしないで、勝手に入った私がわるいんです・・・・」
「デモ ニンゲン珍シイデス、何ノ御用デスカ?」
「ええ、実は族長に合せて頂きたいんです。」
「族長デスカ・・・・・・判リマシタ。 オイ!らぐ!」
応対をしていた年長らしきラグラージが さっき足を間違えて掴んだラグラージを呼ぶ。
「族長ノ元ニゴ案内シナサイ、 失礼ノナイヨウニ!」
ラグ「アーーーイ!サ、乗ッテクダサイ。」
「あ、ありがとう。」
スガルをその背に乗せると、ラグは泥の上を滑るように泳いで行く。
10分ほどで中心地にある岩場に着いた、そこには一際 大きいラグラージが鎮座していた。
「まず、仲間が無礼な行為を働いた事をお詫びいたします、申し訳ございませんでした。」
人語が苦手な水辺グループの筈のラグラージだが、族長なだけあって流暢に人語を話す。
「いえとんでもないです、でも何で待ち伏せなんてしてらっしゃるんです?」
暫くの無言の後、族長ラグラージは理由を話し出した
「最近 胸にR文字の入った連中に子供達が誘拐される事件が起きています。知り合いのサメハダー族
とヘイガニ族 クラブ族の縄張りでは、見慣れないポケモンによる 殺傷事件も起きています」
ラグ「夜ヤ朝方 ここニ来て、寝テイル子供ツレテッチャウ!ダカラ待チ伏セシテタノ!」
どうやらロケット団はこの島のポケモンにも手を出しているようだ、確かにミズゴロウは希少種だ
そこでスガルは 先日起こった事件 死者が出た事 キングドラが相手で手出し出来ない事
自分が人身御供になる代わりに 力を借りたい事を伝える。
「ほほう、共通の敵というわけですか・・・・ しかしキングドラとは・・・・」
長い沈黙の後 族長が口を開いた
「・・・判りました、協力しましょう。サメハダー達とも連絡を取っておきます。厳しい戦いになるでしょうから」
「ありがとうございます!!」
「では今日の晩、此方の戦力を携えて、ソチラの港まで参りますから。他の人間に伝えといてください。」
「はい、了解しました。」
「ああ、それと ラグを連れてってください。もしも先手を打たれた時はコキつかってください。」
「ウレシイナー!ヨロシクネー!」見知らぬ所に行くのがそんなに嬉しいのかピョンピョンと跳ねる
「では手筈の程宜しくお願いします。あ、人身御供の話は御内密に・・・・」
そう言って頭を下げると、スガルは村へと戻っていった。
村に戻ると、島民達にラグラージの協力を得られた事を説明する、皆 安堵の表情を浮かべる。
お年寄りの一部が少々 不安な顔つきだったが気にしない、バレるころには私はもう・・・・
午後7時 戦力終結の時間だ、すると港で見張っていた漁師が ラグラージ達が来た事を告げる。
凄い・・・・ラグラージ ヌマクローが30 サメハダーが10 クラブとヘイガニがそれぞれ50程と
かなりの大群だ。
「天国の皆さん・・・・ やっと仇が討てますよ。」
族長ラグラージに各族長の説明を受ける。
「まず クラブ族 ヘイガニ族の族長ですが、代表してシザリガーの源さんに来てもらいました。」
「なんせもう年でのぉ、群れのほうはキングラーに任せてるんじゃ ま 若いの、よろしくたのむよ。」
「次はサメハダー族のサメ蔵 若いのによくやっていらっしゃる、スゴイ方です。ラグにも見習わせたいです」
「《族長代理》な、糞ジジイが怪我してるんでな・・・・・・ ま よろしくな!」
「親父さん、具合の程はよろしいですか?」
「まあ死にはしねえよ、どっちにしろ 仲間を殺した紫野郎には目に物みせてやるよ。」
ギリギリと歯音を立てる サメ蔵。 凶暴そうな見た目とは裏腹に正義感があるようだ。ラグ
ラグ「コイツ ボクノ友達! 気短イケド、トッテモイイヤツ。」
「うるせえぞボケ!w オメエこそドジ踏むなよ!」
