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○月2日
嵐に突っ込んでしまい、船は沈没した。ここはどうやら海底洞窟らしい。
食料は残りわずか、地上への道もなく、助けを待つしかない。現在生存しているのは
私を合わせて上城、橘、相川のたった四人だ。ここから生きて帰ることができるのだろうか。
○月3日
一向に助けの船は来ない。とにかく私たちは洞窟内を探索することにした。
奥に進んでみると、見たことも悪いグロテクスなポケモンが大量にいた。硬い甲羅に飛び出た目。
白と赤のひれを体に一列生やし口元には大きなキバにも見えるツメがある。原は昆虫のように多数に分かれている。
コイツをエビムシと呼ぶことにした。エビムシは多分今まで発見されたことのない新種だろう。
コイツを持ち帰れば一稼ぎできるかもしれない。私は少々胸を期待で膨らませた。
○月3日
とうとう食料が切れてしまった。助けは一向に来る気配がない。ついに橘はエビムシを喰うと言い出した。
最初は皆嫌がっていたが、選択肢のないことはとうに分かっていた。エビムシの甲羅を剥ぎ、肉をつまんでみた。
とてつもなくまずい。私はノートの切れ端を橘に渡し、火を付け小さな焚き火を用意した。
そしてさっき喰らったのとはエビムシを火あぶりにした。頑丈な甲羅のせいで全身に火が回らない。
相川が苛立ち、エビムシの頭を叩き割ってしまった。頭部からミソが吹き出る。
皆ハッと気が付いた。・・・これはかなり美味だった。
○月4日
食料を集めるべくそこらにいるエビムシの頭をどんどん割っていった。もはや生きる執着と、
ミソの味にエビムシの気色悪さなどは頭になかった。途中上城が一匹のエビムシに引っかかれたが、
傷はたいしたことがない。腹は膨れ、皆上機嫌だ。今日は気分よく眠れそうだ。
○月5日
朝起きてみると、上城の姿が見当たらなかった。そして引くずったあとがある。
辿っていくと大量のエビムシが一つの塊になっていた。その部屋には血の匂いが充満している。
三人は怒り狂い、エビムシを虐殺し始めた。甲羅を生きたまま剥ぎ、ツメを引っこ抜き、
その引っこ抜いたツメで別のエビムシの腹に突き刺してやった。目を契って、
体を真っ二つに引き裂いてやった。上城の敵だ、ざまあみろ。
○月6日
その日は騒音とともに目覚めた。今まで見たことのない、大きな直立したエビムシに襲われたのだ。
甲羅は青い鎧と化し、ツメは腕の位置に来てさしずめカマとなっている。
もしかしたらエビムシの進化系かもしれない。
相川の腹にデカイエビムシのカマが突き刺さった。相川の助けを求める声を無視して、
橘と2人で無我夢中に逃げ回った。どうやらデカエビムシは動きは鈍いようだ。
相川の絶叫が洞窟中に響き渡る。今夜は眠れそうにない。
○月7日
橘が腹痛を訴えだした。やはりエビムシのせいだろうか。そういえば私も頭痛がする。
しかし洞窟の入り口付近にはあのデカエビムシがうろついているのだ。
下手に動くとあいつの餌食になるだけだ。しばらく影で身を潜めるしかない。
○月8日
橘が突然痙攣し、奇妙なモノを吐き出した。体は二メートルはあり、
細長い口の魚のような生き物だ。こいつは寄生虫だ!おそらくエビムシの体内に潜んでいたのだ。
橘はそれ以来動かなくなった。きっと私の腹の中にもこいつがいるのだろう。ついに私一人だ。
絶望に打ちひしがれていたら、そのピンクのポケモンが腕に口を刺してきた。
私は大声を出してしまった。
後ろから大きな生き物の足音がする。もうおしまいだ。さっきから頭痛が酷い。
○月9日
突然デカエビムシの叫び声が人間の囁きに変わった。ついに助けがきたのだ。
私は喜んで飛び出した。さっきから汗が酷いが、まるで空中を浮いているような、
軽やかな気分だ。ふと音がしたので横に目をやると、そこには裸の美女がいた。
生存できたという喜びから、いつも以上に大胆に振舞った。この場所はさっきまでピンクの
寄生虫がいたのだが、彼女がどかしてくれたのだろう。美女は私の首元にキスをした。
チクッと何か指されたような感じがしたが、苦痛はなかった。もはや頭痛もしない。
私は何か大切なことをわすれてしまったようだ。
だが、もうどうでもいい。ふたりのびじょがわたしにおおいかぶさり、はらのあたりに
けんめいにきすをしてくれている。
なんだか、ねむくなってきた・・・・・。

~ポケモンに食い殺された漁師の日記~
最終更新:2021年05月25日 15:35
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