これから戦いが始まるというのに、微笑ましい光景だ。
集まった戦力の族長達に、作戦の説明を行う。
まず 島民とスガルが乗った漁船を囮に キングドラをおびき出す。漁船には目立つようにイカ漁用灯を装備
出てきたら サメハダーとラグラージが水中で叩く、水上には絶対に出さない。
水中ならば放射系の逆鱗 冷凍ビーム 等が使えず、ハイドロポンプも威力減退する。また
もし使えるはずもない 火炎放射や十万ボルトを使われた際の保険でもある、注意するのは渦潮と格闘位だ。
肝心のロケット団本隊は、先ほど偵察に出ていたキバニアから島の裏側にそれらしい船があると連絡があった。
そちらはシザリガーとクラブ ヘイガニ混合隊に対応してもらうことになった。
島民達は砂浜で待機。
午後11時 作戦開始である。
島民のみんなからの激励の中、船は出港する、目的地は漁師達が殺された海域だ。
別働隊のシザリガー達は陸路でロケット団の船まで向かったようだ。
無事 海域までは着いた、ここからが本番なのだが・・・・
イカ漁用灯を点け 戦闘準備をする、万一の為である。全員 手持ちのポケモンを全部出す。
ラグラージ達には岩を持たせる、文献によれば キングドラの鱗は2層構造で、
一層目が攻撃用鱗(進化前の名残でもある)が少数存在し、2層目が防御用鱗でびっちりと覆われているらしい。
陸戦ならラグラージの方がアドバンテージはあるが、水中では得意の力技 地面技 は使い難いのもあり、
岩を叩きつけて鱗を叩き割る戦法をとらせる為だ。サメハダーは噛み砕けるので心配ない。
次々と潜水していくラグラージ達、サメハダーも後を追う。
濁った海水と岩礁をうまく利用し 各員戦闘態勢を整える。船の上の人間達も身構えている。
10分ほどだろうか、船の前方に渦潮が始めた、見つかったようだ。
ラグラージとサメハダー達は渦の発生源を探る・・・・・
「前方 30m先!洞窟内デス!」
穴から発生している渦潮に紛れて、二つの影が躍り出る!キングドラだ。
「全員突撃!ヤツを水面から出すな!」「行くぞ!食いちぎってやれ!」
全員一斉に障害物から躍り出る! 向こうも気付いたようだ・
♂「ああ?? なんだありゃ?」
渦から出たキングドラは襲ってくる輩に不満気味に呟く
♀「この前、あんたが殺したザコの仲間でしょ?ご主人は野生のは相手にするなって言ってたのに。」
♂「はっ! 丁度いい、島の連中殺す前のウォーミングアップだ!」
キングドラ♂はグッっと身構えると 牽制代わりに破壊光線を放ってくる!
サメ「っ!回避ィーーーーーー!」
とっさに避けるがキバニア数匹が避けきれず被弾し粉々になり、肉片と大量の血煙が水中に漂う。
水中とはいえ凄まじい威力だ。
サメ「貴様!許さんぞぉぉ! 」
サメハダー一団は族長共々 キングドラ♂に噛み付きを仕掛ける!たちまち キングドラの全身は
キバニアとサメハダーで覆い尽くされる「ピキッ・・・」「バキキ・・・」鱗にヒビが入る、効果は有るようだ!
♂「っ!?痛てえじゃねえか!糞、放しやがれ!」
全身に微少ながら痛みが走るキングドラ、全身をバタつかせ振りほどこうとするが死に物狂いで噛み付いている
サメハダー達は喰らい付いたままだ!ゴボゴボと水が泡立ち、亀裂から血煙が少々出ている。
♀「ちぃ!各下相手になにやってるんだい!情けない!」
キングドラ♀が援護に向かおうとするが、ラグラージ達が邪魔をし 全身に張り付く!
「彼方ノ相手ハ私達ダ!」
一生懸命 岩を叩きつける! 「バキっ!バキキキっ!」 此方も紫色の鱗にヒビが入っていく!
♀「ちィ!舐めるんじゃないよ!?《竜巻》!」
ホールドの甘いラグラージが数匹弾き飛ばされるが、また取り付きにいく!長期戦に持ち込む気だ。
♂の方も竜巻で喰らい付いている連中を弾き飛ばそうとする!
族長「絶対に水上に出したり、逃がしたりしてはいけません!」
サメ「サメハダ族の誇りに賭けても、絶対に離すじゃねえぞ!」
一方その頃、ロケット団の乗る船に奇襲を仕掛ける手筈だったシザリガー一団。
どうやら一方的な展開になっているようだ。
団員「う、撃て!構わず撃ちまくれ!」
机や小コンテナで通路にバリケードを作り、ショットガンやハンドガンで応戦しているロケット団。
団員A「だ・・・・だめです!1階はこれ以上守りきれませ・・・・・・ヒイイイイイ!jgひgbkjb・・・」
団員B「く、来るなぁ!?何で銃が効かないん・・・・・ギャァァァァ!!!」
通信が途絶え、マイクの向こうからは「ヘイ! ヘイ!」 「グゴゴ・・・・」としか聞こえなくなる。
島の戦力を甘く見ていたロケット団側は、武器類の不足 ポケモンの相性への配慮
そして奇襲のせいで劣勢に追い込まれてしまった。
後退する団員に見捨てられ、切断された足で逃げようとするオコリザル、が
後ろからクラブハンマーで叩き潰される、脳漿と頭蓋骨の破片交じりの肉片が飛び散り、ズルリと崩れ去る。
源「皆の周 敵に情けは無用じゃ、打ち砕き 叩き潰し 切り裂け 以上じゃ。」
血塗れのハサミをブンっと振る、後方からヘイガニとクラブの大群がゾロゾロと現れる。
部屋という部屋は全てカニ一色である、通った後には切り刻まれた人間とポケモンが残っているだけだ。
「キングドラを呼び戻せ!」「ダメです!通信機のレーダーを壊されました!」「第5ブロック音信不通!」
操舵室はけたたましい警報アラームと 怒声で溢れ返っている、敵の進行が激しすぎるのだ。
「2ブロック先まで侵攻されました!これ以上はキケンです!」
「何としても食い止めろ!ここで負けたらサカキ様に申し訳が立たん!」
「ひい!? 来たぞ!!」「ニドキング!十万ボルト!」「エネコロロ!破壊光線!!」
まさに死に物狂いの攻撃、だがそれも歯が立たない。
キングラーとシザリガーが突撃してくる、丈夫なハサミを構え 弾除けに使っている、弾かれる弾丸。
また多少食らっても、シェルアーマーが在る限り致命傷にはならない。タイプ一致でもない攻撃も屁でもない。
「っ!ニドキング!叩き潰せ!」「エネコロロ!アイアンテール!」
銃撃+αが薄いと感じた為、接近戦を試みる団員
「グオォォォォォン!」「グギッギギギーー!!!」
キングラーと組み合うニドキング しかし判断が甘すぎた・・・
ザクっ!ブチィィィィン!
湿った嫌な音の後、組み合っていたニドキングの腕部が切断される、悲鳴をあげるニドキング。
一方エネコロロはアイアンテールをハサミで受け止められ、尻尾ごと切断されている。
「ザリガーーー!!」
痛さの余り、転げまわるエネコロロ。
「フギャアぁぁぁ!?イタイよぉぉぉぉ!!助けて、ご主人様!!!」
五月蝿くて堪らなかったシザリガーはエネコロロを口に放り込み、噛み砕く!
ブシャシャ!、グチャグチャに噛み砕かれよく分からない物になってしまったエネコロロ。
ニチャ・・・ニチャ・・・と数回噛み砕くとペッと吐き捨てる。
ニドキングの方は20匹位のヘイガニが始末を開始している、腹を裂かれ、腸を引きずり出されている。
「ひ・・・・・た・・・・たすけ・・・・」「もうポケモンで実験もしませんから!」
失禁して命乞いをしている団員に向かい、不得意な人語で喋りかけるキングラーとシザリガー
「グギッ!オメエラ コロス。ニンゲンノ クビ キル。セメテモノナサケ」
「ザリガ!呪うなラ ロケット団に入っタ自分を恨みナ。」
ザクッ 団員の首が切り離され 血しぶきが上がる、二匹の赤い体を血がさらに赤く染める。
「扉が破られます!下がってください!」
大の大人が5人がかりでドアを押さえ込んでいるがもう限界である。
金属製のドアが メキッ!メキメキッ!と歪み、弾け跳ぶ! 即席バリケードに隠れ、銃を構える。
ドアの向こうの通路は、血塗れのカニ集団しか見えない、ここにいる者以外は全滅である。
源「おやおや、諦めが悪い・・・・コイツらのようになりたいんかのう?」
両ハサミで握っている ダルマ状態の死体の頭に力をかける、顔が斜めに歪み ミシミシと軋む。
圧力に耐え切れなくなったのか 頭がベシャ!っと潰される、もはやスイカみたいだ。
「黙れバケモノ!ぶっ殺してやる!」「仲間の仇だ!」「死ねぇ!」
ライフルや銃器を構え あくまで徹底抗戦を貫こうとするロケット団員一同
「まあ それもいいじろうて・・・・構わん 奴 ら の 首 を 断 て !突撃!」
「ロケット団の意地を見せろ!! 階級特進のチャンスだぞ!」
部屋になだれ込んで来るカニ達、銃器や技が火を噴く!!・・・・・・が
数十分後 最後まで抗戦したラッキーを真っ二つにし、全員の死亡を確認した。
「さて・・・・あとはあちら次第じゃの、ま 年寄りはここらへんで失礼するがのう。ガハハハ!」
交戦から2時間、キングドラは未だ落ちずにいた。
水面には傷つき しがみ付く力を失ったヌマクローや、力尽きて死んでしまったキバニアが浮いてきている。
スガルや漁師達は彼らの回収 治療に専念し、戦闘の行方を見守っている。
♂『ったく!ウザってぇ連中だっ!!クズの分際で俺様に喰らい付くなんざなぁぁぁ!』
今だ無数のサメハダーに噛み付かれているキングドラ♂、先ほどとは違い 明らかにダメージが深く、水が濁るほど出血している。
全身の6割の鱗は噛み砕かれ、筋肉が露出しはじめており、血が抜けて 白く変色している箇所もある。
♀『なにやってるんだい! とっとと《アレ》使いなよ!』
どうやら♀のほうが格上のようで、こちらは鱗の損傷率は4割といったところだ。竜巻をうまく使って防御している。
♂『ちぃ!!この手はあんまり使いたくなかったんだがなぁ!《自己再生》!!』
サメ蔵「何ィ!?ふざけた野郎だぜ!!」 ラグ族長「マズイぞ!!回復させるな!!」 ラグ「卑怯ダヨー!」
キングドラ♂の体が「ボワッ」と光り、瞬時に喰いちぎられた組織が再生していく!幸い 鱗までは再生が追いつかなかったようだ。
振りほどかれるサメハダー達。
♂『ヒャハハハ!俺様はロケット団PAR部隊でもトップのエースだ!!貴様らみたいな屑と一緒にするなぁ!』
では張ります
PARとは近年 某企業で開発された、従来のセレクト法よりもムラがなく成功率が高いポケモン強化法で
色違いだろうがLv MAXだろうが技の変更だろうが可能な代物で、ロケット団ではいち早く取り入れ 運用していたようである。
♂『このサメ野郎!もう許ねえ、ぶっ潰してコイキングの餌にしてやるっ!」
自分を傷つけたサメハダー達に怒りをあらわにするキングドラ♂、大技を仕掛けるようだ。
♂『死ねぇ!《ハイドロカノン》っ!』海水を激しく鰓から吸い込む、凄まじい勢いだ!
首をもたげサメハダーの群れにぶち込ももうとするが・・・
サメ蔵「引っかかりやがったな、紫野郎!」サメ蔵の声が上から聞こえる!
海水を吸い込むのに夢中だったキングドラ♂はサメ蔵が群れから居なくなっているのに気が付かなかったのだ!
♂『上だと!?』 バッっと上を向くキングドラ、口から勢いよく《ハイドロカノン》が噴射される!
が、突進を仕掛け、加速の付いているサメハダーは瞬時にかわす!
ボンッ!という音と共に腹ビレごと、その身を削られ 血が噴き出すが物ともしない。
「バキキキィィ!ブシュゥゥ・・・・」 ♂『ギ・・・・ギャァァァァァァ!?目があァ!?」
一番鱗の薄い顔面に喰らい付くサメ蔵!顔面を噛み砕かれ完全にパニクっているキングドラ♂。
サメ蔵「今だっ!ッ突っ込めぇぇぇぇ!回復するスキを与えるな!」 サメハダー一同「了解!」
サメハダー達は次々とキングドラ♂に突っ込んでいく!回復した傷口の辺りを狙っているようだ。
♂『な・・・・何する気だァァあ!?」目を潰された恐怖心からか、頭をブンブンと振るう!崩れた肉片が水中に舞う。
サメ蔵『俺達の特技はよォ・・・・噛み付く事とな、時速120キロを超える高速泳法さァ!!」
直ったばかりの傷口にサメハダー達が突き刺さる!皆 鼻先が潰れ、骨が折れるのも無視だ。
時速120キロの物質が突き刺さった傷口は、勿論酷い有様だ。分厚い筋肉も「ブチブチ」と悲鳴を上げながら
裂けていく。 そのまま海底に叩きつけられるキングドラ♂!骨が砕けていくの音が海中に響く。
サメ蔵「まだだ!動かなくなるまで推力全開だ!」
尻の噴射口からの海水の噴射を強めるサメハダー達!もはや外部からは血煙で判断出来ない!
爪の中に針を突っ込まれ、引っ掻き回されるような痛みを全身に浴びるキングドラ♂
♂『ギャャヤババァァァァ!!ガボボボボ!?!?』
♀『っ!?アンタ!早く再生を!!』ラグラージに取り囲まれ、手助け出来ない夫に向かって叫ぶ♀
しかしもはや手遅れだった・・・とうとう筋肉を突き破り、内臓にまで達したからである。
数匹のサメハダーが腸を引きずり出す!が キングドラはもう泣き喚いたり、動いたりはしなかった・・・・
サメハダー達は突進を止め、念のため喉を噛み千切り 生死を確かめる。
サメ蔵「ふう・・ふう・・・・こっちは終わったぜ。後は任せる・・・・」
キングドラ1匹を潰したサメハダー一同は力尽き、仰向けになって浮かんでいってしまう・・・・
ラグ「アワワワ・・・・・死ンジャヤダヨー!」 サメ蔵「ま・・・・だ生きてるよ・・・・」
♀『よ・・・・・よくも夫をッ!!!』
夫を惨殺され ブチ切れのキングドラ♀、ヤバイ感じだ。
♀『もう貴様らのなんかどうでもいい!!人間どもをぶっ殺す!」
ラグラージ達を《高速スピン》で吹き飛ばす!どうやら狙いは直接船に向けられたようだ!
族長「マズイ!止めるんだ!」 「ダメデス!我々デハ追イツケマセン!」 ラグ「す、すがるチャンガ危ナイ!」
そのころ水上では 先ほどと変わらず、負傷ポケモンの回収が続けられていた。タモ網で掬われるサメハダー達
サメ蔵「すまねえな、お嬢ちゃん。イデデデ・・・」
吹き飛んだ腹ビレ跡に傷薬を塗りこむスガル、出血はもう止まっているようだ。
その時 船長が大声で叫んだ!
「下方に魚群探知機反応!海中から出てくるぞ!!全員気をつけろ!」身構え ポケモンを繰り出す一同、水面に水柱があがる!
♀『殺す!殺す!殺す!殺すゥゥゥゥ!喰らえーーーーーー!冷凍ビームっ!』
間髪いれずに冷凍ビームを放ってくる!凍りつく船体とポケモン達。いまにも沈没しそうだ!
スガル「・・・・・ここまでなの?島のみんな・・・ゴメン・・・ ラグラージ 約束守れなくて申し訳・・・」
凍り付き、薄れる意識の中 スバルと漁師達は死を覚悟した。が!
「っこなくそォォォォォォォ!」
サメ蔵の物ではない凄まじい怒声が響き渡り、水面から一つの影が飛び出す!!
ラグ「ウリャァァァァア!潰れろォォ!」
キングドラ♀の顔面に飛びつき、パンチをお見舞いする!飛び散る鱗、頭蓋骨がひしゃげる。
サメ蔵「・・・・どうなってやがるんだ??あいつあんなに強かったか?」甲板でピチピチと跳ねるサメ蔵、一足遅く水面に上がってきた族長がこう言う。
族長「さすが次期族長候補・・・ あの凶暴なとこは母さん似だな。」
♀『な、なんだコイツ!?さっきとエライ違うボグヲッ!?グバッッ!?」
凄まじい連打を放ってくるラグに圧倒されてか、水中に逃げ込むキングドラ♀!しかし
ラグ「はっ!水中なら勝てるとでも思ったのかァァァァ!」
素早くキングドラ♀の尻尾を掴むと、凄まじいスピードで引きずる!あっというまに海底まで引きずり込まれる
ラグ「我が一族の真価は!地面に着いてこそ発揮されるゥゥゥゥゥゥ!」
その場で回転を始めるラグ、回転を増すごとに渦潮が発生していく!
♀『ヒイィィィィィィィ!?離せえ!?』水中とはいえ遠心力で体が裂けそうだ。
ラグ「お 望 み どおりにィィィィィィ!吹っ飛べぇぇぇぇぇ!」そのまま手を離すラグ! そしてロケットのように水中から飛び出すキングドラ♀w
そのままノウガ島の砂浜に顔面から突き刺さり気絶する、もはやギャグだ。
ラグ「ッイエス!」
ガッツポーズを決めるラグ、一同唖然としながら【もうイジめるのはよそう】と固く心に決めるのであった・・・・
ラグ「オイ!起キロヨ!」族長「仕方ない…水鉄砲!」
顔面に水がジョバジョバと注がれ、ビックリして跳び起きるキングドラ♀。
♀『ンー!ン!?ンンン!』何故か口が開かない、
身体も押さえ付けられている様に重い。
それもその筈、噴射口でもある口にはワイヤーがきつく巻かれ開閉は不可能。
二㍍はある身体は、重苦しい鎖でトタン板に縛り付けられている。
このままでは高速スピン 破壊光線 竜巻は使用不可能。水も無いためハイドロポンプも使えない。頼みの綱の逆鱗も…
族長「あらかたの鱗は剥がせてもらいました…」
スガル「さあ…時間だよ。」
そこには島民達が立っていた、手にはそれぞれ凶器を手にしている…
スガル「では一番の方からどうぞ…」
二人の漁師が前に出る、手にしているのは【ツルハシ】だ。
漁師A「さっきはよくも凍らせてくれたなぁ…」
漁師B「船の修理代…いくらかかると思ってやがるんだ!ああ?!」
Bはツルハシを振りかぶり、腹に向かって振り下ろす!!
ボシュッツ!鱗を失い、柔肌と血の滲んだ筋肉に穴が開き 血に染まる。
漁師A「オイオイ!抜け駆けは無しだぜW」
漁師B「悪い悪いW」
二人がツルハシを振り下ろす度に、穴から鮮血が吹き出す。口を縛られ、悲鳴すらあげられないキングドラ♀。
合計八発叩き込むと、次の人に交代した。
次の島民は子連れの女性、沈没された漁船の遺族だ。手には錆びたスコップが握られている。
未亡人「旦那の…仇ィィ!」
グチャァァァァン!スコップが振り下ろされ、背鰭だった物が吹き飛ぶ!
先程のツルハシの傷を自己再生させていたが、まったく追い付いておらず…
そうこうしている内に次がが来た、三人組みで 手には【バールのような物】を構えている。
♀『ンンン…ン!?ムグー!』
バール三本を見るなり暴れ出すキングドラ♀。どうやって使うか気になるのか?W
バールを持った三人はキングドラを取り囲むように配置しバールを振りかぶる!
「ゴスッ」っと鈍い音と同時に「ブチャっ!」っと熟れた果物が潰れるような音がする。
見事 キングドラの腰部に3ヒットする! 再生も間に合わずただ 苦しみもがくだけだ。しかしコレで終わりではない・・・
男達はヒットしたバールの先端を引き抜くのではなく、キングドラに足を掛けると、力一杯横に引いた!!
傷口がメリメリと音を立てる!!残っていた鱗がバキバキと音をたてて割れ、ねじ切れた傷口から腰骨らしい物が見えている。
さすがにこれは効いたのか、縛られた口の隙間から血の泡を吹き痙攣しだす。唸り声すら出ていない・・・
死なれては困るので、回復薬を噴霧する。 どうやら一命は取り留めたようだ。
報復希望者 全員が一通り終わった為 次の段階の用意をする、《晒し》だ。
失神しているキングドラ♀を砂浜の松の木に尻尾から吊るす。出血はそこそこ止まり、紫色の体がマダラに見える。
まだ夜の2時だというのに 血肉の臭いに蝿が集まってきている・・・・ 良い感じだ、明日には楽しい
事になりそうだ・・・・ 島民達はニヤニヤしながら、後始末につく、ロケット団の死体の火葬だ。
一様 人間ではあるので供養することにする(殺人等の書類は後日本土で手続きする 処罰はナシだが)
砂浜に穴を掘る島民、スガルは帰っていく各族長や仲間を見送る。カニ族は一足先に帰ったようだ。
族長「では、2日後 干潟にまたきてくださいね、お待ちしています。」
ラグラージの族長達は静かに言い残すと、夜の海に消えていった・・・・
ラグ「すがるチャン、バイバーイ!!」 サメ蔵「とっとといくぞ !」
サメ蔵に引っ張られながら水中に消えていくラグを見送り終わると 負傷者をササ島に送る為、準備をはじめる。
朝6時 キングドラ♀は失神から目を覚ました、どうやら口のワイヤーは外されているようだった。
♀『っく・・・・・・ 下種と人間共めぇ!!この屈辱わ・・・ん?」
ブチ切れていて気がつかなかったのだが、痛みはほとんどない、しかし全身の傷口がやたらと疼く。
♀『なんだ!? 痒いっ!? 何?!』 体をグネグネとくねらせるが木に吊るされている為、揺れるだけだ。
体が揺れるたびにボロボロと落ちてくる 米粒のようだ・・・・・ ん?動いてい(ru)
♀『な・・・・なに!これぇぇぇぇぇ!? 痒い!痒いっ!痒い!』 傷口に沸いているのは漁港にお馴染みの蝿さんの蛆。
暖かい季節なら1日でタイ米位までおおきくなる、きのう受けた傷の中に数え切れないくらい蠢いている・・・
いくら強化ポケモンといえど、過敏な傷口を大量の蛆が這いずり、膿や腐肉を吸うのだから堪らなく痒いだろう。
【4時間後】
♀『ガァぁぁァぎゅグギャ!!?? 誰か!? 取ってくれ! ゴググググぅぅ!』
直射日光が当たるとさらに傷の奥に潜り込もうとする蛆、さらなる痛みと痒みが襲ってくる!
♀『ひィィィィ!!ダレカ!!ゴロジデー!!」今更懇願しても誰も居るはずもない、蛆を漁りにきたキャモメ位だw
蛆による精神的拷問と肉体的拷問+ 空腹 + 直射日光による火傷・・・・ このまま緩慢な死が待っている・・・・
シュワシュワ・・・・ シュワシュワ・・・ カサカサ・・・ グジュ グジュ・・・・ 蠢く音だけが聞こえる。
【6時間後】
♀『・・・・・・・・・・・シニタク・・・ナ・・・・』
その日の夕方、 当番のものが見に行くと、既に完全に死体と化し、キャモメやクラブが食い散らかしていた。
死体はそのまま海に投げ捨てられた、 夫の死骸ともに海に還れるだろうか。
キングドラ(その他)を始末し、島の住人達は一様の安息を得られた。出来なかった葬式とお見舞いも行った。
丑三つ時 静まり返る村をスガルは一人歩いていく。ポケモン達は実家に置いていき、仏壇に爪と髪を残した。
時間は少々足りなかったが島の小川で禊も済ませ、ラグラージの元に赴く。
少々 俯きながら干潟までの道を歩いていく、走馬灯のように記憶が巡る。また自分の人生についても考えていた。
たかだか小さい島での営み程度と自分の命を釣り合わせる事は、馬鹿げた事と思う人もいるだろう。
だが島で生き、島が好きだった自分達には、島を捨て、僅かばかりの金と引き換える事ができなかったのだ・・・
親不孝だろうな・・・と 置いてきた父親と死んだ母を思い出す、きっとこれでよかったのだろう。
干潟にはラグラージの族長と30人ほど、たたずんでいた。声を掛ける。
スガル「・・・・ただ今参りました。」 族長「お待ちしておりましたよ。」
数秒の無言・・・・ スバルが切り出す
スガル「契約通り、人身御供とし この身 この心 すべて捧げに参りました・・・」
族長「まあ そう固くならずに・・・・・では・・・貴女は私が貰い受けます。」
ついに食われるんだ・・苦しまないで逝けるといいな・・しかしネガティブな思考だったスガルに思いもよらない言葉が。
族長「このモンスターボールを貴女に与え、貴女に本土に向かうことを命令します。」
スガル「・・・・えええ?!」
びっくりするスガル、しかし族長は話を続ける
族長「我々が何故人間なんて食べるんですか?勿論人間と交配しようなんて事も考えませんよ。」
族長「しかし貴女の身は私が、貰い受けました ですからこのボール持って本土にいってもらいたいのです」
族長「二人とも出てきなさい。」
族長の問いかけと共に、ボールが勢いよく開く!中に居るのは・・・・・・
サメ蔵「よ!また会ったな 姉ちゃん。」ラグ「うわーい!すがるチャンダ!」
サメ蔵を抱える形でラグが飛び出す、とても嬉しそうだ。
族長「実は今回の事件も有りまして、この狭い島で学ぶより より大きいトコで学ぶほうがいいって事に
族長会議で決まりましてね、この若造2人を 10年、いや20年ほど預けたいんですよ。」
急すぎる展開に 呆け気味のスガル、サメ蔵がニコリと笑う。
サメ蔵「オヤジの怪我もよくなってな、族長代理はナシってことさ。よろしくたのむよご主人?」
ラグ「ボクモ!モトモット頭良クナリタイ!イイデショ?連レテッテ~!」
ようやく事態を把握したスガルは族長に一瞥すると、【してやられた】といった感じに微笑む。
スガル「承りました、では今日からお預かりしますね!よろしくね2人とも。家の3人とも仲良くね。」
満面の笑みの二人をボールに戻し、族長その他に挨拶をすると、村にもどっていく。
その次の朝 スガルと5人(匹)はホウエン地方に向けて旅に出て行った。
数年置きに 活躍を偲ばせる内容の手紙や記事が送られてくるのが島の人々の楽しみでもある。。
そして5人(匹)とともに成長し 帰ってくるのは遥か15年先である。
族長(60)と族長補佐(37)はのんびりと日光浴を楽しんでいる。
補佐『そういえば今日デ ラグ達が修行に出て10年デスね!』
族長「ああ・・・・・そうだな。」
補佐『でもあの時はビックリですよネ!私達の事人食いだと思ってタンですからw』
族長「ああ・・・・あの話か・・・・・」
補佐『いくら世間で【キモクナーイ】とか呼ばれてる我々でモ 共生相手の人間はねェ・・・無理!w」
族長「・・・・・・・いや 間違いではないぞ。」
補佐『・・・・・へ? じょ・・・・冗談ですよネ?!アハハハ、笑えませんよウ。』
族長「いや 本当だ、食べた事がある。しかもあの娘の母親を食べた・・・・・」
補佐の顔は引きつっている、そりゃ引きつるのも無理はないが・・・・ そのまま話を続ける族長
族長「君も聞いたことあるだろう?「人間の人身御供を食うと頭が良くなる」おとぎ話?」
補佐『ええ!そりゃおとぎ話ですカラ!第一 成功者なんて・・・・・!』
族長「成功者?居るじゃないか、目の前に。かつての族長たちもな。」
信じられない!といった感じの補佐、顔面蒼白だ。
族長「私も昔はカタコトでね、何故 父親が流暢に話せるか不思議だった 聞いても「大人になれば判る」とだけだった」
族長「大体食べ終わると 1~2週間で言葉が出るようになって、知識があふれ出んばかりになる・・理由は判らん」
族長「だが人身御供を食べ 知識を得るのがこの群れの掟でもあるのさ・・・・・族長のな・・・・」
補佐『で・・・・・でもラグはどうなんデス!この前流暢に・・・」
族長「あの子は・・・・・希望でもあるんだ、この人食いの連鎖から抜ける・・・な」
族長「実際、もう私は子孫にこの風習の残したいとは思えない・・・・たとえラグラージ族が滅んでも・・・」
族長「私があの娘の母親を食べたのは 族長になって2年目のとき、島が日照りで干上がりそうなときに人身御供として自ら志願したそうだ。」
族長「今でも忘れない・・・・ わめきもせず 泣き叫びもせず、ただ村の為に食べられたあの女性・・・・残ったのは血塗れの服と一足の靴だけだ。
向こうでは肺炎で死んだことになってるらしいがな。」
補佐『そんナ・・・・ そんなコトガ・・・・・ 』
族長「共存する相手を食って 一族を繁栄させる・・・・・まったくもって不毛」
補佐『族長、このことが原因デ、我が部族滅ぶトモ、それは運命デス。その程度のコトで我々は滅んだりはシマセン!』
族長「補佐・・・・・・すまん」
補佐『ヨクゾ・・・・お話してくださましタ・・・・』
旅立ってから10年後 【現代】 ノウガ島の干潟は今日もいたって平和だ・・・ 太陽がまぶしい
終わり
最終更新:2021年05月25日 15:27